シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ワクチンとアプリがやってくる

Pfizerのワクチンは今週中にもFDAよって認証される可能性が高いと言われている。これを受けて、カリフォルニア州では来週にも32万7千回分のワクチンが接種可能になる準備があるそうだ。そして、年末までにはPfizer以外のワクチンも承認される可能性が高く、200万回分のワクチンが利用できると考えられているとニューサム知事が今日発表した。一人二回の接種が必要なので100万人分だ。これらのワクチンは最前線を戦う医療関係者に接種されることが決まっている。

医療関係者がワクチンを接種することは、彼らの健康へのリスクを減らすだけではない。感染率が普通の人達よりも高い環境にいる彼らは、感染したり、感染する可能性がある状況に遭遇したりすると隔離されてしまうので、そのたびに、最前線は貴重な戦力を失ってしまう。ワクチンを接種することで彼らが感染しなくなれば、感染者が近くにいたという理由で隔離されることもなくなり、感染拡大の大波に溺れかけているカリフォルニアの医療スタッフ不足を回避する有力な戦略になる。彼らの感染のリスクが減ることは、実はダイレクトにコミュニティの重症者たちのリスクを減らすことにつながるのだ。

いよいよワクチンの実用化が近づき、暗く長いトンネルの先に一筋の明かりがみえたところだが、そんな中、カリフォルニアの感染拡大の勢いは弱まるところを知らない。シリコンバレーのあるサンタクララ郡の昨日の新規感染者数はなんと2000人を超えている。ほんの数週間前までは、100人台だったことを考えると、その広がりの速さが想像できるだろう。

今、米国の医療施設は最悪の事態に向かってジリジリと追い詰められいる。それと競争するかのように、ワクチンが承認され、医療施設に分配されていく。完全な絶望でもなければ、完全な救いでもない、ウィルスと科学の息詰まる攻防戦が繰り広げられている。それを遠くから見守る私達はにできることは、遠くから見守り続けられるように感染しないことだ。少なくとも、感染リスクが低い生活ができる人々は、その幸運に感謝して、感染しない努力を最大限に続けることで医療関係者にこれ以上の負担をかけないようにすれば、それだけで十分に役に立っている。

今週は動きが多い。木曜日には、カリフォルニア州が開発した携帯電話によるコンタクトトレースシステムがリリースされる。カリフォルニア州立大学の学生たちがパイロット運用することでテストを進めてきた CA  Notify システムが一般公開されるのだ(「コンタクトトレースアプリはテスト中!を参照」。このアプリの基礎となる仕組みが、今年の4月ぐらいにAppleとGoogleによって公開されていたことを考えると、カリフォルニア州がその仕組を使ってアプリを開発・テスト・リリースするのに、随分時間がかかったなというのが印象だ。7ヶ月以上かかっている。

以前の書き込みを参照してもらえるとよいのだが、この仕組はプライベート情報保護のため、位置情報や個人名や連絡先などは一切記憶されないことになっている(「コンタクトトレースアプリが生まれない」を参照)。つまり、人間が媒介して電話インタビューにより感染経路を調査する形式のコンタクトトレースの助けにはならない。その代わりに、このアプリは一定期間の間に一定の距離内に近づいた携帯電話のブルートゥースシグナルが交換され、互いの番号を記録する。そして、電話の持ち主が感染テストをうけて陽性診断がでると、保健局からコードがもらえるので、そのコードをアプリに報告することにより、記録されている番号に一斉に、「感染者が近くにいましたよ」という通知が送られる。基本的に、送る人も、送られた人も、誰に送られたのか、誰から送られてきたのかは、わからないという仕組みになっている。通知を受けた人は、自分が感染した可能性があることはわかるため、自主隔離をしてテストを受けるように促されるというわけだ。使用する人の数とやる気によって結果が左右されるので、どれくらいの役に立つかはやってみなければわからない。

個人情報にセンシティブな米国では、このようなアプリを作っても、インストールしてもらえず十分な威力を発揮できない可能性がすでに指摘されている。そのため、このアプリをインストールして使うかどうかは、個人の判断、つまりボランティアベースとなっている。強制にしたら、間違いなく法廷闘争に持ち込まれる可能性があるからだろう。

使えるようにする方法は至って簡単だそうで、アンドロイドなら支持されたアプリをインストール、iPhoneの場合は、OSを最新にしている人なら、なんとすでに搭載されている。実は私も2週間ほど前から気づいていたのだが、設定画面に接触通知というメニューが増えている。

たぶん今週の木曜日には、地方政府から、住民の携帯電話に対してコンタクトトレースプロジェクトに参加を呼びかける通知が届くと思うし、それに詳しい設定方法が書いてあると思うが、設定そのものにかかる時間は5秒ぐらいだそうだ。

さて、いったいどれくらいの人がこのプロジェクトに参加してくれるのだろうか。沢山の人が参加していなければ、まったく利用価値のないアプリだけに注目されるところだ。カリフォルニアはテクノとジーに強い土地柄であるだけ、新しい仕組みやアプリに抵抗が少ない文化がある。この文化がうまく働いて、人々をアプリの利用に向かわせてくれるかもしれない。

再三記載するように、この仕組はプライベート情報は守られるようにできているので、そのあたりのことを不安に考えて使用を躊躇する必要はない。特にシリコンバレーの人々には、私達の地元テクノロジーがコミュニティを救うかもしれないチャンスなので、できる限り沢山の人に使ってほしいと思う。

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