シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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平等ってなんだろう

シリコンバレーが属するサンタクララ郡は、州政府にワクチンの接種の優先順位を、深刻な被害を受けているコミュニティの郵便番号によって決めるべきだという進言をした。

サンタクララ郡ではすでに、インターネットのアクセスや自由になる時間の有無によって、ワクチンの接種者に深刻な偏りが発生しているためだ。サンタクララ郡では、ラティーノと呼ばれる南米系アメリカ人は全人口の4分の1ほどだが、郡の総感染者の半分以上を締めている状況に陥っている。この状況を踏まえて、より深刻な感染被害を受けているコミュニティにより優先的にワクチンを接種するために、郵便番号を接種グループ分けに使おうという提案だ。ちなみに、サンタクララ郡の5つの郵便番号の地域は、郡の平均の感染率の2倍を記録している。それほど郵便番号は、顕著に地域の人種や貧富の分布を表しているのだ。

カリフォルニアの現在のワクチンの配分報告によると、ラティーノはワクチン接種者の15%をしめてはいるが、実はこれは白人接種者の半分ほどだ。カリフォルニアで最も多く感染し死亡してるのはラティーノなのにもかかわらずである。黒人に至っては、州の人口の6%をを占めるにも関わらず、ワクチン接種者に占める黒人の割合はたった2.7%である。たしかにこれは不平等だ。

しかし、州やコミュニティが、これらの人種に対して、ワクチンの分配上の差別をしているというわけではもちろんない。現在のワクチン接種の条件は、医療関係者であることと年齢である。が、先程も書いたように、ワクチン接種のための十分な情報や予約システムへのアクセスがあるかどうか、それに費やす時間が有るかどうかが、この格差を生んでいるのだ。

これらの人種コミュニティに暮らす人々は、十分なネット環境を持っていない事が多い。情報も届きにくい。保険を持っていない人も多ければ、毎日出勤が必要な仕事を続けている人も多い。ときには、不法移民の場合もあるために、ワクチンの接種会場で身分証明ができないことを理由に接種に尻込みをする人もいる。実際は、保険を持っていなくても、不法移民であってもワクチンの接種は可能だが、その情報は行き渡りにくく、信頼されてもいない。そんな彼らは何重苦に絡み取られて、ワクチンにたどり着けないでいる。

平等とはなんなのだろう。州政府はワクチン接種の権利を平等に与えているわけだが、現実には感染者の割合は圧倒的に有色人種が多く、ワクチン接種者は圧倒的に白人が多い。社会的構造により不平等が発生するようになっているのだ。

そこで、真の平等を目指し、より一層感染が広がっている地域の郵便番号を基準にしてワクチンを優先的に配布しようという動きが全米の多くの都市で始まっている。しかし、これはこれで、対象郵便番号に居住していない人にとっては不平等だと感じさせるルールだ。どんなに狭い家に何世代も暮らすラティーノの高齢者のほうが多く亡くなっていても、感染リスクが平均よりも相当に高かったとしても、高級住宅地で白人高齢者を家族に持つ住人にとっては、ラティーノの高齢者も、自分の家の高齢者も、同じ高齢者だというのに、自分の親や祖父母のワクチンの接種が後回しになるのは納得がいかないということもあるだろう。命の問題に関わるだけに、この問題はとてもセンシティブだ。

個人的には、郵便番号を基準にワクチンの優先順位を決めるのはよい方法だと思っている。それが平等かどうかは判断しかねるが、必要な人々が先に接種するというのは理にかなっているし、結果的には感染拡大が深刻な地域の感染を抑えることが、コミュニティ全体の安全につながるからだ。

このところいつも書いているのだけれど、在宅学習、在宅勤務、ネットワークコミュニケーションなど、感染しないような生活を問題なくできる人々は、その幸運に感謝しておとなしく家にいるべきだと思っている。ワクチンの接種が一番最後になってもかまわない。ワクチンを接種しても、していなくても、集団免疫が獲得されるまでは制限された生活が続くのだから、別に急ぐ必要もなく、安全な環境にこもり続けられる境遇にひたすら感謝をして、モグラ生活を続けるつもりだ。

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