英国大きく賭けに出る
現在ウィンブルドンを満席近く観客を導入して開催してる英国だが、今日の新規感染者数はなんと3万4千人超である。にもかかわらず、英国は5日後の19日には、ウィンブルドンだけではなく、すべてのCOVID関係の規制を撤廃し「普通」の生活に戻る予定だ。
この英国の方策の根拠は、英国のワクチン接種者が50%を超えた現在、6月の初頭から新規感染者が増え続けているにも関わらず、1日当たりの死者数がほぼ変わっていないことにある。つまり、ワクチンを接種したおかげで、新規感染者が増えても死亡者が増えないので、COVIDを「死に至る危険な病」とはみなさないでパンデミック前の生活に戻ろうというのがその意図らしい。
確かにこれまでの傾向からいうと、新規感染者が増えてから2週間ないしは3週間後には死者の数が増えていく。が、現在の英国の死者数は、6月初頭から新規感染者が激増しているにもかかわらず、ほとんど増えていない。今週になって微増している感じだ。新規感染が増えだしてからすでに4週間経過していることを考えると、データの動きは明らかにこれまでとは異なる軌跡を描いている。
このデータを根拠に、英国はワクチン接種により、新規感染者と死者の連動を断ち切ったとの判断により、すべての規制撤廃を進める決定をしたらしい。
ちょっと心配なのは、新規入院者数だ。実は英国の新規入院者数は6月15日ぐらいから、新規感染者数を追うように増え続けている。確かに激増しているとはいえないが、着実に増加傾向だ。つまり、亡くなるほどではないが入院するほどの症状を発症する人数は、新規感染者数との連動が断ち切られていない。となると、このまま入院者数が増え続けて医療設備を圧迫するようなことがあれば、それが死者の増加につながるリスクは捨てきれない。ちょっと危ないような気もする。
英国政府は、自信をもって規制撤廃を進めているが、私が英国に住んでいたらナーバスになるかもしれない。いまだに国民の40%近くはワクチンを接種していないという現状を考えれば、このまま規制撤廃により更に新規感染者が増え続ければ、再び死者数が増加するのではないだろうか?また、たとえ死者が増えなかったとしても、入院するほどの症状が出ている人々がいるとなると、後遺症の心配があるのではないだろうか?また、ワクチン未接種の子供たちの感染はだいじょうぶだろうか?
これは、未だどの国も足を踏み入れていない新たなフェーズへの英国の挑戦だ。もちろん、英国にはこの賭けに勝ってほしい。ワクチンの接種割合ではだいたい似たような米国は、今後の英国のデータを十分に参考にしつつ、今後の米国の「COVIDと生きる普通の生活」はどのようにするべきかを決めていくのではないかと思う。
米国は広いので、地域ごとにワクチンの接種割合が大きく異なる。もし、英国でこの作戦が彼らの思惑どおりに運び、彼らの接種率でもCOVIDが恐れる必要のない病であるとわかれば、それよりもはるかに高い接種率を誇るシリコンバレーは非常に安全な場所だと考えることができる。そうなってほしい。が、まだわからない。
しかし、もし反対の結果が出たら、英国は再びロックダウンに戻るかもしれず、その場合は、英国ばかりではなく世界の多くの地域で不安と失望が広がることになるだろう。
今後のパンデミックの出口を占うことになる、英国の一カ月のデータが勝負となる。