シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ロストジェネレーションの成績表

米国のハイスクルーの多くは2学期制だ。土地の気候などによって多少のずれはあるが、一般的には、1学期は8月から12月のクリスマス休み前まで、2学期は年明けから5月末ぐらいまでだ。

ということは、今は1学期の最終期間で、もうすぐファイナルと呼ばれる期末試験が始まる。それが終わると1学期の成績がでてクリスマス休みが始まるのだ。

さて、今年は米国の多くのハイスクールはオンライン授業、または、オンライン授業と、学校内でやる授業を組み合わせたハイブリッドと呼ばれる授業体制をとっている。今学期の成績表は、生徒の成績表であると同時に、オンライン授業がどの程度うまくいったのか、うまくいかなかったのかの確認するためのオンライン授業に対する成績表でもある。そしてまだ、期末成績は出ていないわけだが、現時点でのオンライン授業に対する評価は相当に厳しい。

米国の成績は一般的にABCDEFで評価され、FがつくとFail(不合格)という意味で、その授業の単位がとれない。卒業に必要な単位の授業だった場合は、翌年も同じ授業を受けなくてはいけなくなる。普通ならそんなに出ては行けない F だが、今学期では通常にくらべて何倍も出てしまいそうだというのだ。

AP通信によると、例えばオレゴン州のMcNary High Schoolでは、10月末の時点で、通常であれば全体の8%ぐらいの F が、今期では38%も出ていたそうだ。ニューメキシコ州では、40%以上のミドルスクールとハイスクールの生徒が少なくとも1クラスで F をとっている。テキサス州ヒューストンでは、42%の生徒が少なくとも1クラスでFをとっている。ミネソタ州のセントポールでも同様に40%の生徒が F をとりそうだ。通常の倍の数である。米国のどこをとっても、成績表では F が舞い踊る結果になりそうだ。

なにが原因なのだろうか。

教育者からの意見によると、とにかく生徒が課題を提出しない、または、授業そのものに参加しないことが一番の問題だそうだ。インターネットアクセスに制限があったり、安定していなかったりするような技術的な原因で、課題を完成してアップロードすることが難しい生徒も相当数いるらしい。また、Zoom越しの画面では、どの生徒が授業についてこれずに助けが必要なのかを教師が見分けることができないのも原因の一つだ。特に授業中にZoomのビデオ通信を切っている場合、教師には生徒側のなにも伝わらない。ビデオ通信は基本的にオンになっていなければいけないルールだが、インターネットの通信環境が悪いところでビデオ通信をオンにすると、そのために課題を進める効率に著しく悪い影響を与えることもある。そこで、学校側も生徒が「通信状態が悪くて課題が進まないのでビデオ通信を切ります」と言えば、それが真実かどうか分からなくても駄目だとはいえない。実際は、ビデオ通信を切ってから、授業をサボって携帯電話で別のことをしている生徒も多いと言われている。

あまりの状況の悪さに、夏の感染の波が収まった頃、一部の学校では成績に問題がある生徒だけ登校させるというハイブリッドを採用したところもある。やってみると、実際、生徒たちの成績は上がったので、一部の生徒にとって登校して授業を受けることは非常に大切だということが分かる結果が出たが、その試みも最近の感染拡大の波を受けて中断するしかなく、現在殆どの学校はオンライン授業のみになっている。

多くの生徒達が F を取る原因は、課題を提出しない、テストを受けないことだが、生徒たちの言い分は、わからないから課題をやらないし、テストを受けないというものだ。学校に通っている時は、たとえわからなくても教室で課題をやるしテストを受ける。あまりにわからなければ先生が助けてくれることもあるだろう。同じようにわからない状態でも学校にいるだけで、これらの生徒たちには F を逃れるチャンスがあるのだ。オンライン授業で、課題を提出しなかったり、テストを受けなかったりすれば、F以外の成績をとるチャンスはまったくない。

それでは、Fを取る生徒は通信環境や家庭環境に原因があるのかといえば、決してそれだけではない。バージニア州に住む高校生の姉弟の例をあげると、2年生の弟はオンライン授業がはじまるまでは成績がよかったのに、オンライン授業になってから全クラスでFがついた。しかし。同じ環境で学習している4年生の姉は全てのクラスでAをとっている。母親は、姉は自分の部屋で一人で勉強することが好きなのだが、息子は体験型学習者なので、オンライン授業ではうまく学習することができないのだと語っていた。

ちなみに、今、学習年齢の子どもたちは、すでにロストジェネレーションと呼ばれている。なにをロストしているのかは現段階でははっきりと言えないがなにかをロストしているのは間違いないということなのだろう。

しかし、前述の姉弟の姉のように、実はこの環境に非常によく適応している子どもたちもいる。我が家のティーンもその一人で、これまでのどの学年よりも簡単に良い成績をとるし、Zoomを介したグループワークもまったく問題なくこなしている。本人はもうずっとオンライン授業でいいというくらいストレスのない学習体験となっている。不思議なものだ。

そういう生徒もいるにはいるが、過半数の生徒はむしろ苦しんでいるといわれている。中には、好きなスポーツなどのクラブ活動ができず、成績が下がり、友達と交流することもできず、しだいに孤立化してうつ状態となり、自殺するに至った高校生もいる。彼の父親は。息子がそこまで追い込まれていたことに気づくことができなかったことを悔いているが、そんななか、ニュースで若者に呼びかけていた。

パンデミックは必ず終わる。終わりのないように感じるかもしれないが、それは違う。必ず終わる。終わることを信じて、希望を持ち、それでも憂鬱に溺れそうになる時は、誰かに頼って助けを求めてほしい。一人で考えてすぎずに、助けてくれと叫んでほしいと。

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参照:

apnews.com

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