シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ジョンソン&ジョンソンのワクチンの接種停止について考察

今日はこの話題を抜くわけにはいかない。

今朝、CDCとFDAの発表により、米国でジョンソン&ジョンソンのワクチンの接種が一時停止になった。実は少し前からちょっと気になっていた。ニュースで副反応による血栓の事象がちらつきだしてから。

英国のワクチンであるアストロゼネカは、すでに数週間も前から副反応による血栓が話題になっていて、国によっては接種を停止したところもあるし、英国でも30才以下の接種は勧めないという方針をたてた。が、血栓の副反応は非常にまれであるため、英国はワクチンによる利益がそのリスクを遥かにうわまわっているという理由により、接種を継続している。

なぜ、ここでアストロゼネカの話をだしたかというと、ジョンソン&ジョンソンはアストロゼネカと同じ技術を使って開発されたワクチンだからだ。これらのワクチンは従来のワクチンの製造方法で開発されており、材料に不活化したウィルスが使われる。このウィルスはCOVIDものではなくて、通常は普通の風邪ウィルスのようなものが使われる。この2つのワクチンは、その材料は微妙に異なるが、同じ技術を使って作られた兄弟のようなワクチンだ。

そのことを知っていれば、ジョンソン&ジョンソンにもアストロゼネカと同様の副反応が発生する可能性は最初からゼロではなかったことがわかる。なので、血栓の副反応が話題になってきたところで、アストロゼネカと同じ経緯をたどるのではと考え始めた人は結構いたと思うし、アストロゼネカの事例があるからこそ、FDAとCDCは素早く一時停止処置をとったのではないかと思う。

現時点で、ジョンソン&ジョンソンで報告されている副反応かもしれない血栓の症例は現在のところ6件だ。700万接種のうちの6件なので、まれもまれであり、それも確実に副反応かどうかわからない状況にある。この確率は、まれな副反応といわれているアストロゼネカの症例よりも、現時点では更に低い。

ちなみに、どれくらい確率が低いのかと言うと、現在実用化されているピルによって血栓を発症する確率よりも低く、妊婦が血栓を発症する確率よりも低い。そもそも血栓は高コレステロールや肥満などでも発症確率が上がることを考えれば、現時点で、ワクチンの接種を停止までするのは、オーバリアクションなのではないかとマスコミでも論議を呼んでいる。

しかし、今日、ホワイトハウスでファウチ博士が会見をしたように、これはあくまでも停止という処置だ。中止ではない。最も慎重な安全サイドに立ったうえでの一時休止という判断だ。停止の間に、この6件の症例(1人は亡くなっている)のバックグラウンドを調査するのはもちろんだが、もう一つの重要な目的は、一度接種を止めることで、接種者および医療機関に情報を行き渡らせることにある。ワクチンの接種後に血栓を発症した6件は、すべて接種後6日から14日後の間に発生していること、そして、血栓と同時に、血小板減少症を発症しているのが特徴だ。この血小板減少症のために、血栓で通常行われる治療法を患者に適用すると、状況を悪化させてしまう可能性があることがわかっている。

この情報をワクチン接種患者および医療関係者に行き渡らせることは非常に重要だ。例えば、血栓の症状で病院に行ったときに、3週間以内にワクチン接種しているかどうかを患者は医者に伝える必要がある。同時に、医者は患者に必ず確認するべきだ。そして、3週間以内にジョンソン&ジョンソンを接種している場合は、通常の血栓の治療を施さないようにしなくてはならない。この情報によって救える命があるかもしれない。

そのうえで、血栓は実際に副反応なのか、その場合は、発生確率はどれくらいなのか。また万が一発生した場合の治療法はなにがベストなのか。これらの情報をしっかり共有してから、ジョンソン&ジョンソンの接種は再開するのではないかと考えられている。

確かに一度、接種を止めてしまうと、前々からワクチンに不信感を持っている人たちへの心理的効果は大きい。ワクチンへの不信感が煽られる可能性がある。しかし、情報の透明性は大切だ。たとえ良くない情報でも、情報が正しく伝わっていないところには信頼は生まれない。先程も書いたように現時点でわかっているだけでも、血栓は非常にまれな確率で発生している。この確率とともに、正しい情報を浸透させることで、万が一の危険を回避する努力だと捉えたほうがよいだろう。

ジョンソン&ジョンソンはワクチンとしては非常に優秀だ。取り扱いが簡単だし、副反応も少なめ、接種は一回ですむ。だからこそ、どのようなリスクがあるのか、それがどれくらい高いまたは低いのかは非常に大切な情報だ。ぜひ、これらの情報の透明性を目指してほしい。

ちなみにファイザーとモデルナは、アストロゼネカやジョンソン&ジョンソンとは全く別の技術を使って作られた、まさに超近代的なワクチンだ。こちらについては、「mRNA ワクチンってなんだ?」に記録してあるので、興味がある方は覗いてほしい。仕組が全く違うがゆえに、副反応も違う。ファイザーとモデルナでは、何件かシリアスなアレルギー反応が報告されているが、血栓の報告は現時点では報告されていない。

ワクチンを恐れる人々の気持ちはわかる。しかし、ワクチンの接種は最も確実にパンデミックからの抜け出す道だ。少なくとも私はワクチンを接種したいと思っているし、科学が世界を救うことができると信じている。

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