シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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mRNA ワクチンってなんだ?

今日も米国の新規感染者数と死者数は新記録を出した。ほぼ毎週新記録を出しているような気がして、だんだん感覚が麻痺してくる。

ちなみに、本日の新規感染者数は23万人超え、死者数は3200人超えである。このニュースを後押しするようにカリフォルニア州もほぼ毎日のように記録を更新しているのだが、そのあまりの患者数の急激な増加により、カリフォルニア州を仮に国として世界の国と比べた場合、その感染者数はなんとインドやフランスや英国など数々の国を差し置いて1位になるらしい。カリフォルニアはその経済規模も居並ぶ大国を抑えて世界5位だが、まさかこんな不名誉な世界1位を与えられる日がくるとは思わなかった。

さて、このウィルスと戦うために毎日のように注目されているのがワクチンだ。先週末に FDA が認可したファイザーのワクチンは現在米国各地に到着し、医療関係者が次々と接種を始めている。英国でも発生したアナフェラキーショックがアラスカで1件発生したようだが、幸い命に別状は無く回復に向かっているようだ。いずれにせよ、アレルギー反応には気をつけたほうが良さそうなので、接種してからしばらくは様子を見て過ごしたほうがよいのは間違いない。

たくさんの人々がワクチンの開発の劇的な速さにより、その安全性に疑心暗鬼になっている。そのため、数カ月後に一般の人にワクチンが手に入るようになっても接種を拒否するが多いのではないかと心配されている。コミュニティが集団免疫を達成するには70%から80%の人がワクチンを接種する必要がある。そこまで免疫が広がって初めて社会は一種の「普通」の状態に戻れるのだ。

ワクチンの安全性をアピールして人々への接種を推奨する活動の一環として、来週にもバイデン次期大統領は公開でワクチンの接種を行うらしい。また、ペンス現副大統領も同様に公開でワクチンの接種を行うことが発表されている。やっと連邦政府が、それらしい動きをするなあといった気分だ。

さて、今回のワクチンが注目されているのは mRNA (メッセンジャーRNA)を採用しているところだ。これは、これまで世の中で使われてきた不活性化ワクチンとは根本的に仕組みが違う。よくよく内容を読んでみると、なんだかちょっとSFチックだなと思った。

これまで一般的だった不活性化ワクチンというのは、実際の細菌やウィルスを殺して毒性をなくし、免疫成分を取り出したものだ。つまり、ワクチンの接種というのは、毒性を殺したウィルスを体内にいれることになる。このため、毒性ないと説明されても、ウィルスを体内にいれたくないという理由でワクチンを拒否してきた人は相当数いた。

これに対し mRNA ワクチンというのは、その作成過程に実際のウィルスはまったく参加していない。体の中で免疫に必要なタンパク質を作る情報を運ぶ mRNA という遺伝物質に、ターゲットのウィルスに対抗する免疫を作成するための情報をのせて体に注射することにより、人間の体の仕組みに司令を与えて免疫に必要なタンパク質を作らせるという、なんとも科学的な仕組みである。つまり、従来のワクチンのようにウィルスを体内に注射するものとは全く違うのだ。

こんなSFチックな感じのする仕組みがたった10ヶ月で開発されるなんておかしいと思うかもしれないが、実はこの技術、その仕組みを知れば想像ができるように癌の治療薬としての可能性は相当高く、もう何年も前から研究が進んでいてれ実用化が目指されていたものだ。

パンデミックにより、コロナウィルスに対するワクチンが必要だとなったときに、既にこの技術の研究を進めていたファイザーやモデルナは、mRNAにコロナウィルスに対抗する免疫用のタンパク質の情報をのせることにより、人間の体にコロナウィルスの免疫を作らせる司令をだすというワクチンの開発にすぐにとりかかることができたというわけだ。

mRNAの特徴はその開発にかかる時間が、従来の不活性化ワクチンに比べて劇的に短いことであり、コロナウィルスの遺伝情報が世界に共有されてしまえば、実際のウィルスを入手したり培養したりする必要はなく、すぐに mRNA の開発を研究所ですすめることができる。そして、有効率95%という、仕組みだけではなく、その効果も相当にSFチックなワクチンが劇的な速さで完成したのである。

このワクチンが成功すれば、医学界では例のないほどの大きな進歩となるだろうと言われている。先程の書いたように mRNA の仕組みを使えば、人間の体内の免疫システムに直接様々な司令をだせるようになる。となると癌のやその他、免疫の誤動作によって発生する様々な疾患への新治療の道が大きく開かれるのだ。

しかしその前に、世界はコロナウィルスと戦うためにワクチン接種による集団免疫を目指さなくてはならない。今の所、深刻な副作用は数件報告されているアナフェラキーショックだが、それ以外の免疫への誤動作による予想もしないような副作用などが起こらず、着実に接種者が増えていくことが望まれる。

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