シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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世界が作り変えられていく

我が家にはティーンエイジャーがいて、すでに一年以上、自宅からバーチャル授業を受けている。と聞くと、大変だなとか、気の毒だなとか、考える人は多いと思うのだが、実は本人はこれまでの学校人生のどのときよりも充実しているらしい。

オンライン授業はわかりやすく、いつでもチャットで先生に質問ができる。周囲のノイズも目線も気ににならず、自分のペースで課題はできるし、オンラインのグループワークでもさっさとMC主導権を握ってしまえば好きにすすめることができる。やりたい放題に自由に授業をこなし、これまでのいつよりも成績もよい。本人はこのままずーっとオンラインでもよいという意見だ。

実は、これは珍しくなく、わりと巷でよく起こっている事象らしい。オンラインスクールで苦労している学生もいるのだが、むしろうまくやっている学生も多い。そして、周囲の高校生にオンラインスクールの感想を聞くと、過半数が今のオンライン授業のほうが登校するよりもいいと応える。

このようなロックダウンの結果をうけて、米国のあちらこちらの高校で、オンライン授業のコースを設立する動きが始まっている。これを歓迎する生徒もいれば、オンラインで成績が良くなった子供の親もそれを後押しするする。その一方で、この一年間が子供の無駄になったと、オンラインスクールを著しく低く評価する親もいれば、オンラインコースの設立に予算を無駄遣いするのはやめてくれ、とすごい剣幕で抗議する親たちもいる。

実際のところ、自分のペースで自主的に自由に学習をすすめることのできるオンライン学習には評価される点も多くあり、これでより優秀な学生が創出されるならば、オンラインか登校かは選択制にしてもいいんじゃないかという意見は十分に納得できる。

しかし、いざ身内にオンラインコースを選択させるかとなると、やはり二の足を踏む人は多いんじゃないだろうか。あまりに先が見えない。

たとえば、高校4年間をオンラインで学習した子どもたちは、当然ながら大学もオンラインを望む可能性が高い。となると、大学で得るべき学生や教授とのネットワークやコミュニケーションをこれまでのように得ることができなくなる。これは将来問題にならないだろうか。いや、しかし、仕事もオンラインでやるなら別にいいんじゃないかという話もある。実際に米国の仕事はロックダウンのために大幅にオンライン化したため、在宅ワークが激増し、今やどこにいても仕事ができる時代が急速に近づいた。

というわけで、オンラインの高校に行き、オンラインの大学に行き、オンラインでネットワークやコミュニケーションを取得し、オンラインの仕事につく。これは米国では今や十分に現実的な人生設計なのだ

さてこの仮の話に出てきた人は、いったいどこで実際の人に会うんだろう。だいたい、この人は結婚とかできるのだろうか。別に結婚しなくてもいいけど、結婚したいと思ったときにどこでどういう風に相手を探すんだろう。

今や、オンラインで結婚相手を探すことも難しくないので、オンラインで見つかるかもしれない。しかし、このように何十年もオンラインで自分のペースで暮らしてきた人が他人と一緒に暮らすことができるのだろうか。相当難しいような気がする。ということは、結婚しても別々に暮らすかもしれない。

じゃあ、子供ができたらどうするんだろう。別々に暮らす親の間を子供が行ったり来たりするのはいいとしても、この人達は子供という別の人格と暮らすことができるんだろうか。そもそも子育ては自分のペースで進められないことの連続だから、この人たちにはちょっと難しすぎるような気がする。

ということで、子供には養母を雇うことすると、子供も親とは別の空間で暮らし育つことになるのだろうか。そして、学校に通う年齢になったら、親を見習ってオンラインの学校に通い始めるのかな。

あれ、なんか、これ知ってるな。こんなSF読んだことあるような気がする。ああそうか、ああいうSFの世界は現実世界がそうなりうるという前提のもとで舞台設定されていたんだな。SF作家ってすごい。

なんて考えながら、この「ニューワールド」が良いのか悪いのかは、よくわからないけれど、今、時代が過渡期にあることをひしひしと感じる。選択する人にとっては、SFの世界を現実にすることができる世界にいるのだ。

一年前にロックダウンが始まったとき、車がほとんど走らなくなった道路を眺めては、世界が非現実的でSFみたいになったと感じたのをよく覚えている。そのときは、パンデミックが終わったら、世界は当然元に戻るのと思っていた。けれど、たぶんもうそんなことはない。きっと世界は良くも悪くもそっくり元の状態にはもどらないのだ。

多くの学生は学校に戻るだろう。しかし、もう世界は学校に戻らないという選択肢を知ってしまった。多くのオフィスワーカーもオフィスに戻るだろう。しかし、世界はオフィスに戻らないという選択肢も知ってしまった。握手もハグもしなくてもいい選択も知ってしまったし、マスクをして出かければ病気にならないことも知った。買い物に行く必要のない事も知った。

パンデミックは、方向性は未だ定まっていないけれど、世界と人間を確実に多方向にダイナミックに変え続けている。この過渡期に成長する子どもたちは、今後の世界がどのような形に変化していっても対応できるような柔軟さが必要になるんだと思う。

頭の固い古い世代には、想像もできない時代がたぶん近づいてきている

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