シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ワクチンを拒否する人びと

情報の伝達は難しい。

ワクチンの接種が進むにつれて、接種資格があるにもかかわらず接種を拒否する人々に関するニュースも増えてきている。例えば、必要不可欠な職業として軍人には接種資格が降りているのだが、これまでに軍に所属する人の3分の1がワクチンの接種を断っているという。また、最も犠牲者が出ているカテゴリである年配者の施設でも接種を拒否する人が多く、ある施設ではなんと住人の60%がワクチンの接種を断ったという。

その背景には、今回のワクチンに対する専門家や報道のコメントの影響が大きいと言われている。多くの専門家や報道が、今回のワクチンを接種したあとも、人々がマスクの着用とソーシャルディスタンスの保持を続けなければならないことを説明するために、今回のワクチンは重症化には効果が高いが、感染拡大を防止するかどうかは未だ判明していなことを強調したからにほかならない。この報道が、まわりまわって、ワクチンを接種しても感染する、マスクからもソーシャルディスタンスからも解放されない、つまり、接種する意味がないという間違った結論の伝言ゲームにのってしまったらしい。

実際のところ、ファイザーもモデルナも症状の重症化を防ぐワクチンとして非常に効果が高いことが知られているが、同時に感染拡大を防ぐことができるかどうかについては、まだ研究結果が公式に出ていない。安全性や効力を証明するための必要なテストはされてはいるが、それ以上の情報は、接種と並行して研究結果が現在進行系で公表されている現状である。実際のところ、接種が始まってからのデータを見る限り、どうやら感染拡大防止にも効果が高いらしいことが最近わかってきた。2日前の日記にも書いたイスラエルのデータや、それ以外のさまざまなデータがそのような結論を示唆しているが、まだ正式な発表には至っていない。

その間に、「ワクチンを接種しても感染する」とか「ワクチンを接種してもマスクからもソーシャルディスタンスからも解放されない」という部分だけが報道から抜き出され、強調されて作り上げられた悲観的な噂のほうが、どんどん広まっているらしい。この日記を始めたころ、このような数々の感染をめぐる噂について書いたことがあるのだが、この「ワクチンは意味がない説」も、まさしくそれらの噂の一つである。

たとえ感染拡大を抑えることができなかったとしても(実際は高い確率でできそうなのだが)、ワクチンには意味がある。第一に重症化を防ぐ高い効果がある。重症化が防げるということは、つまり死者が減るということなのだ。接種した人にとって、COVIDは死に至る病ではなくなる確率が非常に高いのである。これはとんでもなく重要な効力なのだ。その上、重症化しないということは入院患者が減るということである。これにより医療崩壊のリスクがぐっと低くなり、仮に入院することになっても手厚い看護を期待できるようになる。これだけでも、ワクチンを接種する価値は相当高いことがわかる。

その上、多くの人が接種すれば接種するだけ、社会が集団免疫に近づいていく。COVIDが宿り主を見つけづらくなり、燻った燃えカスのようになっていくのだ。この集団免疫が獲得できて初めて、人々はマスクを外し、元の生活に戻れる。つまり、ワクチンを接種することは自分の命を守るだけではなく、社会が元の状態に戻るために協力することでもある。

というような重要で肯定的な情報はなぜか上手く伝わらずに、否定的な情報は噂となってどんどん伝わっていってしまうのは、もはや人間社会の七不思議のような気がする。なぜか否定的な噂や悲観的な噂は広がりやすい。

このような現状に対して、専門家やメディアは自分たちの伝え方がよくなかったのではないかと考えているようだ。が、そもそも噂を受け入れてしまう人々の多くは、専門家のインタビューや正式なメディア報道に触れていないことも多い。3億人の人がいれば、そのうち一部はニュースを熱心に読む人かもしれないが、一部はニュースをまったく見ない人かもしれない。常に情報は周辺の人から聞いて暮らしている人かもしれない。そもそも移民の国なので、英語がわからな人もたくさんいるのだ。

そんな国で正しい情報を社会の隅々まで伝えるのは本当に難しい。それも、米国のように集団主義よりも個人主義が徹底している国ではより難しいと思う。

それでも最終的には、70%を超える国民がワクチンを接種することになるだろう。私は楽観主義者なので、じつはこのことについてはそれほど心配していな。ただ、リスクの高い人がワクチンを拒否したという話を聞くと、その人の命の安全のために少し気の毒だなあという気持ちになる。余計なお世話だとは知っているけれど。

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