シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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噂の真相(ロックダウン24日目・解除予定日まで残り25日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

 

ロックダウンに前後して、ロックダウンやウィルス対策に関連した様々な噂を聞くようになった。特にSNS上では顕著で、投稿された書き込みや、チャットグループを介して、バラエティに飛んだ情報がネットワークを駆け巡っている

「お母さんが同士でちょっと立ち話をしていたら警察に罰金を取られた」

「来週からは食料品店も営業停止になる」

「感染者がイブプロフェインをとると症状が悪化する」

「ニンニクとビタミンCは感染リスクを下げる」

「20分おきに暖かい飲み物を飲むとウィルスを中和できる」

「直射日光はウィルスを殺す」

「黒人にはこのウィルスは感染しない」

ちなみに、最初の噂については、警察がわざわざ公式に否定ツイートを発表した。

一見して嘘っぽいものから、具体的な事例や研究所の名前などが併記されている本物っぽいものに到るまで、数えればキリがないほどの多種多様な噂が蔓延している。

そして、これらの噂に共通して言えるのは、ニュースソースが曖昧だということだ。「それどっから聞いた?」と訊ねると、大抵は知り合いからSNSで教えてもらったという答えだ。または、知り合いの知り合いがどこかのニュースで見た「らしい」、聞いた「らしい」というものもある。つまり、この手の情報はニュースソースがどこにあるか実際には知らない人々により拡散されている。

これらの噂はあっという間にネットを駆け巡るので、全く繋がりがない複数の人間から同じ情報を受け取ることも珍しくはない。複数の人から同じ情報を受け取れば、受け取った人の中ではその情報の信ぴょう性があがってしまう。それにより、情報はより本当らしく広まっていく。

情報の中には、研究所の場所や名前などが入っているから本当なんじゃないかと思わせるものもある。が、そういう地名や名前使ってグーグルしてみると、実はすでにデマだと判明してリストされていることがほとんどだ。むしろ、具体的な名前が入っているために検索しやすくデマだと判明しやすくなっている。

噂は恐ろしい。

まず、噂によって危険に晒される人がいる。今回もシリコンバレーアジア系住民の中には差別を受けた人がいる。また、噂によってソーシャルディスタンスを守らずに行動して自ら感染リスクをあげた人もいる。

次に、噂によってトイレットペーパーの買い占めのような社会的問題に発展してしまう行動が誘発される。ショッピングカートいっぱいのトイレットペーパーを買い占める人がいる一方で、お年寄りが空っぽの棚の前で途方に暮れている姿がある。

そして、さらに好ましくないのは、噂によってウィルスに得体の知れない性質が肉付けがされていき、人々の不安をさらに煽っていることだ。前にも書いたけれど、情報は少なすぎるのは危機的にまずいけれど、多すぎるのはたとえ全て真実の場合でも精神衛生上よくないのに、根拠がない無駄にショッキングな情報は人の心を蟻地獄のように吸い込んで暗い地中に沈めていく。

噂というものはあっという間に拡散していくのだが、厄介なのは、噂を広める人間のほとんどは、悪意を持ってやっているのではないし、本当だと信じ込んでいる訳でもない点にある。むしろ逆で、もしかしたら「本当かも知れない」重要な情報を「念のために」友人や家族に教えておこうという、100%善意による行動なのである。だから、受け取った側はその情報を大切に扱うし、それをまた善意を持って友人や家族に伝えていく。しかし、その善意の行動が結果的に社会不安を煽ってしまっていることにはなかなか気づかない。

では、本物なのか偽なのかわからない情報を家族や友人から受け取った時、私たちはどうするのが正解なのだろう。私のオススメは、たとえどんなに本当っぽい情報であったとしても、ニュースソースを確認することだ。今はインターネットに溢れている情報を一瞬で検索できる時代だ。SNSで駆け巡るような情報は、たいてい衝撃的な内容だから、インターネット検索すれば割と簡単にニュースソースを見つけることができる。

もし5分検索しても信頼できるニュースソースを探し出せなかったら、大抵の場合、偽だと思っていい。そして、それが偽だとわかった場合、または、偽じゃないかなと思った場合は、その情報はとめてしまおう。それ以上広まることがないように、自分のところでストップさせよう。

だからと言って、情報を伝えてくれた人を批判する必要ない。彼らはあくまでも善意と好意で情報を伝えてくれているのだ。そこを理解した上で、「いろいろ検索してみたんだけれどソースがはっきりしないし、ただ噂かも。でも、念のために覚えておくね。私のこと考えてくれてありがとう。」とさらりとお礼をいって、そして情報は頭の片隅の引き出しに放り込んで鍵をかけてしまえばいい。もし噂が蔓延しているチャットグループに入っていたら、「ソースはなに?」と聞いて、「ソースがわからないなら、ちょっと微妙だね」という、つまらないけれど冷静なコメントを入れてあげればよいのではないかと思う。

  

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