とりあえずの着地点
昨日の状態で書きっぱなしも何なので、今日は珍しく感染から離れた話。
昨日の混乱から一夜明けたら、バイデン氏の次期大統領当選が正式に決まっていた。議員たちの夜通しの審議により深夜に最終集計結果を元に、現職のペンス副大統領が正式にバイデン氏の勝利を宣言した。
それに応えるように同深夜、トランプ大統領のツイートが流れた。彼のツイッターアカウントはロックされていたので、側近のツイッターアカウント経由のツイートだった。どこまでツイッターが好きなんだろう。このツイートでは、未だに選挙の敗北は認められないが、政権の移行には応じる構えを表明していた。
ここまでが、私が寝ている間に起こったこと。そして、ワシントンは特に荒れることもなくむしろ静かすぎる朝だった。もちろんニュースは、前日の事件のまとめや、未だにわかっていない様々な議論や、今後の予想などで大変にぎやかだったが、街は静かだったと思う。
わかっていないことといえば、昨日のブログにも書いたのだけれど、連邦議会のビルがなぜあんなに簡単に暴徒の侵入を許したのかが驚きだったのだが、やはり各マスコミもそのことで盛り上がっていた。
様々な憶測が飛んでていたが、特にこの夏の人種差別に対する大規模なデモの時と比べると、あまりにも対応が違いすぎるという点が繰り返し挙げられていた。あのときもホワイトハウスから連邦議会にいたるまで、あらゆる場所で平和的なデモ更新が行われたのだが、デモ隊に対してペッパーガスなどが使われたのは記憶に新しい。あのとき連邦議会ビルを守っていた人たちはまるで軍並みの装備で、かつ大量要員が派遣されて所狭しと並びビルを守っていた。
今回の暴動の際は、あれだけ暴動の危険性が予測されていたにも関わらず、連邦の保安要員とワシントンポリスだけの薄々の警備で、暴徒が押し寄せたときには、数で圧倒的に足りていない警備員たちは暴徒を押し止めるよりも、中にいる議員を守るほうにまわってしまったのだろう。ニュース映像では、侵入者はまるで観光でもしているようにのんきにビル内を歩ききまわって写真やビデオをとっていたし、それをなすすべもなく見ている警備員が数人写っていただけだった。緊迫感も感じられず、言われなければ観光客と通常の警備員のようだった。もちろん緊迫した場面もあったのだろうけれど。
私のような一般人でも感じるくらいなので、この差はいったいなんなのだとマスコミが叩くのも無理はない。これも結局は人種差別なのではないか、白人のデモだから暴徒化はしないだろうという偏見があったのではないかと報道されている。
別の憶測では、機動隊の働きをするナショナルガードは大統領の要請で働くため、夏の人種差別に対するデモのときは大統領が事前にナショナルガードを配置していたが、今回のデモについては、大統領は当然ながらナショナルガードを派遣する気はさらさらなかったことも要因ではないかと議論されている。
どちらにせよ、素人集団がハンマーや拳や靴やなぜか松葉杖などを使って連邦議会に押し入れることがわかってしまったので、今後は、国際テロなどの可能性を考えて安全体制を強化するべきだと誰もが思ったと思う。ちなみにビルに常設の保安隊のチーフは今回の失態を受けて、早速辞任した。
そんな記事が踊っている中、今回の被害者だった議員たちから、大統領の罷免を求める声明が発表され始めた。今回の暴動を煽った責任がとることと、彼の精神状態は大統領の職務を遂行できるとは思えないという理由により、アメリカ合衆国憲法修正第25条に基づき大統領を罷免するべきだという声は、議員に限らず経済界のトップからも発せらている。
これにはさすがにトランプ大統領は慌てたらしい。そこで、前回のツイート以来の沈黙を破り、とうとう新しい声明をビデオ録画で発表した。またツイッターを使って。どうしてそんなにツイッターが好きなんだろう。今回は、彼のツイッターアカウントは、不適切なツイートを削除することによりアンロックされていたので、自分のアカウントを使ってビデオメッセージをだしている。このビデオにより事実上の敗北宣言をし、前日の暴徒を厳しく非難した。昨日とは180度転換して、言うことが別人である。
まあ、いいのだ。私的には、安定と協調が戻ってくれば、昨日狐だと言われた生き物が、今日は狸だと主張されてもかまわない。もちろん、そう考えない人もたくさんいるので、まだまだ世論は揺れそうだし、社会は揉めそうだし、今後2週間なにが起こるかわからず安心はできない。とりあえず、今回連邦議会に侵入した過激な人たちは非常に危ないので、少なくとも不法侵入で全員逮捕される必要があると思う。
昨日も書いたように、この暴動で大統領のサポーターのうち4人が亡くなったが、そのうちの一人は議会のビルの中で銃撃された。今日の発表によると、カリフォルニアからワシントンまでデモに参加するために飛んだカリフォルニア民だった。彼女は最近米国で急速に力を伸ばしている極右のグループの陰謀論を信じており、その陰謀論によるとトランプ大統領は米国の救世主なのだそうだ。このグループ、私にはオウムを思い出させるものがある。
本当に世の一部の人々は陰謀論が大好きなのだが、数ヶ月前に、感染に関連した陰謀論について書いた日記がある。「5Gがウィルスを拡散?!なんだそれ??」には、別の荒唐無稽な陰謀論の存在について記録してある。改めて読んでみると、ああ、やっぱりそうかもなあと再納得した。米国の現実と折り合えず取り残された人々の鬱憤と不満と破れた夢たちが、終わることなき幻想と陰謀論を生み出し続けるのかなと。
最後に、今夜、暴徒から議会を守っていた保安要員の一人が、暴徒との衝突により受けた傷がもとで亡くなった。これで犠牲者は5人となった。心からお悔やみをもうしあげたい。