シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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スーパースプレッダーにならないで

暴徒」にも書いたのだけれど、連邦議会に暴徒がなだれ込んだ時に、暴力による被害と同時に心配したのは、感染による被害だった。なにしろ暴徒たちはだれもマスクをしていないし、押し合いへし合いビルの中に流れ込んだ。ビルの中、つまり室内だ。そのうえ、叫んだり怒鳴ったりして息をあげている。あれは、スーパースプレッダーイベントが発生する典型的な環境にぴったり当てはまっていた。

幸いなことに議員たちは、彼らと同じ部屋で面と向かうことはなく安全な部屋に避難した。なにしろ国会議員たちというのは政治家のキャリアの最終到達点に近いので、年齢層が高い人たちが多い。平均年齢71歳である。現在の米国の感染死者の80%が65歳以上ということを考えれば、彼らは感染リスクが高い人たちなのだ。

まあ、彼らが暴徒たちと面と向かい合うようなシチュエーションが仮にあったとしたら、感染どうこうという前に、命が危なかったかもしれないけれどね、と次々と明らかになる暴徒たちの持っていた物の記事を読んでため息をついた。銃を持っていた者もいれば、明らかに拘束に使うためのプラスチックのジップタイを持っていた者までいて、あれはやっぱりデモじゃなくてテロになる寸前だったのだと改めて知る。

ちょっと話が横道にそれた。

そう、年齢の高い国会議員たちの感染を心配したのだ。幸いなことに暴徒たちの同じ空気を共有したようではないので安心していたのだが、今日読んだニュースで話が変わった。

あるビデオが公開されたのだが、議員たちが避難していた部屋の1つで撮られたものだ。彼らがCOVID対策として複数の部屋に分かれて避難していたのは知っていた。その1部屋の様子なのだが、マスクをした議員の一人がマスクをしていない議員グループのところにマスクを渡そうとしているシーンだった。なんとかマスクを渡してつけてもらおうとしている議員は「これは政治的な意味はありませんよ」と、ただマスクをつけるように懇願しているのだが、頼まれている5人ほどのグループはあいまいなほほえみを浮かべながら「結構です」と断っているのだ。「ありがたいのですが、必要ありません」と笑いながら断っている。目が笑ってない。

どんなに複数の部屋に分けているとはいっても、部屋には保安要員もいるので割と混んでいる。そして、当然密閉されている。このような環境でいまだにマスクをしないで他人と近距離で過ごしているだけでもぎょっとするというのに、その状況を心配した人から渡されるマスクを断っているのだ。

まさに非常時、避難中だ。空気を共有したくなくても、誰も部屋を出ていけない状況である。こんな状況にあってさえ、同室の人々の心配や懇願を無視してマスクをしない人たちが、国会議員だという。主義主張が違うからだと言っても、さすがに開いた口がふさがらない。主義主張の前に、礼儀とか人間性の問題のような気がする

そのうえ、残念なことに、水曜日の事件に巻き込まれた議員のうち一人から陽性が出たことが今日分かった。事件で感染したわけではないが、感染した状態で気づかないまま事件に巻き込まれたのは間違いない。彼が誰と一緒に避難していて、避難中にマスクをしていたかどうかまでは発表されていないが、こういう状況がありうるから少なくとも避難中は全員がマスクをしているべきだったのだ。来週には議員全員がウィルス感染テストを受ける予定だ。あの事件がスーパースプレッダーイベントになっていないことを願ってやまない。

さて、ビデオに写っていたマスクを断った議員のうち、1人の事務所がコメントを発表した。「議員は健康な成人であり、同じ週にホワイトハウスで陰性であった。彼女は健康な成人がマスクで口を覆う必要があると考えていない」そうだ。

2つコメントしよう。

最初に、ホワイトハウスで陰性であったといわれているが、それはどのレベルのテスト結果であったかは発表されていない。9月のホワイトハウスのスーパースプレッダーイベントの時も、出席者全員が直前のテストで陰性だった。その時の使用されていた、唾液によるラピッドテストはその結果の信頼性が低いことで知られてている。

次に、たとえそのテスト結果が正しかったとしても、あの時点で彼女が健康な成人だと誰も証明できない。なぜなら、陰性結果が出てから、事件が起こる水曜日までに感染した可能性がいくらでもある。特に彼女がマスクをしない人であれば、可能性は高くなる。

誰にでもわかる単純なことなのだ。そして、必要なことは、ただ、もらったマスクをつける、それだけのことなのだ。そこにあるのは、だたのマスク、布切れだ。それが持つ意味は、政治的主張でもプライドでもなくて、周りの人間やコミュニティを守るための協力心と心遣いだけだ。

彼らができなくては、国民にやらせることなどできるわけがない。バイデン次期大統領は、政権を交代したら、国民にマスクをするように促すと発表していたが、実に先が思いやられるニュースだった。

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