5Gがウィルスを拡散？！なんだそれ？？（規制緩和フェーズ2）

実は数ヶ月前から一部で話題になっていたようなのだが、すっかり話題に乗り遅れていて、今日気づいたニュースがある。５G（第5世代移動通信システム）が電波を通してウィルスを拡散しているという荒唐無稽な噂により、５Gアンテナへの放火や破壊が相次いだという話だ。

この話に気づいたのは、パンデミックがでっち上げたと考えて行動した結果、5月に感染した夫婦のニュースを読んだときだ。6月に、夫は回復し、妻が亡くなったという、残念なニュースだった。夫は当初の自分の行動を後悔していて、「あの頃はパンデミックがでっち上げか、５Gのせいだと思っていた」とコメントしていた。

５G？なんで、そこで５G?５Gって通信システムだよね？それ以外に５Gっていう言葉があるんだろうか？

そこでニュース検索をかけてみると、出るわ出るわ、どうやら本当に一部の人々は通信システムの５Gの電波がウィルスを拡散していると信じているらしい。

これは、これまで聞いたどの噂よりも驚いた。ウィルスがどういうもので、電波がどういうものか多少なりとも知っている人なら、ウィルスが電波にのって広がるなんて、どう頑張っても信じることはできない。

５Gの電磁波が生命に影響を及ぼすという噂ならまだしも、ウィルスが電波に乗るというのはまったくもってSFの世界でもありえなければ、漫画の世界でもありえない。なぜなら、あまりにあり得なさすぎてストーリーが成立しないからだ。

この噂を信じている人たちは、ウィルスは誰かが故意に５G電波にのせて拡散しているという陰謀論を信じているらしい。ハリウッドのB級映画だってもう少しまともなプロットを用意できると思う。いや、ハリウッドも最近は質の低下が叫ばれていることを考えれば、B級映画だったらこのストーリーはあり得るかもしれない。昔見た「巨大蟻の襲撃」並みのパニック映画は作れそうだ。

それにしても、どうして、このような眉唾ものの陰謀論に夢中になる人たちが世の中にはたくさんいるのだろう。彼らは信じているふりをしているではなくて、本当に信じているらしい。彼らは、SNSで繰り返されるこういう話を喜んで鵜呑みにしているか？ウィルスや電波のような科学的な仕組みをまったく理解していないのか？いったい何なんだろう。

陰謀論。それは何十年何百年もいろいろな形で人間社会の中に存在している。陰謀論とは、世の中には一般市民の知らない大きな力が存在していて、その目的のために世界は操られているとか、まあ、だいたいそんな話が多い。ちなみに、どんなに荒唐無稽であっても陰謀論を信じる人とたちと、知性の間には何の関係もない。高等教育を受けた人たちにも、陰謀論に傾倒する人たちはたくさんいる。

独断と偏見かもしれないけれど、陰謀論に傾倒する人たちの特徴は、現実の世界に納得できない人のような気がする。陰謀渦巻く世界により、人間は不幸になってしまったとか、そのような陰謀を戦うことは自分の生きる価値を高めるとか、たぶんそんな思考が、なかなか意のままには動かない日常から彼らを逃避させてくれるんじゃないかと思う。

おかしな話だが、彼らにとって陰謀論はたぶん一種の安心感を生み出しているように感じる。「陰謀のせいだ。陰謀さえなくなれば世界はもっとよいところになる」という呪文され唱えれば、不満ばかり平凡な毎日が、陰謀と戦うエキサイティングな日々に変身する。SNSにコメントを書き込んだり、陰謀と戦うための様々な行動をすれば、凡人でもヒーローになれる。

陰謀の存在を知らない哀れな人達の世界を救うために、SNSの書き込みが増え続け、同じ陰謀論を信じる者同士が、そうだそうだと盛り上がる。パンデミックで仕事を失って時間のある失意の人達の中には、増え続ける陰謀論の書き込みに夢中になる人もいるかもしれない。B級映画ぐらいの面白さはある。ウィルスは人工的につくられたものだ！そして、５Gの電波によって拡散されているのだ！そうだ！そうだ！

怖いなと思う。世の中がコントロールされていると考えている人は、世の中をコントロールできると考えている人だ。

世の中にはうまくいくことも、うまくいかないこともある。運の良いことも、運の悪いこともある。そんな不安定な日々の大波を自分の意思と責任で乗りこなして、誰のせいでもなく、誰のためでもなく、ただ懸命に生きている人々の絶妙なバランスの上に世界は成り立っている。そして、コントロールフリークな陰謀論者は、ただでさえ危うい世界の均衡を無理やり崩そうとしている。