シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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倦怠感に甘えるな

今のカリフォルニアの状況があまりにもまずいので、書く方も読む方も陰気な気分になるから書くかどうか迷うところなのだけれど、この日記の趣旨からしてこれを書かないわけにはいかないよなあ、ということでカリフォルニアの感染爆発状況をレポート。

今のカリフォルニアの感染爆発の原因の1つとしてサンクスギビングホリデーの旅行や帰省やホームパーティが挙げられているが、私の日記で見る限り、カリフォルニアの感染拡大はそれよりも前から始まっていた。10月末まではあんなに安定していた感染者数が上昇傾向に切り替わったのは10月20日を過ぎた頃だ(「はずれてほしい予感」を参照)。調度、カリフォルニアの規制緩和が進み、大きな領域ががオレンジティアと呼ばれる相当規制緩和されたティアになってからほんの1週間ほどした頃である。

やはり緩和されると感染が広がるのだなと思っていた矢先、大統領選挙戦の興奮と混乱が米国を訪れ、人々の関心は一気に選挙に振られて、その間も確実に伸び続けていた感染拡大への警戒感がどんどん薄れていったように思える。そして、選挙結果が一段落した頃から感染者数は一気に急速な上昇気流にのってしまった。

そんな感染者が激増中の最悪のタイミングで、米国の伝統的な家族の行事であるサンクスギビングホリデーがやってきて、「旅行も帰省もパーティもキャンセルしてください」という州政府や医療関係者の呼びかけも虚しく、やはり相当数の人たちがリスクの高い行動をとった結果が今の爆発に繋がっていく。

カリフォルニアで治療にあたっている医療関係者が患者たちに尋ねたところ、その多くはサンクスギビング前後あたりから警戒感が緩んで友人とパーティをしたとか、社交にでかけたとか答える人が相当数いるとのことだ。そのころには既に相当感染者が増えていたのに。感染者数が増え続けているにもかかわらず、警戒感がどんどん緩んでしまう状況をどう理解したらいいのかわからないが、マスコミはこれを「Covid fatigue(Covid への倦怠感)」と呼んでいる。

簡単言うと、人々は疲れてしまったのだ。マスクにもソーシャルディスタンスにも社交のない生活にも、感染防止のために神経を使う生活すべてに疲れ果ててしまったらしい。ほとほと嫌になってしまって、実は感染拡大はそれほど深刻なんじゃないんじゃないかとか、感染しても大丈夫なんじゃないかとか、そういう言葉で自分自身を説得し始め、あたかも「普通の生活」が戻ってき始めたかのように振る舞う人々が増えたのだろうか。それとも、単純にこれまでも人々は規制の目をかいくぐって遊んでいたのだけれど、今までだいじょうぶだったし、寒くなったから家の中に入りましょうってなったのが原因なのかもしれない。いずれにせよ、このたったの1ヶ月半の間に危機感が相当薄れてしまったのは間違いない。

そして、その薄れた危機感は、今のような感染拡大状況に至っても、まだ緊張感が戻ってきていないような気がする。

数字で見るとカリフォルニアの感染者数はものすごい。昨日の新規感染者数は3万8千人を超えている。11月1日には4千人を超えたと騒いでいたのに、その10倍近い新規感染者数をだしている。昨日の死者は379人だ。カリフォルニア州だけですでに2万1千人以上の人が亡くなっている。昨日のニュースではカリフォルニア州政府は「大量死者(mass fatality)」プログラムという恐ろしい名前がついているプログラムを有効にした。これは災害などで大量の死者が発生するときのために用意されていたプログラムである。追加の死体袋を5000個購入し、死者を保管するための冷蔵倉庫を60個用意したというニュースも流れた。

それなのに、今日、食料品店の駐車場に行くと人が溢れている。特に若い人たちは必然性があるようではなく、ジュースやアイスクリームを店で買って外でぶらぶら食べながら集っている感じだ。店外とはいえマスクをしないで大声で笑ったり喋ったりしている人達もいる。今日の午前中、州民の携帯電話に州政府から緊急警告メッセージがあって、なるべく家にいるようにという警告が嫌なブザー音と一緒に自動的に流れた。みんな受け取ったよね?あれ受け取ったの私だけじゃないよね?倦怠感がここまで感覚を麻痺させてしまったのだろうか。

ところで、感染者も死亡者も、その多くは在宅で働けない仕事の従事者であると言われている。そして、そのような仕事に従事している人々はラティーノやブラックが多い。カリフォルニアのラティーノの死亡者は白人の3倍、ブラックの死亡者は白人の2倍と言われている。この話を聞いて、「気の毒だなあ、でも私達にできることはないなあ」と思う人が多いと思う。しかし、それは違う。できることはあるのだ。人々が外にでかけなければいい。これだけコニュニティ感染が広がっている状態では、人々がでかけなければ、それだけで外で働いている人たちの感染のリスクは下がるのだ。例えば、食料品の買い物を週一にすれば、それだけ食料品店はこまなくなるし、店内の空気を吸い続ける人々の感染リスクは下がる。

うちのティーンの英語の授業で先日スピーチの課題があって、オンライン授業なので提出するスピーチをビデオ録音しているのをみる機会があった。彼が選んだトピックは感染防止規制についてだったのだが、そのスピーチの中にこんなフレーズがあった。

「人々は自由でいる権利があるという。自由を守るためなら命も惜しくないという。しかし、こういう人たちは根本的に誤解をしている。確かに、死ぬのも生きるのも彼らの自由だ。しかし、そんな彼らでも、ほかの人間の生命を危険に晒す権利は持っていない。そんなものは誰も持っていない。それが僕が規制を守らなくてはならないと考える根拠なのだ。僕は直接的にも間接的にも、誰かの命を奪う原因にはなりたくはない。」

14歳にもわかることだ。

なぜわからない人たちがこんなにたくさんいるのかと残念な気分になった。

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