シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ワクチン開発は遅れているのか?(オレンジティア)

一ヶ月半ほど前に、現大統領がワクチンの配布の準備を11月1日をターゲットにすすめるようにと州政府に連絡したために、ワクチンの信頼性が下がったことについて書いたのが「ワクチンと米国の失敗 」なのだが、この中の2つのトピックのどちらについても続報となるのが今回の日記だ。

まず、ワクチンについて。11月1日まで残り2日を残すところとなったが、未だ配布どころか、FDAが認証する準備ができているワクチンは存在しない。それどころか、開発の最終フェーズであるフェーズ3のトライアルで満足のできる結果データを得られているワクチンはまだない。

なんであれ「開発」に関わったことがある人であれば理解できると思うのだが、新しいものを開発する時に、何もトラブルがなく、壁にぶちあたるらずにスムースに成功にたどり着く開発なんて、そんなものはどこにも無い。これがコンピュータ関連製品だったりしたら、ちょっとぐらい問題が残ったままでもとりあえず予告したスケジュールでリリースしちゃって、後から修正を配布すればいいか、なんて日常茶飯事だが、ワクチンのように人の命にかかわるものであればそんな無茶はできない。多数の治験結果のたった1つにでも問題が発生すれば、それがワクチンの影響なのか、それとも別の現象なのかを検証しなければならない。

実際に、そういうことが、米国で開発されているワクチンの2製品に発生した。AstraZeneca社のワクチンはフェーズ3の間に、1人治験者が神経系の症状を訴えたため、検証のためにテストが5週間停止することになった。また、Johnson&Johnson社のワクチンも1人の治験者が脳卒中のような症状を訴えたため、検証のためテストは2週間停止された。

このような治験中のトラブルだけではなく、治験そのものの開始が遅れているワクチンもあれば、とりあえずフェーズ3が進んでいるものの、治験者中にデータ分析に必要な感染が発生しないために、十分なデータが揃わず、現状ではFDAの認証を受けるられないというワクチンも有る。

ワクチンは今すぐにでも完成すると言い続けて選挙戦を展開している大統領には気の毒だが、すべてが最速で進み選挙前にワクチンが完成するというおとぎ話を信じていた専門家はいなかったので、この現状に驚いている人は実は少ないだろう。

むしろ、この治験プロセスを聞いて安心した人は結構いたかもしれない。もし政治的な圧力でワクチンの開発が後押しされていたら、このようなトラブルはもみ消されて都合の良いデータを集めたワクチンが認証されたかもしれないのだ。考えただけでも恐ろしい。様々なトラブルや壁にぶつかりながら、より安全で効果のあるワクチンが作られることが通常のプロセスであることを考えれば、今開発されているワクチンの信用度は、この「遅れ」のおかげでむしろ上がったといえる。

そもそも、ワクチンの開発には通常3年から5年かかると言われているほど、難しいものなのだ。また、バグをいれたままβ版をリリースして、後で修正すればいいというような性質の製品でもない。慎重さと正確さを必要とする人の命にかかわる製品だ。

ワクチンの開発は遅れているのか?

もちろん遅れてなどいない。ただ、大統領が口にした希望的観測による予定よりは遅れているし、彼の言葉を信じて希望を持ち続けた人々にとっても遅れている。しかし、冷静な目でみれば、今現在の状態においてもワクチンの開発は通常よりもずっと速いのだ。

さて、「ワクチンと米国の失敗 」で書いたもう1つのトピックは、ヨーロッパをヨットで旅をしている友人が、SNSにヨーロッパの人々がごく普通に暮らしている写真をアップロードしたことで、私が衝撃を受けた話なのだが、昨日、急速な感染拡大に危機感を感じたフランスとドイツが再び4週間のロックダウンを宣言した。夏の間の普通の暮らしは一時的なものだったらしい。それでも十分に羨ましかったけれど。

9月初旬、友人のヨーロッパの写真を見た時に、米国はヨーロッパに比べると、感染対策にとんでもなく失敗したのだなと感じたのだが、ヨーロッパも再び感染の大波に囚われていることを考えれば、このウィルスの感染防止は予想以上に難しものだということが再認識できる。

それでも、感染の波が膨れ上がった途端に、国家的にロックダウンを4週間宣言できるヨーロッパの国はすごいなと思ったし、ちょっと羨ましかった。現政権がリーダーシップをとってあっという間にロックダウンを決めて有無を言わさず実行する。こうすることによって、少なくとも4週間後には確実に感染者が減り、感染の波は収まっていくことだろう。

これが米国ができなかったことだ。今でもできない。米国はあっちこっちでバラバラな主義のもとに、バラバラな規制がかかっている。ようやくかかっている規制も、個人の主義により守られていないことが多い。米国の感染は、春以来一度もヨーロッパやアジア並みに抑え込まれたことがほんの一瞬すらもなく、世界一の感染者数と死者数を記録し続けているのだ。

個人の自由は大切だ。しかし、命が関わった非常事態では、社会を守るための強いリーダーシップも大切だ。米国は2大政党制により、国の意見が明確に分断され、いろんなことが政治的闘争にからめとられてしうまう危険が高い。こんなときにこそ国民を守るために役立つべき政治が、ウィルスとの戦いをむしろ邪魔してしまっているところが、米国の本当に残念なところだ。

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