シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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生存に不可欠な資質(ロックダウン35日目・現時点の解除予定日まで残り14日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

シリコンバレーのロックダウン解除のマイルストーンである5月3日まで残り2週間となった。2週間後の月曜日、カリフォルニアのビジネスが再びその花を開き、時計の針が進み始めるのを私たちは見ることができるだろうか?

答えは高い確率で否である。むしろ、明日にでも解除予定日が延期されるのではないかと私は予想しているのだが、この予想が正しいかどうかは明日報告することにしよう。

確かに、カリフォルニアの1日における新規感染者数は徐々に減ってきている。それでも過去7日間の平均は優に1日1千人を超えている。毎日患者が1千人増えるという状況は、いかにカリフォルニアが広く人口が多いといえども、収束が近いとはとても言えない。その上、死者数は当然のことながら患者数の増加を後追いする形で増加するので、ここ数日まさにピークを迎えていて1日で100人亡くなった日もある。

今は、患者の増加カーブがやっと右上昇から平らになったところで、これから徐々に左下降になり、一時的では収束した状態になるには2週間では足りないと考えられている。それどころか、一部のニュースでは、食料品店の店員に感染が広がっているので、顧客を店の中に入れるのをやめた方がいいのではという議論があるくらいなのだ。先は長い。

そんな中で、もし規制が一部でも緩むとしたらどのビジネス分野から営業許可を出していくのかというのは、最近の注目の話題の一つだ。営業停止になっているビジネスはどこも瀕死の状態なので、どのビジネス分野も自分たちへのゴーサインを待っている。

顧客である住人としては複雑で、たとえば、レストランが早々に通常営業を始めたとして、すぐに外食に出かける気になれるのかと聞かれれば、答えは実はNOだ。テイクアウトに慣れてしまったコミュニティでは、感染のリスクを考えてしばらくはテイクアウトが主流になるのではないかと思う。

今現在、食料品店と薬局とハードウェア ショップは開いている。カリフォルニアでは生死に関わるガソリンスタンドや車の修理工場も開いている。レストランもテイクアウトなら開いている。病院はもちろん開いているし、歯医者も開いている。ただし、歯医者に関しては救急でなければ、そもそも患者が行く気になれないので、閉めている医院も多い。

じゃあ、このミニマムだけど特に深刻な問題のない今の生活を維持するのに、ぜひ営業を再開して欲しいと思うビジネスは何だろう?

私は、床屋と美容院に開いて欲しい。ロックダウンが1ヶ月をすぎ、家族の誰もが髪が伸び放題だ。特に普段からちょっと長めの髪を好んでいたティーンエイジャーは悲惨なことになっている。かくいう私も白髪頭が恐ろしいことになっている。

先日、とうとう我慢できずに自分の手で白髪染めに挑戦してみたのだが、前にも書いたように眉毛を上にあげることもできないほど何をやっても不器用なので、出来上がりは散々だった。ティーンエイジャーの髪も私が散髪してやると提案したのだが、丁重に断り続けられている。実は理髪店というのは、我が家には相当に必要なビジネスだった。

そう思っているのは、顧客だけではないらしく、サンフランシスコのヘアスタイリストが中心になって、最初に規制緩和になるビジネスの中に理髪店を含めてもらえるように署名運動が始まった。そしてあっという間に5万件の署名が集まったのである。

確かに訪れたいビジネスの筆頭ではあるが、サービスを行う人と受ける人の距離がとても近いビジネスでもある。署名運動の嘆願書には、サービスを行う人も受ける人もマスクをする、サービスを受ける側は体温のチェックを受ける、サービスを行う人は消毒を頻繁に行うことで衛生面に最大の注意を払う、というようなNew Normalな条件での営業が提案されている。髭剃りのような、顔に覆いかぶさるサービスは行わない方針らしい。

理髪店は生存に不可欠なビジネスなのか?と聞かれれば否である。しかし、太古の昔から存在していたビジネスだけあって、生存には不可欠ではなくても、生活には割と不可欠なビジネスだったのだ。私も、彼らがオープンしたら最初はちょっと躊躇するけれど、レストランよりは遥かに先に訪れそうな気がする。マスクと消毒薬で完全防備してヘアサロンに座っていたら、さぞや非日常な気分になることだろう。

ところで、ロックダウンを緩和する一番確実な方法は、誰もがウィルスの検査を受けることであるが、検査キットに限りがある現状ではそれは不可能だ。今朝読んだニュースによると、ドイツでは5月中に全国民に検査を受けさせて追跡、調査を行う計画があるらしい。ドイツはアウトブレイクが発生した国の中で死亡率が劇的に低い。さすが医療の国であるが、検査を全国民に受けさせることができるのは、それだけが理由ではないと思う。

ドイツで長年首相を勤めているメルケル首相の現在の支持率は80%を超えている。この政治の絶対的安定感は、有事には非常に役に立つ。信頼してついていこうと思わせるリーダーがいれば、人々の不安は低く抑えられ、少々の不満や不便も受け止めることができる。リーダーシップは、人間集団の生存に不可欠な資質なのである。

  

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