シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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Takeout Tuesday(ロックダウン37日目・現時点の解除予定日まで残り12日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

今日、ニュースで新しい言葉を聞いた。

Takeout Tuesday

もともと米国にはTaco Tuesdayという習慣があって、火曜日にメキシカンレストランでタコスがスペシャル価格になったり、献立に困ったお母さんが火曜日だと気づき「今日はTaco Tuesdayだからタコスにしましょ」という感じに活用されたりする。

ロックダウンがによる最速で最大の打撃を受けているのはレストラン業界で、特に体力のない中小規模のレストランは今や虫の息である。連邦政府から支給される中小ビジネス向けの支援ローンの第一弾は申請が殺到したため、すでに予算が枯渇、今日追加予算が承認されたところだ。この支援ローンは申し込み作業が面倒なうえ、申し込んだ後もまだ一銭も届いていない!と地元のレストラン業界は嘆いている。

そんな地元のレストランの苦境をサポートしようと生まれたのが、Takeout Tuesdayらしい。「火曜日にはレストランからテイクアウトしよう!」という、ロックダウンが生んだ新しい習慣だ。

しかし、残念なことに、どんなにたくさんの住人がテイクアウトをしたとしても、数々のレストランでディナー時には満席、その上にテイクアウトも出していた2ヶ月前の状態とは比べようもない。テイクアウトを受け取りに行くと、キッチンにだけ照明をつけた静かで薄暗いレストラン店内には、マスクをした受付の店員が一人だけいて、厳重に封をされたテイクアウトの袋を渡してくれる。陽気なウェイトレスもイケメンのウェイターもいない。彼らは休職しているか、職を失っているかのどちらかである。そのどちらにしても、想定外のアクセスの多さにすぐにフリーズしてしまう失業保険の申請ウェブサイトに脱力していることだろう。そこには、2ヶ月前までの音楽と笑顔が溢れた光景とは別世界がある。

その光景に寂しさだけではなく物悲しさを感じるのは、私が彼らの危機的な状況がロックダウン時だけの一時的なものではないことを知っているからなのかもしれない。実は、たとえ規制が緩和したとしても、レストラン経営者たちは経営を続けられるかどうかわからないという非常に厳しい立場に立っている。

ウィルスの治療薬もワクチンもない現況では、人々は規制が緩和された後も、基本的にソーシャルディスタンスを守る生活を続けることになる。となると、現存するレストランは席数を半減することになると言われている。想像できると思うのだが、顧客数が半数になっても利益を出せるレストランは多くない。その上、その半数になった客席さえ埋まる保証がないのである。1ヶ月以上続いた感染防止習慣と心理的ストレスを考えれば、レストランが開いたとしても顧客がすぐに帰ってきてくれるかどうかわからないと、経営者たちは頭を抱えているのだ。

正直なところ、私もレストランが開いたとしても、すぐに外食に行く気にはならない。行ったとしても、テイクアウトをして帰ってきてしまいそうな気がする。そもそもロックダウンの影響で、家で家族と食事をする機会がぐっと増えた。そして、家で食べることに慣れてしまえば、出かけるよりも気楽なので、外食そのものが面倒に感じられるようになってきている。

人々の生活習慣そのものがすでにNew Normalに移行し始めている今、2ヶ月前の同じような状態に戻ることは、物理的にも心理的にも当分ないかもしれない。そのことを踏まえると、シリコンバレーのレストランはどれくらい生き残ることができるのだろう。一説によると、三軒に一軒は一年以内に潰れるのではないかと目算されている。

あるニュースでは、生き残るにはレストランはこれまでになかったようなクリエイティブなアプローチが必要であると言っていた。レストランのクリエイティブなサービスって何だろう。

例えば、日本の出前やホテルのルームサービスのように、使い捨ての容器ではなくて、普通の食器に料理を盛って配達するというのはどうだろう。顧客は受け取ったお皿ごと食卓に並べるだけで、レストランにいるような素敵な食事が食べられて、食べ終わった食器はそのまま専用の箱に入れて玄関の外に出しておけば、勝手に引き取ってくれる。昔の日本の蕎麦屋の出前みたいに。うん。悪くない。味気ない使い捨て容器に入ってくる食事とは一味違うような気がする。

そんな呑気なことを考えていたら日付が変わって水曜日になってしまった。最近は、どちらを向いても八方塞がりで行き詰まったニュースが多いので、ときどき逃避して現実から目を背けてしまう自分に気づくことが多くなった。ロックダウン状態は、どうやら人の思考回路にも徐々に影響を及ぼしているらしい。

今日はニューサム州知事がロックダウン解除に向けての現在の状況について会見することがわかっている。これは私たちのロックダウン生活に直結する重要な情報だ。

ぜひ、ライブで聞きたいと思う。

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