シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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混沌としたメルティングポット(ロックダウン77日目・現時点の解除予定日まで残り0日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

今日がシリコンバレーのあるサンタクララ郡のロックダウン最終日だ。と言っても、「ロックダウンが終わりました。みなさん元に戻りましょう。」ではないことは、みんな知っている。シリコンバレーは未だ緩和段階の一番最初のステージで厳しい規制がかかっている。レストランは引き続き持ち帰りのみ、ショッピングは店頭でピックアップのみ、家族以外の人間が集まるパーティやイベントは禁止、スポーツも禁止、床屋やヘアサロンもまだ開いていない。単純にいうと、ロックダウンの時とあまり何も変わっていないし、多分明日になってもそれほど変化はないだろう。

先週中にロックダウンについて何らかの発表があると思ったけれど、特になかったので、今後は規制緩和のステージを進めることによって人々の動きを制御していくのだと思う。明日の6月1日にはもしかしたらなんらかの発表があるかもしれない。

ここ2ヶ月以上、ニュースのヘッドラインは米国で10万人以上の犠牲者を出しているパンデミックに関係したものばかりだった。今でも犠牲者は増え続けている。にも関わらず、昨日と今日のニュースのヘッドラインは別の話題に溢れていた。突然にして、ウィルスがなくなったのかと誤解できるぐらいに。

現在米国を揺るがしているのは、先週の月曜日にミネアポリスで起こった事件を発端にした抗議行動である。平和的な抗議行動もあれば、暴力や暴動や破壊行動に発展してしまったものもある。とにかく、全米の主要都市では大きなムーブメントとして今週末の米国を揺るがしている。ここシリコンバレーのあるサンノゼでも金曜日に抗議行動する人々がハイウェイを通行止めにした。サンノゼの抗議行動は、おおむね平和的で暴力に繋がった行動は少なかったが、サンフランシスコ湾を挟んで反対側のオークランドではもっと深刻だったらしい。オークランドはこの辺りで最もアフリカ系アメリカ人の居住者が多いからだ。

サンノゼの抗議行動のニュースを通して象徴的だったのは、参加者のほとんどは白人かヒスパニック系だったことだ。サンノゼにはアフリカ系アメリカ人の居住者は少ない。しかし、ミネアポリスの事件は、当事者たちだけではなくたくさんの人々、特に若い世代の怒りを爆発させた。米国の若者のエネルギーは日本では考えられないものがある。彼らの怒りは、集結し互いの怒りを触媒にして渦を巻き燃えあがる。時には、制御不能な破壊行動をも生み出す。若者たちが全米を揺るがしている。

パンデミック的視点から見れば、これらの抗議活動は感染リスクの高い大きな集会とみなされる。サンノゼの抗議活動参加者の70%はマスクをしていたが、もちろんソーシャルディスタンスは守りようもなかった。ミネアポリスの抗議活動ではマスクをしている人を見つける方が難しい状態だった。このような混沌の中で、再びウィルスが拡散されるのではないかとの懸念が広がっている。

そんな、揺れに揺れている不安な米国で、昨日SpaceXが有人飛行に飛び立った。素晴らしい天気に恵まれ、あっという間に青空の中に消えていったロケットの映像は米国のもう一つの姿である。ここには、優れた頭脳と強靭な精神と夢がある。彼らの目標は火星への移民計画だ。

異なる考え方を持った人々が、異なる生き方をして、異なる待遇で育ち、異なるレベルの夢をみる。そんな異なる人々が集まることで国を構成している米国は、常にその形を変え、まるで柔らかい膜に包まれた液体のように掴み所がなく、形も動きもダイナミックだ。

人々の夢はさまざまな障壁にぶつかる。そして、その壁に地道によじ登って越える人もいれば、体当たりで破壊しようとする人もいる。はるか上空に飛んで、壁が見えないくらい上空まで飛び続ける人もいる。この混沌としたメルティングポットで、四方八方に飛び散り続け燃え続けるエネルギーこそがこの国を象徴するものなのだろう。

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