シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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将来の不安へのストレスと感染するストレス

とうとうティーンエイジャーたちのファイザーの接種が始まった。これまで16才以上が接種対象だったのに対し、12才から15才までの接種が始まったのだ。

これを待ち望んでいた人々は多いが、同時に、子供に接種させるかどうかを決めかねて悩む親はたぶんもっと多い。12才以上にワクチン接種許可 」にも書いたように、接種可能になったらすぐに接種させると答えた親は30%にとどまっている。

実際、ここシリコンバレーで解禁になった日、私の知り合いで接種した子供は1人に留まった。これは、全員が躊躇しているというわけではなくて、単純にハイスクールの期末試験期間と重なったため、試験後に接種する、または、夏休みに入ってから接種すると考えている生徒も多いからだと思う。が、実際に躊躇している親は本当に多い。私の知り合いにもたくさんいる。

子供にワクチンを接種させることを躊躇する最大の理由は、ファイザーがまったく新しい新技術であり、誰もが10年後20年後の影響を予想することができないからだ。接種直後の副反応はすでに相当のデータが集まっているので、ある程度の予想が可能だが、10年後20年後のデータはもちろんない。私達がそのデータであり、未来の人々の科学の発展に寄与することになる。

そんな、SFチックなビジョンの新技術なので、自分自身が接種するときは、大丈夫だと言われているとか、科学を信じているとか、残りの寿命を考えるとあまり心配しないとか、様々な理由を持って、自ら判断して接種しているので迷わない親たちも、子どもたちのこととなると判断しかねる。

そもそも、子どもたちにはこの先長い未来が待っているのが普通だ。20年後に副反応が発見されて人生が狂うかもしれないとか、どうして安易にワクチンを接種させたんだろうと将来後悔するかもしれないとか、心配に値する理由はたくさんある。そして、子供が若ければ若いほど、子供の判断ではなく親の判断が接種するかしないかを決めることになる。15才の子供ならば接種の利点やリスクを説明し本人の意向を聞くことも可能だが、12才の子供にはその判断は相当に難しい。子供が若ければ若いほど、それを決断しなくてはならない親のストレスは計り知れない。

ただ、ワクチンを接種しなければ、接種した人に比べてできないことが増え続ける社会では、必然的に接種するほうに傾いていく可能性は高い。たとえば、親がワクチンを接種していても、子供がワクチンを接種していない場合、レストランの室内の飲食、ホームーパーティ、様々な施設、レジャー、イベントへの参加など、様々なシーンで家族全体が不自由なままになる。また、学校によっては、登校するにはワクチンの接種を強制する学校もでてくる。

むしろ、そのように強制されてしまえば楽な気分になる親もいるかもしれない。決断の責任の一部を行政や教育機関に預けることができるからだ。しかし、この問題は本来はそういうものではない。親と、可能であれば子供も、十分に納得して接種する、または、接種しないを選択したほうがいい。

ちなみに、我が家のティーンは期末試験明けにワクチンの接種予約が入っている。迷いがまったくないかといわれれば、答えは否である。私は科学を信じるほうなので、100%安全などといわれたら、むしろ胡散臭く感じる。通常、科学には100%予測できるということはない。むしろ予測が外れるリスクを計算するほうがずっと科学らしいと思っている。

だから、10年20年後に我が家のティーンにワクチンの影響が絶対ないと信じているわけではない。もしかしたら、あるかもしれない。ない可能性のほうが高いとは思っているが確信はない。では、なにが接種の決め手なのかといえば、もちろん生活が自由になり活動範囲が増えることもあるが、そもそも我が家のティーンはインドアオンライン派なので、今の生活を続けようと思えば容易に続けられることを考えれば、それが決め手ではない。

本当の決め手は、ワクチンを受ければ非常に高い確率で感染から守られるので、本人の日々の生活のストレスが大幅に減るからだ。いつ感染するかわからないという不安を抱えて日々を生きていくのは、大きなストレスだ。それも、集団免疫が達成されない限り、そのストレスは何年にも渡り彼らの生活を支配する。10年後20年後の発生するかどうかわからない未来の不安のために、現在の生活と精神衛生を犠牲にするのは理に適わないと考えているからだ。

さっきもちょっと書いたけれど、人々は若い人にはこの先長い未来が「普通はある」思っている。しかし、そんなものは誰も保証してくれない。非常に身近に若者の死を体験したことのある私にとって、誰にとっても未来は絶対だとは思っていない。若かろうが、年をとっていようが、必ずしも10年後20年後があるとは限らないと思っている。それならば、来るか来ないかわからない未来に怯えて、感染というストレスを取り除けるのに取り除かないで、今を生きるのはもったいないと考える。

ということを我が家のティーンにも説明する予定だが、たぶんそんな事を説明しても、お気楽な本人は「そんな難しく考えないで、別に接種すればいいじゃん」ぐらいに受け止めそうだと思うけれど。

最後に、11才以下のワクチンの接種について触れておく。11才以下のワクチンは現在臨床試験中で、接種はまだ先だと言われているが、実はこれについて興味深い記事を読んだ。

ある専門家が、11才以下はワクチンの接種を控えてほしいと訴えているものだ。彼がそれを主張する理由は、ワクチンの安全性に不安を感じているからではない。彼はワクチンの安全性もその強力な効果も信用している。では、なぜそのような主張をするのだろうか。

彼は、これまでのデータから11才以下の子供が感染し発症する確率は非常に小さく、また発症しても重症化する確率は更に小さいことを考慮した場合、貴重なワクチンを世界のリスクの高い人々に回すべきだと主張しているのだ。

私達はときどき身近な周りのことしか見えなくなる。米国では日々収束が近づいていると実感できるパンデミックだが、今でも世界ではたくさんの医療関係者、高齢者、基本疾患のある人々が日々感染し、重症化し、死亡している。世界的にはパンデミックは収束には程遠く、彼らの頼みの綱はイスラエルや米国や英国を一気に安定させたワクチンなのだ。発症する可能性が非常に小さい子供にワクチンを接種させるくらいなら、世界中で感染の大波にさらされている、一刻も早くワクチンを接種されるべきリスクの高い人々に譲ってほしいと彼は訴えているのだ。

考えさせられた記事だった。

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