シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

ワクチンの知的財産権

とうとうワクチンがティーンエイジャーに接種される日が近づいているらしい。

今日の報道によると、FDAが12歳から15歳までのティーンエイジャーに対するファイザーの接種を来週にも許可するのではないかという。我が家にもティーンがいるので、このニュースは見逃せない。

米国の多くの16歳以上の人々がワクチンを接種しているのに対し、15歳以下の子供たちにはワクチンの使用許可が出ていなかった。この影響は大きい。例えば、大人がワクチンを打ち終わったので、夏の休暇の予定を立てようとしても、子供のワクチンの接種が終わっていないために、いろいろな行動制限がかかり具体的に計画できない家族も多い。また、学校の再開したとはいえ、子供たちがまだワクチンを接種していないので、クラスサイズや時間割を制限せざるをえず、なかなかパンデミック前の授業体制まで戻すことができない。

そんな矢先、大人の新規感染者が減った影響により、米国の新規感染者の20%以上を15歳以下の子供となる事態が発生している。何しろ子供たちには、ワクチンを接種していないにも関わらず、室内でのスポーツ活動などリスクの高い活動を許可されているので、感染する子供はむしろ若干増えている印象だ。ただ、子供は感染しても重症化することが少なく、後遺症に悩まされることも相当レアであることが救いだ。しかし、だからといって、亡くなる子供がいないわけではないし、後遺症を発症した子供もいないわけではない。

この状況において、親としては子供を感染させたくないと思うのは当然だ。特にインドで多くの子供達が亡くなっていくニュースを目にする毎日なので、ティーンへのワクチン接種の許可は、多くの親たちにとって胸を撫でおろす報告だと思う。

ただ、実際にワクチンを接種する段階になると、多くの親たちはきっと少しは悩むのではないかと思う。自分たちが接種する時はあまり考えなかった、ワクチン接種反対派の主張や副反応が気になるに違いない。前に日記で紹介したような荒唐無稽な主張であれば単に無視すればいいのだが、噂の中には「DNAに影響を与えるワクチンなので将来の生殖活動に影響する」というような、嘘っぽいけどもしかして、というようなものもある。ちなみにこの噂は、医療関係者から、全く根拠がないと報道されている。

このように米国でパンデミック収束に向けて加速する一方で、インドの状況は芳しくない。1日の新規感染者が40万人を突破するなど、記録を連発し、医療は崩壊状態。インドの病院で、入院患者の酸素が足りなくなり、供給がおいつかないことが原因で無くなる事例が毎日のように報道されている。新規感染者の数が減り始め、ピークは超えられたかのような数値が出始めたとしても、2、3週間後に感染者数を追うようにして死者数が伸びていくのは、今回のパンデミックの特徴である。今後インドの死者数は恐ろしい記録を報告するだろうと予想されている。

そんな状況で、4大ワクチンと呼ばれるワクチンの3つを生産する米国は、ワクチンの知的財産権を一時的にでも放棄して、世界でワクチンの生産ができるようにするべきだという論調や要請が目立つようになってきた。前の日記にも書いたように、ファイザーやモデルナのような新技術を使ったワクチンの技術情報を世界で共有することは、これまで何十年もの時間と膨大な投資を使って技術を開発してきた製薬会社と投資家には受け入れがたく、このようなことが強制されれば資本主義の根本を揺るがす。

今回、知的財産権の放棄を強制すれば、今後大変な努力の元に新技術にたどり着いても、結局は不条理に取り上げられてしまうという前例を作ることになり、今後の技術開発へのモチベーションに大きく影響するのは必須だ。だからと言って、知的財産権を守ために、救うことができるかもしれない命を亡くすことは受け入れがたく、大きな批判を招くだろう。

現在、製薬会社と世界政治の攻防戦は非常に微妙なところにいる。製薬会社側は、知的財産権を守る代わりに、自らの生産体制を増強することにより、世界にワクチンをできるだけ安価に配布するために十分な生産力を確保することを約束しているが、果たしてそれが可能なのかどうか。今後ワクチンの接種がティーンにも拡散していく状況も加味して、彼らが彼らの手だけでどこまで世界を救うことができるのか、または、一時的にでも知的財産権を放棄せざるえなくなるのか、ワクチン外交は非常に難しい岐路に立っている。

  にほんブログ村 海外生活ブログ サンフランシスコ・ベイエリア情報へ    

もっと読みたい!SF・ベイエリア人気ブログはこちらから!

もっと読みたい!カリフォルニア州人気ブログはこちらから! 

PVアクセスランキング にほんブログ村