シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ワクチン接種済みの人にパンデミック前の生活が戻る(かも)

2日日記を休んだら、話題がてんこ盛りになった。

もちろん外せない話題はCDCのガイドラインの変更だ。最近頻繁にガイドラインを変更しているCDCだが、今日のニュースは驚きを持って迎えられたのは間違いない。

つい2週間前に、ワクチン接種済みの人はアウトドアではマスクを外していいが、公共のアウトドアやインドアでは引き続きマスクをするようにというガイドラインを発表したばかりなのに、今日は、ワクチン接種済みの人は、ほぼすべての状況でマスクをとってもいいし、ソーシャルディスタンスも必要ないとなった。アウトドアもインドアも、人混みの中でも、どこでも。つまり、ワクチン接種済みの人は、パンデミック前の生活にほぼ戻ってよいという発表なのだ。

いくつか例外がある。公共の乗り物、つまり、飛行機、電車、バスなどでは引き続きマスクを着用すること。また、最終的には各州や郡の判断に任せるので地元の支持がでるまでは勝手に規制を破らないようにという注意もあった。

それにしても、ついこの間まで、ワクチン接種済みの人でも、人混みやインドアではマスクを着用するようにと言っていたCDCに、いったいなにがあった?

そもそもCDCが、ワクチン接種済みの人にマスクの着用を推奨していた大きな理由は次の2つだ。

1つ目はワクチン接種後にも感染することはあるという事実だ。これをブレイクスルー感染と呼ぶ(「ブレイクスルー感染ってなんだ?」を参照)。しかし、現実世界でワクチンの接種が進むにつれ、データが積み重なり、ブレイクスルー感染のリスクが明確になり始めた。その結果、ブレイクスルー感染した場合は、その症状は非常に軽く押さえられている。また、より多くの人が接種することにより、ブレイクスルー感染の発症率がはっきりしてきた。レアもレアの0.01%以下と言われている。

2つ目はワクチンを接種した人でも、発症をしないだけで、ウィルスを運ぶ可能性があるかもしれず、つまり感染拡大に寄与する可能性があるという説だ。これは臨床試験が短く制限された条件で行われた結果、ワクチンの効果として発症を抑えることは証明されていたが、ウィルスを運んで他人に感染させるかどうかまではデータを集められなかったために、安全サイドをとって生まれた説だ。しかし、こちらのほうも、現実世界でのワクチンが進むにつれて、どんどん感染拡大そのものが収まっていくことから、どうやら感染拡大を止めることができるようだという強い仮設がたてられるようになった。

この2つのリスクが、予想していたよりもはるかに低いことを表す現実データを根拠に、CDCは保守的すぎるという周囲からのプレッシャーが強まっていた。つまりは、ワクチンはCDCの専門家が予想していたよりも遥かに優秀だったのだ。

それに加え、今のCDCには大きな目標がある。よりたくさんの人にワクチンを接種させ集団免疫を達成することだ。現在米国では、ワクチンを喜んで接種する人は、少なくとも1回目の接種をほぼ完了している。今は、ワクチンの接種を躊躇する人や、接種しないと決めている人の心を動かすことが必要だ。そのため、オハイオ州のように5月26日から毎週5週間にわたり、ワクチン接種者から1人に100万ドルをプレゼントという、とんでもない企画まで打ち立てる州がでてきた。カリフォルニアの Youth Night (「Youth Night でワクチン」を参照)のギフトカードなんて甘いもんだ。米国らしくてちょっと笑った。

ちょっと話が横道にそれた。そう、なるべく多くの人にワクチンを接種させたいCDCは、「ワクチンを接種すれば普通の生活が手に入れられますよ」作戦に出たのである。これまでは、ワクチンを接種していない人を守りつつ接種をすすめるという体制だったCDCだが、ワクチン接種者が50%を超えつつある今、作戦変更、ワクチンを接種している人を優遇し、接種していない人は自己責任で自分を守ってください、それができないなら接種してくださいという作戦にでたのだ。米国はダイナミックなので、作戦も状況に応じてコロコロ変わる。

さて、仮にAさんがワクチンを接種していないとして、Aさんがワクチンを接種しているかしていないかは見た目ではわからない。それでは、ガイドラインが未接種者はこれまで通り規制された生活ですと言ったとしても、Aさんは接種しているふりをして普通の生活をできるじゃないか、と考える人もいるかもしれない。そうなのだが、Aさんがそれをしたとして、実は困る人はあまりいない。なぜなら、ワクチンを接種した人にとっては、Aさんがマスクをしていようが、いまいが関係ないのである。それほどにワクチンの防御効果は強力だ。

一方でBさんもワクチンの接種をしてないが、同時に感染を恐れているとする。マスクをしてソーシャルディスタンスを守って行動していれば、Bさんの生活は不便なままだが感染する可能性はあまり高くない。唯一ありうるリスクパターンは、Aさんが運悪くどこかで感染し、感染に気づかないままマスクなしで外出し、Bさんと室内で長い時間接触した場合だけだ。

この作戦だと、Aさんは危険なままで、Bさんのリスクは少しだけ高まり、接種済みの人のリスクはほぼ変わらない。Bさんは周りの人が普通の生活にもどって、自分だけが不便な生活とリスクを背負うことになるならば、ワクチンを接種しようと気が変わる可能性は高い。そこで、最終的にはAさんだけ危険なままだが、もうこれは自己責任ということにする、そいうことなんだと思う。

ただ、世の中には何らかの事情でワクチンを接種できない人、または、接種しても十分に効果が出ない人がいる。これらの人は、集団免疫が達成されるまでBさんの生活をつづけなくてはいけない。先程も述べたように、周りの人がマスクをとってしまうので、以前よりもリスクが高い状態になってしまう。これがこの作戦の最大の短所だろう。

しかし、どんな作戦でも長所もあれば短所もある。現在CDCは、とにかくなるべく沢山の人にワクチンを接種させたいので、この作戦に出たんだろうなというのは予想がつくところだ。少なくとも1人100万ドル宝くじよりは、理知的かなと思う。

これによって、どこまで接種者が伸びるかはまだ未知数だ。そもそも、このガイドラインを各州がどこまで適用するかも現時点ではわからない。たとえばカリフォルニアのニューサム知事が掲げている、マスク規制をやめるカリフォルニアの完全オープン日は6月15日で、まだ一ヶ月先だ。今回のCDCの発表を受けて、州政府が日程を変えるのかどうかは今の段階ではわからない。

ちなみに、今日のCDCの発表を受けて、サンフランシスコの人々のインタビューがニュースに出ていたが、多くの人がしばらくはマスクをしたままでいると答えていた。そうなのだ。私達は一年間に及ぶマスクをして感染を回避する行動にすっかり慣れてしまったので、急にマスクをとるのは不安なのだ。

多くの人が待ち望んでいたCDCの発表だったはずなのに、それを聞いた人々はとても冷静に、「しばらくマスクをしているよ」と答えたのである。世の中、どうなるかわからないもんだ。

 

明日は、もう一つの外せない話題、12才から15才のワクチン接種開始について。

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