シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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集団免疫は幻か

最近、米国のメディアでよく取り上げられているのは、はたして米国は集団免疫を達成できるのかどうかという話題だ。

一部の楽観的な専門家は、ワクチンの接種が順調に進んでいるので、7月には国民の70%程度の接種が進み集団免疫がほぼ達成されると語っている。が、多くの専門家は、感染力が高い変異株の出現が相次ぐ今、70%の接種率では集団免疫は達成されないだろうというのが、大方の意見だ。現在の感染力の場合、国民の80%から90%がワクチンを接種するか、すでに感染して免疫ができているという状況にならないかぎり集団免疫は達成できないだろうといわれている。

ところが、国民の約30%はワクチンを接種する気はないと考えられているので、実は米国は集団免疫を達成することはできないというわけだ。しかし、同時にだからといってがっかりする必要はないという意見も繰り返されている。パンデミックに振り回されているうちに、人々はいつのまにか「集団免疫」という呪文に囚われるようになった。まるで、集団免疫がなければゲームの負けのように思っているかもしれない。が、そんなことはない。一度この言葉を忘れよう、とどこか誰かがいっていた。

そもそも、集団免疫ってなんだったかなと、もう一度調べてみると、「集団免疫とは、ある感染症に対して集団の大部分が免疫を持っている際に生じる間接的な保護効果であり、免疫を持たない人を保護する手段である。」とウィキベディアが言っている。そうそう、そうだった。つまりワクチンを接種していない人も含めてウィルスが感染しなくなるという状況だ。

集団免疫が達成できないとなにが困るのか。実は、ワクチンなり感染なりで免疫を習得した人たちは、実はそれほど困らない。彼らだけで行動するときは、マスクをしなくてもいいし、ソーシャルディスタンスもいらない。本当に困るのは、何らかの理由でワクチンの接種ができない人たち、接種を拒否したために免疫を持っていない人たち、および、ワクチンを接種したにもかかわらず免疫システムが弱っているために十分な免疫を確立できなかった人たちである。

つまり多くの人々は、この弱者を守るために、免疫を獲得しているにもかかわらず公共の場でマスクをしたりソーシャルディスタンスを保ったりする。仮に集団免疫が達成されれば、これらの弱者も間接的にウィルスから保護されるため、マスクやソーシャルディスタンスが必要なくなる。集団免疫が達成されるかどうかは、この僅差なのだ。

仮にこのまま集団免疫が達成されなかったとしても、米国の感染者は減り続けるだろうし、たぶん70%程度の人々が免疫を獲得した時点では感染者も死亡者もゼロにはならないが相当低い数字に落ち着くだろう。そうなればし、たぶん高い確率でマスクやソーシャルディスタンスの規制は緩和されると思われる。

しかし、規制が緩和された後も、未だ免疫を獲得していない人たちは、十分に注意して暮らさなくてはならないし、そのような人が家族の一員にいる場合、その家族も十分に注意する必要がある。もしかしたら、大きなイベントへの参加を拒否されるかもしれない。しかし、それは免疫を持っている人たちのリスクのためではなく、免疫を持っていない人、つまり参加を拒否される人たちのリスクを考えての判断ということになる。

そして、ウィルスがその勢いを増す冬、いわゆるインフルエンザの季節には、免疫を獲得した人たちも、その免疫力が弱ったときには感染する可能性があると思われる。そう考えると、今後毎年インフルエンザの予防注射のようにCOVID予防注射のブースター接種が推奨される可能性は高い。

また、今回のパンデミックで米国人が学んだ大きな知識はマスクの効果だ。米国で毎年数千人の死者を出すインフルエンザだが、今年はほとんど流行しなかった。なぜなら、多くの国民が、公共の場でマスクをして、手を洗い、人との距離を十分に開けて行動したからである。この知識を受け入れた人々は、たとえ規制がなくなっても、息苦しくない涼しい季節がやってくれば、COVIDに限らず風邪をひきたくないという理由でマスクを着用して外出するようになるかもしれない。

集団免疫が確立されなくても、こうやって人々は以前よりも少しだけ注意を払いながら、普通に生活することができる。免疫を獲得できていない人たちには、不便な生活が続くだろう。しかし、大多数、少なくても70%ぐらいの人々は、ごく普通に、パンデミック前よりも少しだけ注意を払う機会が増えた世界を生きることができる。それほど絶望する必要はない。

集団免疫が幻であっても別に構わないのだ。ワクチンを受けることができる人は受ける。接種するだけで、自分自身は十分に保護されているのだ。怯える必要はない。だから、集団免疫が達成されないと聞いて、失望したり、精神的にストレスを感じる必要もないし、ワクチンを受けない人々を「集団免疫が達成できないじゃないか!」などと責める必要もない。

パンデミックの出口は1つじゃない。いろんな出口がちゃんとある。集団免疫という出口はしばらく棚の上に上げて、自分自身と家族の健康のためにできるベストのことをしていれば、それが出口なのだ。

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