シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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イエローティアとオフィス勤務

シリコンバレーの所属するサンタクララ郡が、カリフォルニアのティアシステム始まって以来はじめて、最も規制が緩和されたイエローティアに今日から昇格した。といっても、ワクチンの接種が始まってからというもの、巷の緊張感がすっかり溶けているので、以前のようなティア昇格に伴う喜びや緊張がない。カリフォルニアのティアシステムも、ワクチン接種が進むにつれて名ばかりシステムになっていくのかもしれない。

それでも、レストランやジムなどを営業しているビジネスにとっては、朗報だ。室内にいれることのできる顧客数が増えるし、バーに至ってははじめて室内営業が可能になる。そして同時に発表されたのは、サンタクララ郡のビジネスに対するオフィス勤務規制の撤廃だ。とうとう、シリコンバレーのオフィスに人々が戻れるようになった。

もちろん、このパンデミックで浸透した自宅勤務体制により、多くのコンピュータ系の企業は以前のように毎日出勤する形には戻さないといわれているが、それでも週に何日かはオフィス出勤を始める人が増えてくると思う。

さて、この規制撤廃に伴いサンタクララ郡は新たなルールを設けたのだが、これが話題をよんでいる。

そのルールというのは、雇用主は、従業員のワクチン接種状態を調べて追跡しなくてはていけないというものだ。このルールに従うと、出勤する従業員のすべてがワクチン接種済みの場合、みんなマスクをしないでも従業できるが、一人でもワクチン未接種の従業員がいる場合、全員がマスクをしなくてはいけないし、未接種の従業員はソーシャルディスタンスも保たなくてはいけない。プライバシーの問題もあるので、従業員は必ずしもワクチンを接種済みかどうかを雇用主に報告する義務はないが、報告しない場合は未接種者と同じ扱いになる。

これはなかなか強硬なルールだと思う。サンタクララ郡は決してワクチンの接種を強制するものではないと言っているが、実際のところ、ワクチン未接種の従業員がいると、雇用主は非常に都合が悪い。未接種の従業員だけ、違う扱いにして自宅勤務を続けるなどのオプションを用意しなくてはならない。このような状況では、従業員にワクチンを受けてくれないかとお願いする雇用主もいるだそうし、それをお願いする分には違法とはならない。

これは従業員にワクチンを接種する重要な理由を与えることになる。法律家によると、もしワクチンを接種していないという理由で従業員がクビになっても違法にならない可能性が高いらしい。これはなかなかにプレッシャーが高い。サンタクララ郡は強制ではないと言いながら、結果的にはワクチン未接種の人々に最大限のプレッシャーを与えている。

ちなみに、現在サンタクララ郡では毎日のように予約なしのワクチンの接種イベントがあちらこちらで多発していて、いつでも誰でも仕事の後でも、仕事の前でも、ちょろっとよってワクチンの接種ができるようになっている。このため、受けに行けない理由を探すのは難しい。また、高校を会場にしてティーン対象のワクチン接種イベントも行われている。

今や、サンタクララ郡の16才以上の大人の75%がワクチンの1回目は接種済みだそうだ。全国的にはいまだに50%に満たない数字なのに、75%を達成しているというのは、サンタクララ郡のワクチン接種への信念というか執念が明確に数値化されている。ひょっとして、このまま頑張ればサンタクララ郡だけなら集団免疫を達成できるかもしれないなと思ったりする。隣近所の郡や旅行者がいるから本当の意味での集団免疫ではないのかもしれないけれど。

とにかく、このような感じにシリコンバレーの暮らしは、日々ストレスが軽減されていくのがわかる。散歩中にマスクをしている人は激減したし、マスクをしつつだが近所の友人を尋ねる機会も増えた。食料品の買い物に行くときもダブルマスクの必要性はもう感じないので、シングルマスクででかけるようになった。それほど、ワクチンの接種者が多く、感染者が少ない、つまりウィルスの蔓延度が低くなっているのだ。

どうやら、シリコンバレーは変異種の拡大よりもワクチンの拡大のほうが早かった。COVIDが拡散してはじめて、ウィルスとのレースで勝ったような気がする。確かにワクチン接種スピードは想像を絶する速さだった。あまり奇跡を信じるほうではないけれど、このワクチンの接種プロセスはまるで「奇跡」のように速かった。これを現実化した人々の努力に敬意を評したい。

そして今後は、ティーンエイジャーへの接種が進んでいくのだろうけれど、それだけではない。これからは、米国以外の国々へのワクチンの配布が注目されるべきだ。先日もバイデン大統領は6月末までに2000万ショットを世界に提供すると発表した。すでに発表済みのアストラゼネカと合わせると合計8000万ショットをCOVAXを通じて世界に提供する。これはもちろん人道的にも重要だが、それだけではない。米国にはこの行動をしなくてはならない理由がある。

米国と常に微妙な関係にある大国である中国とロシアはどちらもそれぞれ自国で開発したワクチンを持っている。世界にどれだけたくさんのワクチンを供給して世界の救済にどれだけ貢献するかは、今後の国際社会の影響力にも当然ながら関係してくる。国内状態が落ち着いてきた今、米国は世界に対するワクチン外交を本格化する必要があるのだ。

インドの一日あたりの死者が4千5百人を超えた。公式に数えられていない死者はこれを遥かに超えるだろうと言われている。この状況下、米国はその富と技術が生み出した驚くほど優秀なワクチンたちを、世界に拡散していかなくてはならい。

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