シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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米政権、知的財産の一時的な放棄を後押し

つい数日前に「ワクチンの知的財産権」で書いたテーマの更新情報だ。

今日、バイデン政権はとうとう、米国製ワクチンの知的財産権の一時的な放棄に対して肯定的な意見を表明した。今後は米政権が後押しする形で、他の先進国やWHOと調整し、自国製薬会社を何らかの形で説得し、ワクチンのレシピが一時的に無料で世界各国で使えるようになる可能性がある。

ワクチンの原材料と製造方法が公開され、その情報を無償で使うことが許可されれば、世界中の技術力のある国はワクチンの作成を開始できる。これがいわゆるジェネリックと呼ばれる薬品の製造過程である。世界中の国でワクチンのコピーが可能になれば、特にインドのような技術力がある国は、自国のワクチンを製造できるようになり、今回のパンデミック史上最悪のペースで広がっているエピデミックの収束の役に立つのは間違いないだろう。また、インド以外の貧しい国も。より安価な値段でジェネリックワクチンを購入できるようになり、分配スピードもあがるにちがいない。これは世界中がパンデミックから抜け出すための加速に一役買うだろう。

しかし、納得いかないのは、このような新技術の開発に何十年もの時間と資本を積み上げてきた製薬会社である。だからこそ、これらの知的財産権は「一時的」に放棄されることになるのが濃厚だ。つまり、パンデミック収束後、この技術は再び特許の形に戻し、その技術を応用する場合は特許料を支払う必要になると思われる。それでも、技術というのは一度出てしまうと、必ず違法コピーが横行するものだ。特に知的財産権にルーズな国というのは相当数存在するので、その辺りの国では一度開放された知的財産権が守られることは期待できない。

よって、製薬会社は現在のところ強硬にこれらの政策に反対を表明しているのだが、これを非人道的だと単純に責めるのは難しい。何十年もの研究と試験と失敗と再試行を繰り替えして作り上げた自分たちの大切な知的財産である。その気持はわかる。

わかるけれども、それを一時的にでも開放すれば、世界をパンデミック収束により早く近づけ、近い将来亡くなる可能性のあるたくさんの人の命を救うことができるのも事実だ。そして、米国政権は苦渋の選択として、一部の知的財産を犠牲にして世界にワクチンを広めることを選ぶようだ。

これは、WHOをはじめ世界の多くの国々に評価されるだろう。同時に、米国愛国者たちからは多くの非難を浴びるだろう。米国の資本主義やアメリカンドリームへの裏切りであると評価する人たちがかならずいるだろう。

それでも、米国の政権はワクチンの知的財産権を世界と共有することにより、世界を救うことで影響力を高める選択をするようだ。米国は再び世界のなかの米国として、その存在感を高めている。これが世界にとってよいサインなのかどうかは、それぞれの国の立場によって違うと思うが、実は米国民にとっても、それぞれの個人の立場によって評価がわかれる。

米国に住む日本人の私としては、米国が世界の米国でいてくれたほうが嬉しい。トランプ政権のときのように、米国一国主義の閉じた米国というのは、私のような移民にとっては暮らしにくくストレスが高い。

しかし、米国に何世代も住んでいて、まさしく米国を形成した人たちの中には、米国が世界に開けば開くほど、自分たちの国や富や知識がよそ者たちによって奪われていくいくように感じる人達も大勢いる。ちなみに、そういう人たちは白人だけではない。古くから米国の礎になってきたアフリカン・アメリカンやヒスパニックにも多い。このような人たちと、比較的新参者の間には深い埋めようもない分断があるのも事実だ。

今週も大きなアジア人差別事件が話題になった。そこにあるのはまさしく分断であり、その傷は深く、それが今、弱い立場にいるアジア系の年配者に牙を向いている。

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