シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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思わぬところで売上減

難しい話題が多いのでたまには閑話。私にとっては閑話だけど、ある商品群のブランドにとっては深刻なお話。

パンデミックによって売上に影響がでた商品はいろいろある。ビジネスウェアや靴、バッグなどはわかりやすく売上が減った。もちろん外食産業やレジャー産業には大打撃が発生したし、いわゆるショッピングセンターで衝動買いをするような商品は概ね打撃を被った。

人はオンラインショッピングをする時、衝動買いする事はあまり多くない。むしろ、何を買うのかターゲットがはっきりしているときに、オンラインショッピングサイトを開け、あちこちの商品を比較検討して買うことが多い。時には、ウェブサーフィン中に目に飛び込んできた商品を衝動買いすることもあるかもしれないが、それでもパンデミック前の社会に比べれば、衝動買い行動はグッと減ったのではないかと思われる。

さて、ここに衝動買いが主な市場であった商品というものがある。これらはパンデミックによって相当な打撃を受けた。その商品とは、なんとキャンディやガムやグミなどの小袋や小箱である。

米国のスーパーのレジの前にはほぼ必ず、これらのキャンディやガムやグミの小袋や小箱が並んでいる棚がある。ついでにゴシップ誌なども売っている。この場所はもちろん、会計するために列に並んで待っている人が、「あ、ついでにこれも買おう」と買い物カゴに放り込んでもらうことを目的とした商品群のためにある。キャンディやガムやグミというものは、大抵、スーパーに入る前は買うつもりがなかったが、レジに並んでいる間に買ってしまうものの代表であり、これらの商品の売上の多くはこのような衝動買いの結果生み出されていたのだ。

今や、パンデミックにより、たくさんの人々がオンラインで食料品を買うようになった。家計に余裕がある人は、商品を配達してもらう。また、配達代を払いたくない人は、オンラインで買い物をしてパックしてもらい、店の駐車場までいって受け取るカーブサイドピックアップという買い物方法が生み出された。このどちらも、レジで並ぶ必要はなく、よって衝動買いはほぼ発生しない。

オンラインではなく、実際に商品を目でみて購入したい人たちは、マスクで完全防備をしてスーパーに買い物に行くが、会計時、以前と比べて大きく距離を開けたソーシャルディスタンスの行列を作るため、レジ前のキャンディやガムやグミの商品棚の前でボーッと順番を待つという行動はほぼなくなった。以前よりもずっと手前の位置で順番をまち、順番がきたらこれらの商品棚の前をさっさ素通りして会計をまつ。

そもそも人と顔を合わせる機会がグッと減ったせいで、以前のようにミントキャンディやガムでお口をリフレッシュしておかなくてはいけないことも減った。また、長距離ドライブや通勤渋滞も減ったので、眠気覚ましのキャンディやガムの需要も減った。

実際、これらの商品の売上は2019年と比べ15%ほど下がっていると言われている。米国の有名なキャンディ、ガムメーカーは現在対策に奔走中だ。実はパンデミックが始まる前から、これらのメーカーの間ではオンラインショッピングの台頭やセルフチェックアウトの普及により、レジ前の衝動買いの売上減の可能性は囁かれていた。そこにきてパンデミックが、その心配を分かりやすく顕在化したといったところだ。

パンデミックが終わった後、一度オンラインショッピングの便利さを知ってしまった顧客の一部は、スーパーのレジの列には戻ってこないと言われている。それでは、どうやってオンラインショッピングで同様の衝動買いをしてもらうのか、メーカーは知恵を絞っているらしい。

例えば、あと数ドル買えば配達が無料というような状況で、これらの安価な衝動買いしがちな商品をポップアップ表示し購買意欲を煽るなどがその例だ。米国の有名キャンディーメーカーであるハーシーズは、会計ページにハーシーズボタンなるものを作ってもらえないかどうかオンラインショッピングサイトと一緒に検討中だ。また、先ほど書いた駐車場で受け取るカーブサイドピックアップ方式の買い物の場合、商品受け取り時に素早く気軽にこれらの衝動買い製品を買い足せるようにできないかなども考えているらしい。

ただ、朗報もある。自宅でのコンピュータ作業が増えた今、集中力を持続させるためや眠気防止にキャンディやガムを食べるというのは結構一般的な行動だ。我が家でも、レジの横に並んでいるようなメジャーブランドのキャンディやガムは確かに買わなくなったが、明確な目的を持って買う菓子類はむしろ増えている。ただ、そういう時用の菓子というのは割といろいろ検討して買うので、なんとなくその辺のものを買うという衝動買い心理の上にあぐらをかいた商品ではないだけだ。

今やお菓子のメジャーブランドも過渡期にあるのかもしれない。衝動買いではなく、それを目的で買ってもらえるような新しい商品や広告を考える時なのかもしれない。

それとも、パンデミックから抜け出しつつある米国消費者が、再びスーパーのレジに並んで衝動買いを始めるのを期待とともに待っているのかもしれないけれど。

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