戻り始める日常と戻り難い心情
久しぶりに日本食スーパーに買い出しにいったら、店の前にできていた入店を待機する行列がなくなっていた。ロックダウンになってからというもの、週末の日本食スーパーの入り口に行列がなかったことはない。その光景はすごく不思議だった。
たまたま客が少なかったわけではないと思う。店内はこの一年間のいつよりも人がいたような気がする。人とすれ違うたびに距離をあけようとするので、店内のあちこちで立ち止まって人が通り過ぎるのを待っている機会が多かった。たぶん入店制限がなくなったのか、もしくは一度に入店させることができる定員がぐっと増えたのではないかと思う。
久しぶりに並ばずに入店できたせいで、いつもよりも買い物する時間が短くすんだので、行きたくても行っていなかったダイソーにもよってみた。なんとロックダウン以来初、15ヶ月ぶりぐらいのダイソーだ。もちろん、ロックダウン中もダイソーは開いていたが、店の外に行列があることも多かったし、ない場合でも、ダイソーに入店しなくてはならない不要不急の買い物などなかったので入るの避けていた。15ヶ月ぶりのダイソーは特になにも変わっていなかった。そのため余計、日常が戻ってきたなという感覚が半端なかった。
買い物の最後には朝市に寄った。朝市にはロックダウン中もほぼ毎週新鮮な野菜や果物を仕入れにきていたのだが、アウトドアショッピングということもあり、ロックダウン中も毎週結構な人手だった。マスクをしてすれ違う人々がたくさんいる光景はこの一年間ずっと同じだったが、キャノピーを貼った店の手間に、「一度に7人まで」というような入場制限がついていたのがなくなっている店が多くなっている。また、人々は以前より距離を開けずに歩き回るようになっているようだ。
これらは、たぶん現在のカリフォルニアの低い感染率のおかげもあるだろうが、それよりもなによりも、ワクチンを接種した人々が増えたために、以前よりもリラックして行動しているためではないかなと思う。実際に私がそうだ。接種後は、ワクチン接種前の外出時に常に持っていた緊張感がどんどん薄れて、安心感に変わっていくのがわかる。以前より明らかに気軽に外出するようになってきた。
これほど、目に見えて感染防御がさがったシリコンバレー、そして、カリフォルニアだが、それでも新規感染者数を非常に低く抑え続けている。このため、コミュニティはどんどんと日常に戻り始めた。学校が次々と開きだし、短縮授業ではあるものの、週4日登校する生徒が増えた。オフィスも開き始めたらしく、朝夕のラッシュアワーの渋滞も少しづつ戻ってきた。レジャーに行く人も増えてきて、ハワイや州内の国立公園に出かけた人々が身近に現れ、彼らから聞いた話では、それらの観光地はすでに観光客で混んでいて以前とそれほど変わらないということだった。
しかし、毎日を暮らす人々の心情がロックダウン前に戻ったかというと、実はそれほどでもない。少なくとも私の周辺ではそうでもないし、心理的に元に戻れない人々のことがニュースにもなっている。部分的とはいえロックダウン期間が長かったために、マスクをして外出することにも、家で長く過ごすことにもあまりにも慣れてしまいルーティン化が進んだ。同時にウィルスを恐れる気持ちも日常化しているので、外出が増えたとはいえ、感染するリスクがゼロになったわけではないウィルスへの警戒感が消えることはない。また、インドのニュースを通して知る変異株の恐ろしさも相まって、その心情はやっぱり自粛気分のままだ。
たとえば、ジムも開いたと聞いたが、家の中でエクササイズするのになれきってしまいルーティン化してしまった今、プールで水泳でもしない限り、ジムに出かける必要があるかどうかよくわからなくなった。これらの心情がロックダウン前に戻るのかどうかよくわららないし、戻るとしてもロックダウンが終了してから相当な時間がかかるような気がする。
ちなみにカリフォルニアが正式にロックダウンを終了するのは、現在の予定では6月15日だ。残り一ヶ月半。ああ、たしか去年の今頃も、ロックダウン終了まで後何日なんてのんきに数えていたな。けれど、その後一度も正式には終了することなく今日を迎えている。ワクチンの接種も拡大した今、今度こそ本当に終了するらしい。
となると、この日記も終わりかな、とも思ったのだが、世界の感染状況を見る限り、そんな呑気なことは言っていられない。まだまだ追うべきニュースも、シェアできる情報もたくさんありそうだ。ロックダウン終了後は「ロックダウン後日記」にでもして、折りに触れパンデミックの重要なニュースを追っていこうかなと思う。
そして、今度こそパンデミック以外の米国の興味深く、考えさせられ、ときには笑えるニュースを、別サイトの「シリコンバレーをよむ」でも追っていこうと考えているところだ。
