さらば、ユニクロサンフランシスコ
サンフランシスコのダウンタウンで3階建てのお洒落な店舗を持っていたユニクロが閉まるらしい。ユニクロはマンハッタンの店舗も閉める発表をしたばかりだ。
ユニクロは、スタイル的には在宅ワーカー向きのカジュアルな品揃えが多いので、私の周辺ではむしろ購入者が増えていそうな気がするのだが、それは全てオンラインショッピングの話だ。ユニクロは米国でもオンラインで簡単に購入できるし、ある程度の金額をまとめて買えば送料だって無料になる。
しかし、店舗販売となると苦しい。サンフランシスコのダウンタウンには有名ブランドのフラグシップや大規模店舗が軒を並べていて、地元の人々だけなく国内外の観光客のショッピングサイトとして年間を通して賑わっていた場所だ。そのダウンタウンは現在閑散として空っぽだ。
まず、オフィスワーカーがいなくなった。みんな在宅勤務になった。これにより、ショッピングもさることながら、カフェやレストランやコーヒーショップの需要が激減した。
そして、観光客がいなくなった。観光客はサンフランシスコのショッピングやレストランに大金を落としてくれる上客だったが、現在、パンデミックによる旅行規制が出ているサンフランシスコに観光にくる人がいたら、それはそれで相当なチャレンジャーである。
それに加え、もちろん小売店舗もカフェもレストランも営業規制がかかっている。外食はアウトドアのみ、小売店舗も従来の25%しか入店させることはできない。しかし、今の閑散とした状態なら25%入ることもないのではないかと思われる。
こんな状態なので、有名店舗は次々とその扉を永久に閉め始めている。サンフランシスコで有名なケーブルカーの始発駅の横にあったGAPの大きな店舗はパンデミックのずいぶん初期にクローズが決まった、H&Mも閉店だ。一年前まで人に溢れていたサンフランシスコのショッピング街は今は空き店舗の並ぶゴーストタウン化が始まっている。
そんな状態なので、ユニクロサンフランシスコの店舗販売の売り上げは相当に危機的だったに違いない。この3月の閉店で70人近い従業員が失業するそうだ。
今回のパンデミックで一番影響を受けているのは、レストランおよび小売業界で低い賃金で働く従業員たちだそうだ。その理由は説明するまでもない。
カリフォルニアで去年の2月から12月までの間に、低賃金の職は約100万人分失われた。約10%の減少だそうだ。これに比べて、高い賃金が払われる職は約43万人分失われた。約4%の減少だそうである。この数字だけでも、パンデミックがいかに低賃金労働者に深刻な影響を与えたかがよくわかる。
もちろん、パンデミックが終焉すれば、観光客は帰ってくるだろうし、閉店したたくさんの店やレストランも再びその扉を開けるだろう。しかし、パンデミックの前の状態に戻ることはないのではないかと、一部の専門家の間では囁かれている。
それは、経済が元に戻るのに時間がかかることが理由なのではない。長引くパンデミックは明らかに私たちの生活習慣を変えていっている。オフィスワーカーは、以前のように誰もが週5で出勤するようなことはなくなるだろう。在宅で働き続ける人はたくさんいるはずだ。となると、彼らを顧客にして来た飲食店は以前と同じレベルのビジネスに戻ることはないだろう。
また、オンラインショッピングの便利さに慣れてしまった人々の中には、以前のように、まめに店舗に足を運ぶことはなくなったかもしれない。そもそも、在宅勤務の人々にとっては、以前ほどファッションへの需要がなくなってしまっている可能性もある。今後、家で役立つもの、在宅環境を向上するものが、より売れ筋になる可能性が高く、そういうものがオンラインショッピングで購入され続けるかもしれない。
観光客は帰って来てくれるだろう。それから、コンサートやシアターのようなエンターテイメントも帰ってくるだろう。そうでもしないとダウンタウンはゴーストタウンのままになってしまう。
しかし、以前と同じレベルに人に溢れたダウンタウンはもう帰ってこないかもしれない。そうなると、失われた低賃金の仕事の一部はもう2度と回復されることはない。パンデミックで失われたものの仲間入りだ。
パンデミックは私たちの生活を動的に刻一刻と変えていく。パンデミック後はどのような仕事が増えていくのだろうか、時間のある時にじっくり考えてみたいかもしれない。