シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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パンデミックが世界を変える

米国の感染が去年の3月末並の新規感染者数まで収まっている。カリフォルニアがロックダウンを宣言したのが去年の3月16日だったことを考えれば、去年の3月末はまだパンデミックの初期も初期、ニューヨークのオーバシュートが発生する前の、今考えれば非常に穏やかな時期だった。そのレベルまで収まってきた米国の感染は、この夏にはもう大波が起こることはないだろうと言われている。すでに米国民の60%を超える人が少なくとも1回ワクチンを接種しているし、被接種者の中には感染して免疫を持っている人もいると考えれば、免疫保持者の割合は相当高くなってきているはずだ。

このような状況を反映して、米国の企業は徐々に従業員を在宅勤務からオフィス勤務に戻そうという動きが始まっているのだが、1年以上も続いた在宅勤務を経験した従業員のなかには、オフィスに戻らなくてはならないなら辞職するといういう人が少なからずいる。実際にたくさんのホワイトカラーの従業員が、オフィスに戻るように企業に言われてから、転職活動して在宅勤務を認めてくれる企業へ次々と転職している例がたたない。「オフィスに戻るようにいわれたとたんに、同僚がどんどんやめていく!」というツイッターが話題になる今日このごろだ。

これまでは選択肢がないと思っていたオフィス勤務だが、長い在宅勤務を経て、実はほとんどの作業は自宅でもできることがわかってしまった。自宅での勤務の柔軟な時間の使い方を体験した従業員たちは、二度と再び往復2時間の通勤や、仕事、ミーティング、仕事を次々と繰り返し続ける、柔軟性のない働き方に戻れるとは思えなくなってしまったらしい。これまでならば仕事の後、夜にしなければいけなかった家事や用事も、自宅勤務なら仕事の合間に気分転換で片付けることができる。自分の行きたい時に、散歩や運動にでかけることもできる。

相反して、実は多くの雇用主は従業員にオフィスに戻ってきてもらいたい。雇用主は、オフィスで一緒に働くことは、協力作業がよりスムースだし、企業文化の育成につながると考えている。某アンケートの結果によると、パンデミック前のオフィス勤務の状態に完全にもどしたい(もどせる)と思っている雇用主は全体の5分の1に満たないが、かといって、完全に自宅勤務にしてオフィスをなくしてもいいと思っている雇用主は、たったの13%だったそうだ。アンケートの結果によると、週3日は通勤してほしいと考えている雇用主が一番多いそうで、雇用主の世代が年をとるほど、従業員のオフィス勤務を希望しているのも特徴である。

週5日から週3日の通勤になるのだから、それだけでも十分だと考える従業員がいる一方で、週3日でも通勤にかかる時間を無駄にしたくないと考える従業員も多い。従業員側に対するアンケートでは、もしオフィス勤務に戻れと言われたら会社をやめるかどうかという質問に実に39%が「やめる」と答えたそうだ。特に若い世代になると、50%近くが「やめる」と答えたという。

パンデミック前には、そもそもこのような質問がされたことはなかっただろう。まさか、今のように強制的にオフィス勤務ができなくなるなんてことは、誰も考えていなかった。パンデミックは世界にとてつもなく多様な影響をおよぼし、ものごとの前提条件や常識を作り変えている最中だ。

たとえば、レストラン。ロックダウン中に安全に営業するために、多くのレストランが、地元政府の許可を得て、車道を一本潰して洒落たパテオを仮設しアウトドアダイニングを推奨してきたのだが、感染がおさまり室内で食べられるようになった今でも、多くの顧客はアウトドアパテオを楽しんでいる。レストラン側もせっかく作ったパテオをやめるのは忍びないので、このまま残させてほしいという嘆願があちらこちらで出てきているらしい。カリフォルニアの道端のパテオ文化は、今や誰の目にも慣れ親しみ、むしろあれがあるのが街角のカラーになりつつある。今日、ニューサム州知事はこれらの車道にはみ出ているパテオの営業を今年末まで継続する許可を発表した。経営難のレストラン支援や感染防止の意味もあるが、なによりもパテオで食事をすることが文化として浸透してきていることも1つの要因かもしれない。

また、スポーツジム。スポーツジムも今や室内営業が可能だ。しかし、多くのメンバーはアウトドアに仮設されたジムを使い続けている。青空の下で風に吹かれて運動するのは実際のところ悪くない。日差しはテントが防いでくれるし、気温は少しぐらい寒かったり暑かったりするほうが運動する目的に合致している。アウトドアジムやアウトドアグループエクササイズもしばらくは残るだろうし、もしかしたら、残り続けるかもしれないなと思う。

マスク。パンデミックでマスクの効力を知った人々は、これからもインフルエンザや風邪が流行る季節には。再びマスクをつけようと思うのではないかと思う。ちなみにカリフォルニアでは6月15日にマスクの強制規制が解除される予定だが、その後も、職場に一人でもワクチンを接種していない従業員がいれば、職場は全員マスクをしなくてはいけないというのが新ルールだ。このルールにより、どうやら6月15日以降もほとんどのレストランの従業員はマスクを着用し続けることになるだろうと言われているが、従業員も顧客もマスク姿に慣れきってしまっているので、むしろマスク姿の店員のほうが顧客は安心できるよな気がするし、実際にそういう発言をしている米国人をニュースでみたところだ。

学校。1年以上続いたオンラインスクールを機に、あちらこちらの学区でパンデミックとは関係なく、本格的なオンラインコースを構築する努力が本格化した。秋の新学期には、学校に登校するスタイルの学校と合わせて、オンラインコースも開設され、学生は選択できるようになるらしい。すでに我が家のティーンの学区でもこの試みが始まっていて、オンラインコースの申込みが始まっている。

変わったのはパンデミック中の世界だけではなく、パンデミック後の世界だ。それは、15ヶ月という長期間のパンデミックとの戦いの中で、人々の優秀な適応能力が働き、人々の考え方や思想が変わったことにほかならない。

そうか。パンデミックが世界を変えているんじゃなくて、人間の脳の柔軟さと適応能力の凄さが世界を変えているんだな。

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