シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

J&J ワクチンの持つ意味

米国で3番目に承認される可能性の高いワクチンであるジョンソン&ジョンソンのワクチンのテスト結果が発表になった。このテスト結果は、このワクチンの位置づけをはっきりさせていて興味深い。単刀直入にいうと、このワクチンは非常に優秀だ。

先に承認されたファイザーやモデルナのワクチンがウィルスの発症を抑える効果が95%前後であったことを考えると、ジョンソン&ジョンソンは72%なので、相対的にみれば先のワクチンに比べて効果が劣っているようにみえる。しかしながら、重症化を抑える効果は85%であり、このワクチンを接種した治験者は一人も亡くならなかっただけではなく、入院をする必要もなかったという報告をしている。

従来のインフルエンザの予防注射の効果は50%ぐらいだと言われていることを考えれば、ジョンソン&ジョンソンのワクチンは十分に有効であり、重症化を抑える効果という点から考えれば、パンデミックと戦う優秀な武器になりうるわけだ。

それだけではない。このワクチンの強みは、2回接種する必要がなく、1回だけの接種でこの結果をだしているところだ。その上、先の2つのワクチンのように超低温保存を必要とせず、通常の冷蔵保存で輸送、保管できるというところが実はとても重要なのである。

ものごとを米国内だけで考えれば、ワクチンを2回接種しなくてはいけなくても、超低温輸送、保存が必要でもが、より効果が高いワクチンのほうがよいと考える人は多いだろう。しかし、世界的に考えたときに、国によっては超低温で輸送、保管することそのものが難しいところもあるだろう。また、接種場所まで遠い道のりになる人達もいるだろう。そういう地域の人々に、輸送や保管が難しくなく、一回の接種ですむワクチンの存在は大きな意味を持つ。そのうえ、一回の接種ですむということはそれだけ安価なワクチンでもあるのだ。

つい先日WHOが富裕国にワクチンが独占されていることを非道徳的だと避難していたが、この問題は非常に難しい。ワクチンを開発した各国にとって、ワクチンを世界で共有するという目的に共感し協力すると宣言していたとしても、自国の国民に優先して世界各国に平等にワクチンを配布することは難しい。確かに、貧しい国の最前線でパンデミックと戦う医療従事者にワクチンは必要だ。しかし、自国内の医療従事者に続いて、亡くなるリスクが高い自国民にワクチンを配布することも、各国の政府とって最優先課題なのである。各国政府は、その政府を選んだ国民の命には責任がある。確かにWHOが指摘は正しい。世界は不平等だ。しかし、こればかりはどうしようもない、そんな厳しい立場に、ワクチンを開発した各国政府は立たされている。

このような現状において、承認されるワクチンの種類がどんどん増えてることは重要だ。特に、安価で、輸送も接種方法も難しくない、どんな環境でも問題なく管理できるワクチンは、世界にワクチンを配布するために大きな意味を持つ。管理が容易なのに、死者と重症者を減らす高い効果があるというのだから、これは朗報だ。

つい2日前、シアトルの病院で超低温冷凍庫の故障が夜中に判明し、翌朝の5時の有効期限までに、1300接種を行わなくてはいけないことが判明した。そこで、夜中の12時過ぎにSNSでこの情報が拡散され、深夜1時には病院の前に何百人もが集まり列を作ることにより、ワクチンは無駄になることなく無事に接種されたそうである。同じことが、世界のどこででも可能だろうか。厳しい地域はたくさんある。

この視点からみると、ジョンソン&ジョンソンのワクチンは救世主だ。今後、このような、可動性の高いワクチンが次々と発表されていくだろうし、そのようなワクチンこそが、富裕国だけではなく、世界をパンデミックから救い出す頼みの綱になるだろう。

 にほんブログ村 海外生活ブログ サンフランシスコ・ベイエリア情報へ    

もっと読みたい!SF・ベイエリア人気ブログはこちらから!

もっと読みたい!カリフォルニア州人気ブログはこちらから!

PVアクセスランキング にほんブログ村