シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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もうすぐ転換点がやってくる

米国のワクチン接種の記録的な速さのおかげで、あと数週間すれば過半数の米国の大人はワクチン接種完了済みとなり、70%ぐらいの大人は少なくとも1回目は接種しているという状態になるだろう。つまり、もうすぐワクチン接種は転換点を迎える。というか、一部の地方ではすでに迎えている。

どのような転換点なのかというと、これまではワクチンを接種したい人(需要)が接種できる数(供給)よりも多かったため、接種の予約がとれなかったり、遠くまで接種に出かけたりという、いわゆるワクチンハンティングが必要だったわけだが、ワクチン接種済みの人が増えるにつれて需要が満たされていくので、ワクチンの需要と供給の立場が反転するときがやってくる。それが転換点だ。

全員ワクチンを打ち終えましたという話なら、めでたいのだが、現実はそんなに甘くない。米国にはワクチンを接種しないと宣言している人々が30%ほどいるからだ。つまり、数週間のうちに、米国のワクチンを接種したい人たちは、ワクチンにたどり着くことができるが、残りの人達はワクチンの接種スポットがあまっていても接種にはこないのである。

すでに地方では、ワクチンの接種スポットが余っているという現象が始まっている。大統領をはじめ、CDCや専門家たちが、米国社会に再び活力を取り戻すため、集団免疫を獲得するために、これらの接種を拒んでいる人たちを一生懸命説得しようとしてるが、彼らに直接接している医療関係者たちは、それが難しいことを肌で感じている。

タイミング悪くジョンソン&ジョンソンが現在副反応の再調査のために接種を停止したのは痛かった。なぜなら、これらの接種を拒む人たちの多くは地方で暮らしていている人たちであり、輸送や取り扱いが簡単で一回の接種ですむ、ジョンソン&ジョンソンはまさしく彼らに最適なワクチンだったからである。このような物理的理由だけではない。ファイザーやモデルナのような最新技術を利用した mRNA ワクチンは、地方の敬虔なクリスチャンたちには歓迎されていない。これらのワクチンには「DNAを作り変える」という偽情報が蔓延しており、敬虔なクリスチャンたちにとって、そのような人間を作り変える行為は、神への冒涜に値するからだ。

よって、物理的にも精神的にも、ジョンソン&ジョンソンが頼みの綱であったわけだが、そのワクチンが非常に稀ではあるが深刻な副反応がみられたことを理由に、接種が停止されたとなっては、すでに接種を迷っていた人たちに新たに躊躇する理由を与えてしまったようなものだ。ただでさえ、不信と恐れをいだいていたというのに、更に恐れる理由が追加されてしまった形だ。

このような地方の医療関係者たちは、なんとか人々を説得してワクチンを接種してもらおうと必死だがあまり効果が現れていない。政権やCDCも各国の言葉を使った広告を様々なメディアで発信することにより、一人でも多くの人にワクチンを接種してもらおうと必死だ。

最近、フェイスブックをのぞいていると、日本語のよくできた公共広告でワクチンを勧めるものが一日一回はあがってくる。どの広告も自然な良い仕上がりで、写真もコピーライトも日本らしくできあがっており、英語の広告を無理やり日本語化したものではなく、あきらかに日本人をターゲットにして日本人が作成にかかわっていることがわかる。たぶん、このような広告が、スペイン語で、中国語で、ベトナム語で、様々な言葉と文化を反映しながら発信されているのだろう。

これらの努力が実を結ぶためにも、ジョンソン&ジョンソンの調査結果の報告が待たれる。ちなみにヨーロッパでは一足先に、危険な副反応のリスクよりも接種によってもたらされる利益のほうが遥かに大きいということで、接種が再開されたというニュースがでていた。たぶん、米国でも数日中に何らかの報告とともに接種が再開されるとは思う。が、今回の停止によって、ワクチンを接種したくない人々の心理に与えた傷はそう簡単には覆せないだろう。

いったいどうすれば、いつになったら、私達は集団免疫の段階に到達できるのだろうかと、少し残念な気持ちになった。

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