シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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コンタクトトレースが教えてくれる(規制緩和フェーズ2)

米国の東の端メイン州は人口が少ないこともあって、累計感染者数も死亡者数も多くない。それが幸を奏して、現時点でコンタクトトレースが80%近く可能な状態だと言われている。

メイン州では8月になって、ある結婚式パーティを発端にクラスタが発生したのだが、その広がり方や速さがコンタクトトレースによって非常に明確に判明した。それは、このウィルスがいかに増殖するチャンスを逃さずに効率よく広がるのかが再確認させられる結果だった。

結婚式のパーティが行われたのは8月7日だった。出席者は65名、これは50人を超える室内イベントは禁止している州の規制に違反したものだったことが現在わかっている。

この結婚式の出席者のうち、22人が感染した。第一次感染者だ。そして、このパーティに参加していないが、第一次感染者と接触があった14人が感染した。これが第二次感染者だ。そして、この第二次感染者と接触のあった24人が現在感染している。現時点で合計60人のクラスタを構成しているわけだが、この発表は8月21日だったので、60人のクラスタを構成するのにかかった期間はたったの2週間だった。

このクラスタは、高齢者ケア施設と刑務所にも広がった。高齢者ケア施設の6人の感染者はこの60人に入っているそうだが、刑務所の感染者はまだ調査中だ。刑務所では現時点で18人の感染者がわかっている。この18人は今のところ、クラスタに入れられていないので、近々このクラスタの人数は60人にとどまらず増え続ける可能性が高い。

その広がる速さもさることながら、広がる距離もすごい。結婚式会場から高齢者ケア施設までの距離は150キロメートル以上離れいる。東京から静岡の清水ぐらいまで行ける距離だ。その高齢者ケア施設のブレイクはスタッフの一人から始まったのだが、このスタッフは訪問した親から感染していた。そして、その親は訪問したほか子供から感染していた。その子供が結婚式の参加者であったのだ。この150キロも離れた高齢者ケア施設では、結婚式とはまったく関係ない、結婚式の存在すらしらない人たちが、規制違反の無責任なパーティが原因で感染したということだ。

刑務所にいたっては、300キロ以上離れていた。これは刑務所のスタッフが結婚式の参加者であった。現在刑務所全体での感染確認を行っている最中である。

このクラスタでは、現時点で感染者の8割に症状があり、残念なことに1人亡くなっている。亡くなった女性は、結婚式に参加していなかった感染者であり、参加した人と接触があったために命を落とすことになった。

こうやって、淡々とコンタクトトレースを追っていくことで、このウィルスの怖さを改めて理解することになる。第二次感染者、第三次感染者のほとんどは、この結婚式とは無関係だったし、結婚した人たちの名前すら知らないだろう。にもかかわらず、この結婚式が引き金を引いたクラスタに、知らぬ間に無抵抗のまま引きずり込まれ、1人が亡くなった。

だから、大きなイベントは開いてはいけないし、そのようはイベントに参加した人は、たとえ親兄弟であってもソーシャルディスタンスを保たなくてはならないのだ。

結婚式をあげたカップルは今、この事態をどう受け止めているのだろう。人生の記念となるイベントが原因で死者が出てしまった。後悔しているだろうか。こんなことなら、パンデミックの最中に無理をして結婚式をあげなければよかったと感じているだろうか。

そして、参加した人たちはどう感じているだろうか。彼らも、感染リスクを考えて参加を断ることだってできたはずだ。運良く感染しなかった人は自分の幸運に胸をなでおろし、感染した人は、自分からさらに感染した第二次感染者に対して罪の意識をかかえていることだろう。そして、ケア施設のブレイクのきっかけとなったスタッフは、自分自身には責任のない不意打ちのような過失で職場に感染を広めてしまったことに、やりきれない思いをしているに違いない。

コンタクトトレースは、このウィルスがいかに素早く狡猾に拡散していくのかを、明確に描いてくれる。このような事例を学ぶことによって、未だにパーティやっている人たちがバカ騒ぎをやめるか、やめないならば、参加者以外の人には近寄らないぐらいの覚悟でやってほしい。

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