シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

さらなる降格が決定しました(パープルティア)

先週の金曜日にシリコンバレーの規制が一段回厳しくなるという報告をした(「降格が決定しました」)のだが、その後も感染者数の急上昇はとまらないために、本日、州政府からさらなる降格が決定し、一挙に二段階、規制段階を降格することが発表された。オレンジティアから、レッドティアをすっとばして、一番厳しいパープルティアへの降格だ(カリフォルニアの規制緩和ティアシステムの詳細については「再挑戦」を参照)。

ちなみに、サンタクララ郡だけではなくまわりのほとんどの郡も仲良く一緒にパープルティアへ降格してしまった。現在のカリフォルニアの現状は以下の図をみるとわかりやすい。左が今日の状況、右が約1ヶ月前にサンタクララがオレンジティアに昇格したときの状況である。感染者が減るにつれてしだいに色が明るくなってきていたカリフォルニア(右図)が、今日あっという間に暗い色に染められた(左図)。カリフォルニアのほぼすべての地域で感染者が増えたために州政府が一気に規制を強化したためだ。

f:id:sarukunSV:20201117142951p:plain
f:id:sarukunSV:20201014160306p:plain
左が今日降格が決まった後のティア状況、右が10月13日サンタクララ郡がオレンジティアに昇進したときのティア状況

オレンジティアの規制緩和にたどり着くまでには何ヶ月もかかったというのに、振り出しまでの降格はあっと言う間だった。登る時は時間がかかるけど、落ちる時は速いというのは、なんにでも当てはまるもんだなと、妙に冷静に納得したりする。
さて、実際カリフォルニアの状況はどれくらいまずいのかというと、今日の新規感染者の数は約9千人である。それってすごくまずいんじゃないのと思うかもしれないが、今日の米国の新規感染者の数が16万人ぐらいになりそうなので、カリフォルニアには米国の全人口の10分の1以上の人が住んでいることを考えれば、実際はほかの州にくらべればマシな状況だということがわかる。

しかし、こういう数字は比較するものではない。人口に対する割合はマシでも、患者数が減るわけではない。それでは、なにでまずいかまずくないかを測るのが妥当なのかと考えれば、やはり用意されている医療体制に対して、どれくらいの感染者が発生しているかだろう。これは、今後の医療崩壊の行く末を予測するうえで大切だ。医療崩壊が起これば、死ななくてよい患者までもが助からなくなる可能性があるからだ。

下記のサイトの予測によれば、カリフォルニア州では病院のベッドは十分に足りそうだが、ICUベッドの数は足りなくなる可能性があることがわかる。そのうえ、この予測が12日のものであることを考えれば、この数日急激に感染者数が伸びていることを考慮すると、実際の予測はもっと厳しくなるだろう。

 ちなみに、このサイトの情報によれば、米国のいくつかの州は、すでにICUベッド数が足りていない。また、州全体ではベッド数が足りている場合でも、地方の都市では患者を別の都市に移送するのが困難な場合、病院のベッド数が足りずにプレハブやテントの臨時病棟が使われ始めている。

それにしても、カリフォルニアも含めて全米およびヨーロッパの多くの国で猛威を奮っているこのウィルス、10月の後半から急激に感染者が増えたわけだが、いったいその原因は何なんだろう。寒くなって室内でアクティビティを行うことが多くなったためだろうという予測はたっているものの、実は、現在の米国やヨーロッパの感染者で感染経路がわかっている感染者は20%に満たないと言われている。残りの80%はどこでどのように感染したかわからないというのだ。

この感染経路情報の欠落が、米国とヨーロッパの規制方法とその効果を厳しい状況においやっている。どこでどのように感染が広まっているとか、クラスタが発生していることがもう少しデータとして判明していれば、都市封鎖のような全体的なロックダウンをしなくても、もっとスポット的な規制強化が可能になる。クラスタが発生している場所や状況を突き止めて、その場所やアクティビティを完全に締めるという対応も可能だ。

実際のところ、日本も含めてアジアの多くの国はこの方法で感染経路や場所を見つけて、感染拡大を収めているといわれている。これらの国ではパンデミックの初期はロックダウンした都市もあったが、それ以後は米国に比べて遥かに経済活動への規制が緩和されていて、今はほとんどのビジネスが遊園地、映画館、スポーツ感染、劇場なども含めて営業可能になっている。

いったい何が違うんだろう。なぜ、米国やヨーロッパは、アジア諸国に比べて感染経路が不明のまま、不特定多数のロックダウンを繰り返さなくてはならないのだろうか。

あちらこちらの研究者やマスコミの間で、明確な違いとしてあげられているのは、やはりコンタクトトレースが機能しているかどうかである。ヨーロッパはよく知らないのだが、米国におけるコンタクトトレースの最大の問題は、コンタクトトレースに協力する人が少ないことだ。

米国で行われた某アンケート結果によれば、コンタクトトレースに協力する気があるとこたえた人は、なんと回答者のたった49%だったそうだ。その1つの原因は米国人はアジアの諸国の国民に比べて、政府機関に個人情報を与えるの警戒する傾向があること。また、電話やテキストでコンタクトトレースを名乗る連絡が入ったとしても信用しない人が多いことだ。それどころか、知らない番号からかかってきた電話には基本的に出ない人が多いので、コンタクト先に電話がかかることすらないことが多い。

また、コンタクトトレーサの数も足りていないので、トレース状況もペラペラだ。アジア諸国では1人感染者に対して7、8人のコンタクトトレースをとるのが通常だが、米国では2、3人と言われている。同時に、米国ではバックワードトレースもあまり行われていない。バックワードトレースとは、感染者を源にして感染された先をトレースするだけではなくて、感染者が感染した源をトレースすることにより、クラスタの可能性のある場所やイベントを見つけるためのトレースである。これには、感染が判明した人の二週間以上前からの行動を把握する必要があるわけだが、米国ではそのような情報を他人に渡すことも拒否する人もいれば、そもそも覚えていない人も多い。確かに過去二週間の行動を全て思い出すのは難しい。ちなみに、ドイツでは、バックワードトレースのための日記をつけるように推奨されたという。

アジア各国の人のほうが、より記憶力がいいということはないと思うのだが、少なくとも政府関係者に情報を問われれば、答えるのを拒否する人は少ないだろうし、できる限り思い出す努力をするだろう。これがより正確なコンタクトトレースに繋がり、過去にさかのぼったクラスタの発見や、クラスタ発生源の制御、クラスタを追跡することによる隠れ感染者の発見などに繋がり、全体的に欧米諸国よりも制御できる結果に至っていると考えられている。

では、いきなり電話をかけてくるコンタクトトレーサーが信じられない米国人はいったいどうすればいいのか。ここで、コンタクトトレースアプリが登場しなくてはならないのだが、こちらも前途多難らしい。長くなったので、その話はまた次回に。

    にほんブログ村 海外生活ブログ サンフランシスコ・ベイエリア情報へ    

もっと読みたい!SF・ベイエリア人気ブログはこちらから!

もっと読みたい!カリフォルニア州人気ブログはこちらから! 

PVアクセスランキング にほんブログ村