シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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オンラインスクールのジレンマ(規制緩和フェーズ2)

今週または来週からカリフォルニアのほとんどの公立学校の新学期が始まる。州政府の監視リストにのっている郡では学校はオンラインと規制されているため、シリコンバレーを始め、カリフォルニア州の人口70%が居住している郡はすべてオンラインスクールで新学期を迎える。

春のロックダウンのときと違い、米国の長い夏休みの間に十分に準備する時間があった秋のオンラインスクールの新学期は、しっかりとした学校の様相をしており、授業は普通に9時から3時までスケジュールが組まれているし、Zoomを使ったネット越しのライブ授業中心、宿題もテストもあって、成績も通常通り評価される、本格的なオンラインスクールとなった。

今の感染拡大状態ではオンラインスクールはやむを得ないと多くの人が考える一方で、一部の親の間では州政府を提訴する動きがあるという。また、パンデミックを信じない人たちの暴走かと思ったら違った。彼らは切実に困っているのである。

例えば、特別支援が必要な子どもを持つ家庭がある。彼らにとって、家に閉じこもって子供にオンラインスクールを受けさせることは想像を絶する困難があるらしい。彼らは感染予防の対策をきちんととっている小規模な学校であれば、開校することができるかもしれないのに、州規制はその可能性を奪っている論じている。

また、幼い子供を2人持つ親がインタビューに答えていたのだが、どちらの子供も友達に合うことのできない環境が長く続きメンタル的に不安定になっていると訴えていた。ぜひ小規模の学校の再開の道を残してほしいと考えている。

在宅ワークができない親にとっても非常に厳しい状態で、小学生低学年を持つシングルペアレントであれば、仕事をやめるしか選択肢がない。仕事ができないから家賃が払えないという理由で、シェルターに住んでオンラインスクールを受講している親子もいる。

学校が始まってくれないと生活がなりたたないという状況で、州を提訴する親のグループを自分勝手だと責めることはできない。そこには、どうしようもないほど厳しい生活があるのだろう。しかし、実際に学校が始まったらどうなるのかは、現時点でエピデミックの真っ只中にいるジョージア州が教えてくれている。

ジョージア州は、州知事がロックダウンに消極的、緩和に積極的で、学校再開ももオンラインではなく通常開校を推奨していた。そして、8月3日に通常開校を敢行以来、たったの1週間で学校関係のウィルス陽性者が59人報告され、現在、1100人の生徒や教師やスタッフが隔離状態に置かれている。すでに一部の学校では通常開校を諦め、一日置きに代わる代わる生徒を登校させ、残りはオンラインスクールにするハイブリッド方式に切り替えた学校もある。この例が示すように、学校の通常開校はよほど感染が収まっている場所でない限り難しいのが現状なのだ。

「子供はウィルスに感染しない」とサラリと言っている人もいるらしいが、実際のところは、過去4週間の間に子供の間の感染はなんと90%増加しているという報告が出ている。また、パンデミックが米国で猛威をふるい始めて以来、4ヶ月で90人の米国人の子供がウィルスによって亡くなった。16万人を超えている累計死者数とくらべれば、確かにほんの少しだ。しかし、毎年、米国でインフルエンザで亡くなる子供の数は一年で100人程度である。そのレベルにたった4ヶ月で追いついてしまった今回のウィルスは、通常のインフルエンザよりも遥かに子どもたちにとってもリスクが高いことがわかる。

そのような状況において、学校を再開させて子どもたちに登校させるのは、親にも子供にも酷だ。学校が再開しなければ生活が立ち行かない人々の苦しみ、学校を再開させれば確実に子どもたちにリスクを与えることがわかっている状況、このジレンマに州政府も人々も苦しんでいる。

うちはオンラインスクールの開校で安全でよかったと胸をなでおろすことができる立場の人達は、実はそうとう幸運な人たちなのだ。

よいニュースもある。このカリフォルニア州の強制オンラインスクール開校は、一部の貧しい地域の人々に無料のデジタル環境を配布するという結果を生み出した。これまでWifiにお金を払えなかった人たちに、無料のホットスポットへのアクセスが保証され、Chromebookは生徒に無料貸与されている。パンデミックによって、富裕層と貧困層の間にあったデジタル環境の深い溝が、少し埋められることになったのである。生徒たちの家族が、おかげで家でいろいろなことができるようになったと嬉しそうに語っている姿が印象的だった。

さて、カリフォルニアのオンラインスクール、今後どのような経緯をたどっていくのか、生徒たちはいつ教室に戻れるのか、まだまだ不透明な先行きではある。しかし、Zoomクラス用のオリジナル背景を作って楽しんでいる我が家のティーンをみていると、子供の環境に対する柔軟性の高さを垣間見るようで、まあ、なんとかなるかもしれないなと、少しだけ心が軽くなった。

 

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