シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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特別予算を人参にして学校再開を進めるらしい

とにかく学校を開けなければいけないらしい。

去年の3月からカリフォルニアの6百万人を超える生徒たちは自宅でのオンライン授業を受けているのだが、今年の2月に入ったあたりから、多くの生徒が辛抱の限界に達し始めたらしい。多くの子供たちの間でやる気が減退し始め、授業に出てこなくなったり、課題を提出しなくなったり、授業に出ているもののカメラをオフにしているため授業を聞いてるかどうかもよくわからない生徒が増え始めたという話だ。

実際に、我が家のティーンエイジャーのオンライン授業の画面を覗いてみると30人近い生徒が参加しているはずなのに、カメラをオンにしている生徒は10人以下いうことも少なくない。カメラがオフだからといって必ずしも授業をサボっているわけではなく、インターネット環境が悪くてやむを得ない生徒もいることはわかっているが、学年の初めである9月ごろよりもカメラをオフにしている生徒が増えている。カメラがオフになっていると教師は生徒の様子がわからないため、必然的に質問やグループワークのリードをカメラがオンになっている生徒に回すことになる。これにより、さらに学力の差が開くという結果が導き出されていく。

もともとオンライン授業としてデザインされていない授業運営と望んでオンライン授業を受けているわけではない生徒の組み合わせでオンライン授業を続けるには、そろそろ限界が近づいてきた感がある。このままだと多くの生徒が、複数のクラスをパスできずに落第の危険性が高まってきているのかもしれない。

そんな状態なので、親も行政も学校の再開に向けて学区に相当のプレッシャーをかけているが、学区と教師の組合の話し合いがまとまらない。そりゃそうである。実際に学校に登校して教壇たつ教師は命がかかっているのだから、そう簡単には首を縦にふることはできない。

そんななか、州政府はワクチンの10%を教育関係者に分配することを決めた。すでに教育関係者への接種は始まっていて、うまくいけば4月上旬ぐらいには、ワクチンの接種を望むすべての教師に接種が完了するのではないかといわれている。それを見越して、様々な学区で学校の再開の日程が立ち始めている。我が家のティーンエイジャーの高校では、4月12日が現在の再開予定日だが、この段階で登校できるのはほんの一部、落第寸前で苦しんでいる生徒たちが中心だ。

そんなこんなで、実に厳しい状況の学校再開だが、どうしても学校を再開してもらいた州政府は、今週になって特別予算とその受取条件を発表した。

その条件というのが、興味深い。予算のうち20億ドルを学校再開の資金として、保護器具や換気システムや感染テストなどにあてるために学区に分配するのだが、この予算分配を受け取る条件として、学区は3月の末までに学校を一部再開しなくてはならない。学校の属する郡の感染状況が一番悪いパープルティアの場合は、小学校2年生以下の生徒が対象であり、1ステップ状況が良いレッドティアの場合は、小学校全学年と中高のいずれか一学年の生徒を対象に学校を再開することにより、この特別予算の分配にありつくことができるという仕組みだ。ちなみに、3月末までに再開できない場合は、その学区は1日に付き1%づつ分配のシェアを失うという仕組みになっていて、5月15日までに再開できなければシェアはゼロ、つまり1ドルも受け取ることはできない。

予算を餌に釣るのか!と感じるかもしれないが、実はこの条件、「再開」の定義をしていない。つまり生徒が一週間に一日登校しただけで、残りはオンライン授業だったとしても「再開」とみなされ、予算をもらうことができる。ということで、この厳しそうで実は甘い条件に、多くの親や州政府に反対派の議員たちから大きな批判が出ているのは否めない。

しかし、そんなことは州政府もわかっているのだ。ただ、少なくとも教師がワクチンを接種するまでは、強制的に教壇に立たせることはできないという判断もあるのだろう。また、一部だけでもなるべく早く再開し、教師と一部の生徒が学校に登校し始めることによってよって、教師の心配を解消し、安全性に対する自信をもってもらうことにより、より広範囲な学校再開に向けての布石を打つという作戦なのではないかと思う。

そんなこんなで、たぶん、3月中にカリフォルニアの学校は、この条件を満たす形で再開するだろう。登校する生徒は一部かつ短時間かもしれないが、なにしろ1年間登校していなった生徒たちが学校に戻るというのは大きな変化となる。

気をつけなくてはいけないのは、たとえ教師がワクチンを接種していたとしても、生徒は接種していない。学校がしっかり生徒同士の感染防止対策をとらなければ、学校からのコミュニティ感染のリスクは残っている。そう考えると、子供を登校させるかさせないかは、親にとって大変難しい選択となるが、選択できる立場にいるのは幸運だと思ったほうがいい。ロックダウン以降、自宅学習になった子供をサポートしなくてはならず、多くの労働者、特に女性労働者が離職した。彼らは収入が減り生活が困窮している。これらの家庭にとっては学校の再開は、子どもたちの教育だけではなくライフラインの確保にもつながるのだ。

学校は再開されなくてはならない。しかし、生徒は学校に必ずしも行かなくてはならないわけではない。最近、学校から毎月のようにアンケートが送られくる。基本的に全カリフォルニア民にワクチンの接種が行き渡るまでは、生徒の登校は希望性になる可能性が高そうだ。

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