過去２週間の感染者数は正しくないらしい（規制緩和フェーズ2）

数日前、カリフォルニアの感染者数が7月25日前後をピークに下がっているデータを基に、７月半ばの規制の強化の効果が科学的に現れていると書いた。同時に、このまま順調に減少傾向が続けば9月ぐらには、ロックダウン規制時の5月半ばぐらいの状態まで戻すことができ、そこから今度こそより慎重に規制を緩和することが期待されるとも書いた。

しかし、昨日から今日にかけてとんでもないことが判明した。どうやらカリフォルニアの過去２週間の感染者数のデータは正しくないらしいのだ。

原因は感染者数のレポートに使われているCalifornia Reportable Disease Information Exchange (CalREDIE)のシステム障害らしい。未だにどこに障害がありどのように修正できるのかが判明していない状態なのだが、障害が発生しているのはまちがいなくて、実際の感染者の数よりも少なく報告されているのではないかと考えられている。

サンタクララカウンティのサラ・コーディ博士曰く、「今は目隠しをされたような感じです。私達には現在、エピデミックがどのような傾向をたどっているのかがまったくわかりません。これは単純に不便だとか、そういう問題ではなく、エピデミックが拡大傾向にあるのか、縮小傾向にあるのかを判断することがまったくできないの状態なのです。」と眉間にシワを寄せていた。

もし拡大傾向にあれば、緊急に規制のさらなる強化が必要になるし、縮小傾向であれば様子をみながら新しい緩和プランを練らなければならない。すでに十分厳しい規制なので、これ以上厳しくなることはないと思っている人もいるかもしれないが、これまでのサラ・コーディ博士の科学的根拠をもとにした迷いのないリーダシップを思い出せば、その考えはあまい。もしデータに急速な拡大傾向が見つかれば、彼女は即座に規制強化に舵取りするだろう。そのような彼女とそのスタッフの英断が、シリコンバレーを急激な感染拡大から救ってきていることを忘れては行けない。しかし今、コンピュータ障害という、昔から起きてはならないタイミングでなぜか起きてしまうトラブルのために、彼女にはどちらの判断もできない。

数十年前にシステム障害に対応するエンジニアだった自分の経験から勝手に想像しているだけなのだが、このような障害が発生すると担当のエンジニアたちはそれこそ徹夜で原因追求と復旧を試みる。まずは障害の原因をみつけなくてはならない。このシステムは当然米国がパンデミックの波にのまれた後に急遽開発されたものだと考えられるので、十分なデバッグが足りなかったのかもしれない。どちらにせよ簡単な障害であればすぐに見つかって修正されているはずなので、複雑な要因やタイミングが絡み合って発生した障害なのだろう。データベース障害だという噂もある。

仮に障害の原因がわかり、すぐに修正ができたとしても、データの復旧に時間がかかる可能性もある。特にこのような、たくさんのデータがたくさんの入力場所から入力されるシステムの場合、どこまでのデータは正しく反映されていて、どこからのデータは正しく反映されていないのか、また、どのデータが完了されていて、どのデータが未完了なのかを確認してデータを復旧するのは結構たいへんだ。一日8000件近いデータの２週間分を復旧するのはそんなに簡単な作業ではない。データ入力時のログが正しく保存されているのを願うばかりだ。データの重要性を考えれば、私がこのシステムの開発者だったら、きっと復旧できるまで胃が痛くて眠れない。

データが落ちているいうのは大変なミスだし、コーディ博士の言うように不安な状態なわけだが、実はそれほど悲観的にならなくてもよいかもしれない側面もある。というのも、どうやら障害が起こっているのは感染者数のデータだけらしいのだ。入院者数のデータや死者数のデータは正しいと考えられている。そしてこの２週間の間、入院者数は徐々に減っており、死者数も少ない水準に留まっている。ということは、論理的には感染者数も減少傾向ではないかと実は予測できるのだ。発表されている数よりは多いかもしれないが、減少傾向の可能性はある程度高いといえるのである。そのことに、ほっと胸をなでおろす。

それでも予測は予測でしかなく、私達には本物のデータが必要だ。正しいデータがあって初めて、科学的根拠を基に今後の規制を計画することができる。一日も早いシステムの修正と復旧が期待されている。

システムの復旧がんばってください。