シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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感染者数レポートシステムの復旧(規制緩和フェーズ2)

カリフォルニアの感染者数レポートがシステムがバグって最新データが反映されていなかったという記事の続報が入った。

続報の記事は相当詳しく解説されていて、エンジニア系を経験したことがある人ならそうとう面白いと思う。してない人でも単純に興味深いかもしれない。

まずは、一番大切な情報。California Reportable Disease Information Exchange (CalREDIE)のシステム障害は修正されました!

しかし、障害中に落ちてしまったデータの復旧はまだ終わっていない。なにしろ約30万件のデータが落ちていたそうで、復旧にはさらに48時間かかると発表された。今、ぎょっとした人、そんなに心配しなくてもいい。この30万件のすべてがCOVID関連のデータというわけではない。

昨日、問題のシステムはロックダウンが始まってから急遽構築されたのではないかと書いたけれども、今日の記事を読んで、私のその認識は間違いだったことがわかった。このシステムは、パンデミック以前から使い続けているもので、州内の各地で診断された様々な病気を、カリフォルニア州に報告するシステムだった。その従来から使われているシステムを今回のパンデミックの感染者数のレポートに使っていたのである。

ところが、このシステムは、パンデミックで急増したデータ量を処理できるように設計されてはいなかった。そのため、現在、サーバ容量を増やすと同時に、新しいレポートシステムの開発を急ピッチで進めているそうである。

今回の障害の概要は以下のようなことだった。7月25日にサーバがダウンする障害が発生したのだが、ちょうどその前後に2年毎に更新しなければいけないセキュリティ認証の更新が失敗した。この2つの障害が重なり複雑化したらしい。この障害のためにカリフォルニア州は7月25日から5日間のデータを受け取れていなかったそうだ。

さて、この障害が公に報告された背景が興味深い

カリフォルニア州のマリーン郡に住む一般人が、マリーン郡で報告されている過去14日間の感染者の数と、カリフォルニア州で報告されてている同様のデータに約30人の誤差があることに気づいた。

今、カリフォルニアは来週から始まる新学期を、オンラインで始めるのか、学校に登校して始めるのか、決定の瀬戸際だ。ニューサム知事が発表した厳しい条件をクリアすることができた郡だけが、物理的な学校を開校することが可能になる。そこで、感染状況のデータは非常に注目されており、衛生局員にとどまらず、沢山の住民が逐一追っている状態だ。

さて、この誤差を見つけた一般人は、カリフォルニア州が報告している数ならば、学校を開ける可能性があるが、マリーン郡で報告されている数だとその可能性はなくなるため、見逃せない誤差であると判断し、マリーン郡に報告した。調べてみると、マリーン郡は州のデータには頼らず、テストラボから直接データを貰って郡のデータを更新していたことがわかり、どうやら州のデータのほうに誤りがあるらしいと判明、そこから芋づる式に州のシステムの障害が公になることになった。

カリフォルニア州の感染者の累計数は現在全米で最も多く、死者数も今日1万人を超えた。そのようなクリティカルなフェーズのクリティカルな時期に、規制の緩和か強化かの舵取りの判断を握るデータが正しくなかったのは大きな問題であり、とうてい受け入れられないと抗議している人達もいる。

その上、この障害が報告されたのは、ニューサム知事がカリフォルニアの感染者数が一週間続けて下降傾向を示しているのは勇気づけられる動向であるとの会見を開いた翌日だった。つまり、ニューサム知事が評価したその一週間は、ちょうどデータが落ちてしまった影響がでていたはずの週なのである。このタイミングの悪さは、カリフォルニア州政府にとって二重の打撃だった。

しかし、実はそれほど深刻な打撃ではなさそうなのだ。

その理由は、昨日の日記にも書いているように、入院者数と死者数の報告はこの障害の影響をうけていないからだ。感染者数とタイムラグがある死者数はともかく、入院者数が下方傾向であったということは、そうとう高い確率で感染者数も下方傾向であると思われるのである。落ちてしまったデータを復旧した後でも、下降する角度は緩やかになるだろうが、下降傾向は変わらないだろうと多くの人が考えている。これは、ほっと安心させられる報告だ。また、学校やビジネスの再開に大きく影響を与えるデータであり、時期的にもタイミングが悪かったのは間違いないが、6月にウィルスを上手く抑えた経済再開ができなかったカリフォルニアは、今後の再開にはさらに慎重に慎重を重ねることが予想されており、一週間のデータ障害が今後の動向に決定的な影響を及ぼすようなことはなさそうだ。今後のシステム障害の検知には、多いに改善が必要とされているのは間違いないけれど。

さて、そのシステムに関わっているエンジニアたちだが、48時間寝ずのデータ普及をするのか、しっかり寝ながら実作業24時間ぐらいでデータを復旧するのかは書かれていなかった。日本だったら間違いなく寝ずの復旧だよな、と思いながら、「がんばれよ」と心のなかでつぶやいた。

早いデータの復旧が望まれる金曜の夜だ。

 

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