シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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規制強化とタイムラグ(規制緩和フェーズ2)

日記を数週間戻ってみると、カリフォルニア州が改めて規制強化された日付がわかる。7月14日だ。7月14日にカリフォルニアは増え続ける感染者数に対応する形で全州にわたり、規制を再強化し、同時に、監視リストにのっている郡にはさらに厳しい規制を課した。再ロックダウンまではいかないものの、当日の新聞にドラマティックな規制緩和の後退であると報じられていた。

そして2週間たった今日、その効果は明確に出ている。

感染率が0.99%、感染率とは1人の感染者が平均して何人の感染者に感染させているか計算したもので、1%を切ったのはロックダウンが始まってから初めてだと思う。

陽性率は6.5%、陽性率とはすべての検査中陽性と診断された比率だが、まだちょっと高いけれど順調に下り続けている。ちなみに、シリコンバレーのあるサンタクララ郡は陽性率3.5%を切っていて、これは相当低く安心感がある。

毎日の感染者の増加数が10万人につき21.4人、これはまだ高い。高いが、7月25日にこれまでの最多である25.4人をピークとして順調に下り始めている。ちなみに、感染率も陽性率もピークは7月25日前後で、その後順調に下り続けている。

よく知られているように、ウィルスの潜伏期間は数日から2週間と言われている。7月14日に規制が強化され、その後10日間の天井知らずの勢いで広がり続けていた感染が、ようやくその規制の効果を出し始めるたのがほぼ2週間後の今だ。非常に理にかなった科学的なデータの動きで、当たり前なのだけれど感心してしまう。また同時に、規制の強化が感染の拡大を抑制するのに効果があることを明確に示しているデータでもある。

効果が出てよかった。よかったが、このタイムラグ、これが今回のウィルスとの戦いでもどかしいものの一つだ。

たとえば、規制を緩和した場合、感染者がすぐに増え始めるわけではない。最初は恐る恐る行動していた人たちが緩和後一週間ほどたっても感染者が減っているデータをみて、なんだやっぱり平気なんだなと必要以上に行動をし始めると、その10日から2週間後に感染者が劇的に増え始めたりする。それが明確になるまでの2週間の間、気づかないところでウィルスがものすごい勢いで拡散されてしまう。

逆に、規制が強化された場合、その後10日ぐらいは感染者の数は増え続ける。こんなに厳しい規制をしいているのに効果がないじゃないかと、忍耐のない人々が不平不満をいい、抗議して、規制を守らない人がでてくるころ、やっと感染者の数が減りだしたりするのだ。

このタイムラグが、なかなか世間に受け入れられることができない。専門家が、ほんの少し上向きかけた感染者数の拡大に非常に高い注意を払うのは、その2週間後を予測しているからだが、このタイムラグを理解しているようで理解していない一般の人々は、自分の街の感染者はそれほど増えていないから、規制を強化する必要はないと判断してしまう。

7月のカリフォルニアの感染率と陽性率の動きも、減少に傾くまでが非常に長く感じられた。規制が強化されたはずなのに、感染者の数も死者の数もものすごい勢いで増えていったこの10日間は誰もが不安だった。テストサイトには長蛇の列ができて、テスト結果がでるまでの時間も長くなり始めていた。なんで減らないんだろう。もしかして規制を守らない人が多すぎるんじゃないか、このままずっと増え続けるんじゃないかと不安になった。今、減少傾向に転じてやっと、ああ、規制はちゃんと守られているんだな、効果があったんだなとほっとしている。こういう生活がこれからも半年以上続いていくだろうから、私達はそろそろこのライムラグに慣れたほうがいい。

実はもう一つ覚えるべき重要なタイムラグがある。死者のタイムラグである。死者数のピークは、必ず感染者のピークよりも遅れてやってくる。感染者が増えているのに死者が増えていないデータを見て、死亡率が低くなったと喜ぶ人がいるが、これもタイムラグを理解していない人の発想だ。感染者が増えていれば、必ず死者も遅れて増えていく。その上、感染者が減ってきてくれても、死者はすぐには減ってくれないのである。

でも、良いニュースだってあるのだ。最前線で戦う医療関係者たちは、その戦いの中で可能な限りの命を助ける方法を実践しながら学んでいる。少しづつわかったことあって、患者を仰向けに寝かせるよりもうつ伏せに寝かせていたほうが良いとか、いくつかの効果のある薬が出てきているとか、様々な対処方法により、最初の頃よりも救える命が増えてきているのだ。だから、死亡率は実際のところほんの少しづつは下がっていると思う。残念がら感染しても大丈夫だと考えるほどは下がってはいないけれども。

感染のタイムラグを頭にいれ、毎日のデータを読むとだんだん先が読めるようになっていく。今、カリフォルニアの感染は減少傾向だ。このまま規制を緩和しなければ、8月末や9月には5月下旬ぐらいの状態までもどすことができるだろう。

その後、今度はどんなふうに緩和していくのかが勝負となる。6月にうまく緩和することができなかったカリフォルニアは今度はどうやって緩和していくのかを、きっと州政府や保健局が頭を捻っているところだと思う。幸いカリフォルニアは気候に恵まれていて、11月ぐらいまではなんでもアウトドアでできる。この気候をいかして、今度こそ感染の拡大を抑えながらの慎重な緩和が求められている。

 

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