シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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さあ、もう一度やり直そうか!(規制緩和フェーズ2)

昨日カリフォルニアは、感染拡大により規制を再強化し始めた南部の州に合流して規制の再強化を発表した。

カリフォルニアは米国で最初に州全体のロックダウンを発令し、全米で人口が最も多い州であるにもかかわらず、ニューヨークを中心に東部で感染爆発が起こっている間も、感染率を低い値に抑えてウィルスをうまくコントロールしてきた。東部の感染が収まり始めた頃に、一気に規制を取っ払ってしまった南部の州とも違い、段階を踏んで規制を慎重に緩和してきたはずだった。

しかし、ロックダウンによって経済が凍りついてしまったカリフォルニア州は、失業者が急増し、医療機関のサポート、失業保険やスモールビジネスへのサポートなどで財政がひっ迫した。広大な土地をもつ州であるため、州内にたくさんの感染者をだす郡もあれば感染者がほぼゼロの郡もあるという状態であったため、感染者が非常に少ない郡からロックダウンを緩和促す強い要望があった。

そこで、州政府は大まかな緩和フェーズを設定した後は、その運営を各郡の衛生局に任せることにした。感染状態をみて、郡ごとに緩和を進める方向へと体制を移行したのだが、一見論理的なこの政策が多分過ちだったようだ。

郡ごとに規制緩和を運営することになり、郡の衛生局が住民の強い反発とプレッシャーをダイレクトにかぶることになってしまったのだ。その結果、抑えきれずに州の提示した指針に合わないレベルまで規制を緩めてしまう郡が出てきた。これにより、隣同士の郡であるにもかかわらず、規制が違うという状態が発生、郡の区切りはそれほど大きくないので、ちょっと車で走れば、食料品の買い物の際に、マスクが必要だったり、不必要だったりするようになった。隣の町で以前のような普通の生活をしているのにも関わらず、自分の町ではそれができないというような状況は、住民を混乱させ不満を増幅し、真面目に規制を準拠しようという意欲が曖昧になった。

郡の衛生局に力があり、住民が衛生局にそれなりに従っている郡もある。シリコンバレーのあるサンタクララ郡の衛生局は、強いリーダシップを発揮しているし、もともと技術者が多い住民の過半数はその科学的なアプローチに納得している。しかし、カリフォルニア南部の郊外ではだいぶ事情が違っていて、厳しい規制を敷こうとする衛生局員を脅迫したり、真剣に規制を守らない住民も多い。そんなこんなで、南部を中心として非常に深刻な感染拡大に繋がったようだ。

このような背景で、今週になってから、ニューサム州知事は再び州政府として強い指揮をとる方向に大きく転換した。今回は前回の学習を生かし、全州に対しての命令を出すのではなく、州政府が規制を再強化する郡を選び、それらの郡に対して州命令を発行した。この方法であれば、少なくとも地元の衛生局が脅迫される危険を避けることができる。

また、州全体に対してマスクの着用を強制する命令も出した。多分、この命令は郡ごとに規制を緩和させる前に、州が出しておくべきであったものだ。それに気づくのがちょっと遅れてしまって、感染の拡大を招いてしまったような気がする。

厳しいロックダウンには戻っていないものの、少なくとも1ヶ月分の緩和分は軽く後戻りすることになったカリフォルニア州だが、これで急速に伸びている感染者数と死者の流れを遅らせることができるのならば、経済の打撃を覚悟でやるべきだ。感染者数と死者数が再び伸びなくなったら、もう一度やり直せばいい。パンデミックもロックダウンも、私たちにとって初めての経験なのだから、どんな間違いが起こっても不思議ではない。間違いを正すことで救える命があるならば、間違いを正せばよいだけなのだ。ファウチ博士もそう言っていた。

今日は悲しいニュースを読んだ。ロサンゼルス郊外にすむ50代の糖尿病を持った男性が亡くなったニュースだ。彼は3月から5月のロックダウンの間、我慢強く家に留まっていた。6月になり規制が緩和されると、社交的な彼は友人にバーベキューパーティーに呼ばれた。これは規制に違反しているイベントだったであろうが、彼の住んでいる辺りではすでに規制に対する態度はゆるゆるだったのだと思う。あたかもウィルスが消えて無くなったか錯覚と共に。そのパーティは数十人の集まりだったらしいが、ウィルスの感染が陽性だと診断された人が自分の感染を知ったうえで参加していたという。症状がないので感染させることはないだろう、楽観的に考えていたらしい。結果、このパーティーは10人を超える感染者を出した。彼は亡くなる前日に、病院のベッドから、「バーベキューパーティに行ったことを後悔している。愚かだった。」とツイッターに投稿している。

このようなニュースを増やさないように、人々は州政府の定めた規制を理解して従う覚悟をしてほしい。感染しても大丈夫だと思っている若い人たちには、特に理解してほしい。カリフォルニアは、感染しても大丈夫だとたかをくくっている若い人たちのツケを、社会全体が経済危機と命という代償で支払っている。今度こそ、できるだけ多くの人が、なぜ規制が必要なのかを理解することからやり直そう。

まずは、みんなでマスクを着用する「ユニバーサルマスク」から始めよう。幸いなことに、マスクを巡る米国の政治的な争点は今週をもってようやく解決された。政治から離れて、多くの命を救うために一人一人が簡単にできることをやろう。

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