シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

再ロックダウンの苦悩(規制緩和フェーズ2)

米国はほぼ毎日のように一日の感染者数の記録を伸ばしているし、死者数も残念なことに上り坂だ。数日前までは一日の感染者数が6万人を超えていると騒いでいたのに、ここ数日は7万人を超えている。

それでも、この国は感染をコントロールできているという人や感染者数のデータそのものがでっち上げてあるという人が、未だにたくさんいることはもう諦めるしかないとして、今後どういう策がありうるのかを考え続ける人たちがいることは救いだ。米国が世界に誇る科学的ブレインはまだ失われてはいない。それが今の分裂した米国で役にたつかどうかは多分に不安だけれど。

ハーバードやイエールの米国のトップのブレインたちは、全国的な再ロックダウンが必要だと訴えている。少しでも多くの生命を救うために、感染拡大が再度落ち着くまでは、全米を4月当時のロックダウン状態に戻し、その間に安全な規制緩和の方針や体制を整えるべきだと報じている。そうすることは、今のように緩和と規制を繰り返すよりも、長い目で見ると経済的ダメージが少ないのだとも論じている。

米国のトップブレインがデータと科学的予測を駆使した結果がその結論であるならば、それは間違いないないと思う。しかし、それはあくまでも、マクロの視点であって、ミクロの視点では、違う物語が語られるのだ。

ロックダウンによって一時的に閉店した店の多くが、そのまま永久的に閉店になっていく。なぜなら、規制が一部緩和された現況でも、パンデミック前の営業状態は戻らないにも関わらず、ビジネスを維持するコストが安くなるわけではないからだ。確かに政府は、そのようなビジネスを一時的にサポートするために大金をはたいた。そして、その動きは賞賛に値するほど速かった。しかし、それはこれほどまでに長引くという仮定の元に練られた対策ではなく、本当に一時的なサポートだったのだ。

あと1ヶ月とか2ヶ月の辛抱ですよと言われれば、今からでも持ちこたえられるビジネスはたくさんあるだろう。しかし、政府からのサポートを受けてなんとか耐えてきた期間は4ヶ月を超え、今だに出口が見えないどころが状況が悪化していること考慮すれば、もう終わりにするという選択肢にたどり着いても仕方がない。

私も米国の経営者の端くれだからわかるのだけれど、厳しい経営状況に向かい合うことは、あらゆる側面の力を消耗させる。小さいビジネスであればあるだけ、その傾向は顕著だ。資本の減少という目に見える影響に加えて、精神力の消耗という目に見えない人間を大きく蝕む消耗がある。私のビジネスが3ヶ月の厳しい経営状況を耐えることができたのは、運よくその先に灯がみえていたからだ。真っ暗闇の先に光が見えている状況と、長い間暗闇に置かれて出口がわからない状況では、消耗する体力も精神力も相当違う。

確かに再ロックダウンは社会を救うだろう。私は今たまたま運の良い方のサイドに立っているから、再ロックダウンをすることにより少しでも多くの命を救い、長い目で見て経済を回復させようという動きには賛同できる立場にいる。

しかし、それによってさらにさらに潰れていくビジネスたちのことを考えると、胸が痛い。マクロな視点では社会は救われるかもしれないけれど、ミクロな視点で打撃を受けたビジネスの所有者は救われないのだ。生涯努力を重ねて築き上げたビジネスを手放さなくてはならない人がいるかもしれない。自分の命と同じくらい大事にしてきたビジネスを失う人もいるかもしれない。それによって、生活基盤を失って途方にくれる人もいるかもしれない。

一人でも多くの命を救い社会の再生しようとすると、そのために犠牲になる人々がいる。そのどうしようもないジレンマに歯がゆさを感じない人がいるならば、それは人間性の衰退だ。どうしようもないけれど、苦しいけれど、しなくてはいけない選択をするのが、人間の歴史であるし、その犠牲の痛みを共有できる想像力こそが、人間とほかの動物を分ける決定的な違いなのだから。

 

PVアクセスランキング にほんブログ村