シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ファーストピッチは誰だ!(規制緩和フェーズ2)

特に野球に興味があるわけじゃないが、MLBが開幕した今日のニュースには目を奪われた。なぜなら、今、米国のコロナ対策で国民の信用を集めている我らがファウチ博士がヤンキースvsナショナルズ開幕戦のファーストピッチをしたからだ。

小柄だが79歳とは思えないほどいつもピシッと姿勢の良いファウチ博士は、ワシントンの地元ナショナルズの大きめなシャツをガバッと羽織ってナショナルズの赤い野球帽をかぶり登場。背中にはしっかり「Fauci」の文字。ナショナルズのロゴの入った赤いマスクをしてマウンドに立つ姿はなんだかちょっとかわいい。そういえばファウチ博士は、黒いシンプルなマスクをしてテレビに映る要人が多いなか、かわいいマスクをしていることが多い。派手な赤い色にワシントンのロゴが入ったマスクとか、ウィルスみたいなイラスト柄のマスクをしていたこともあった。親しみを感じるそのマスク姿を見ると、感染状況が思わしくない時ですら、ちょっと安心感を感じるから不思議だ。

ファーストピッチは大きく左にそれ投球はピッチャーの届かないところに。ファウチ博士は大きく両手を広げて「やれやれ」のポーズだ。明らかに野球選手じゃなくて医者の方が向いている。もし、観客が入っていたら、笑い声で大きく盛り上がったことだろう。

そう、今年のMLBには観客がいない。代わりにシーズンパスを持っている人々の写真をプリントした人型のパネルが観客席を埋めている。今年特別なのはそれだけではない。去年は160試合以上行われたMLBだが、今年は60試合しか行われない。また、試合時間を短くするための工夫として、延長戦ではセカンドに一人ランナーを置いてイニングを始める。

また、ピッチャーは湿った布をポケットに入れて指を湿らせることが許可されている。指を舐めないためだ。そして、重要なのは、フィールドで口からものを飛ばすことは、唾であれ、ひまわりのタネであれ、ピーナッツのからであれ、噛みタバコであれ、一切禁止だ。しかし、ガムを噛むことは許可されている。

これを書いてて笑ってしまうのは、ひまわりの種、ピーナッツ、ガム、は米国の野球の象徴であるから。うちのティーンエイジャーはかつてリトルリーグで野球をしていたのだが、ダグアウトで食べるものといえば、ひまわりの種とピーナッツとガムだった。これらのスナックは米国野球と切っても切れない関係にあって、観客席でよく食べられるものもひまわりの種とピーナッツとガムだったりする。なので野球場のダウアウトも観客席も、試合の後はひまわりのタネと落花生の皮がバラバラと散らばっているのが米国流なのだ。それも今年は見られることがないだろう。

他にも禁止されていることといえば、ハグや握手はフィールドだけではなく控え室やシャワー室でも禁止だ。試合中以外は必要以上に近づいてはならないらしい。そのようなウィルスに対する安全対策マニュアルは実に130ページに及ぶと報道されていた。

ファウチ博士もファーストピッチの後、選手とグローブ同士を軽くタッチさせる形で挨拶をしていた。ファウチ博士のいいところは、こうやってわかりやすくお手本を見せてくれるところだ。毎日、マスコミに引っ張りだこの彼だが、日々、米国の感染状況が緊迫している中、なんとか開幕されたMLBのファーストピッチの申し出を受けたのは、彼らしいような気がした。こうやって、ウィルスと共存する方法を、厳しくしかめっ面で語るのではなくて、わかりやすく表現するのは彼らしい。彼は希望的観測で動くことはないけれど、同時に悲観主義者でもない。今の米国では大切なことだ。

この開幕戦でもう一つ注目されたのは、米国で引き続き盛り上がり続けているアフリカ系アメリカ人差別への抗議行動の象徴となっている片膝をつくパフォーマンスを選手たちがするかどうかだった。ヤンキース🆚ナショナル戦では、試合前、両チームの選手全員が黒い長い布を全員で握り片膝をついて一分間の黙祷をした。どんなに世論が割れていても、表舞台に立つ者たちは視聴者に手本を見せようとする。どんなに国が分裂し揺れ続けていても、自分たちが正しいと信じる意志を形にして表現するところは米国の良いところだ。

ところで試合の方は、途中で雨に振られて中断、2時間経っても雨が止まなかったため、中断時点でリードしていたヤンキースの勝利で終わった。

 

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