シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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宇宙飛行はできるんだ!(ロックダウン73日目・現時点の解除予定日まで残り4日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

我が家のティーンエイジャーは、朝9時から、学校のオンライン授業をやりながらYoutubeライブに釘付けだった。ロックダウン中でよかった。ライブで見れると、今日ばかりは感謝しながら視聴していたのは、そう、米国の新たな宇宙時代の幕開けとなるかもしれないSpaceXの初の有人宇宙飛行のライブチャンネルだった。

結局打ち上げは、なんと17分前に悪天候により延期になった。4時間前から興奮を高めつつ視聴していた我が家のティーンの失望は隠しきれないが、無事に打ち上がったら打ち上がったで、宇宙ステーションにドッキングするまで平日なのに寝ないで見ていた可能性があるので、こちらとしては、むしろ延期された土曜日の打ち上げの方が助かる。そもそも、今日、日本や中国から寝ないで視聴していた人たちの苦労を考えれば文句は言えない。

ちなみにこのロケットの打ち上げはフロリダ州のケネディ宇宙センターであるが、SpaceXそのものはカリフォルニア州の企業だ。Paypal の創設者、テスラの共同設立者であるイーロン・マスクにより設立されたこの宇宙ベンチャー企業は、ロサンゼルスにその本拠地を構えている。ちなみに、テスラの本社はシリコンバレーにある。

打ち上げ準備の中継を見ながら、私が考えていたことは、ロックダウンだったのに打ち上げは予定通り行われるんだなということだった。打ち上げにはパンデミックは何も影響を及ぼさなかなったのだろうか。いや、準備中のスタッフがみんなマスクをしていたり、お互いに近寄らないし、握手やハグや肩を叩いたりもしないのを見れば、影響を及ぼしているのは一目瞭然だが、実際のところはどうなんだろう。調べて見た。

2ヶ月前、米国がパンデミックの波に襲われたとき、今回搭乗する宇宙飛行士は宇宙ステーションのトイレの使い方の訓練するタイミングだったらしい。通常なら、インストラクターと一緒に使い方を見せてもらいながら訓練するわけだが、今回の訓練はソーシャルディスタンスを保って、インストラクターは一定距離離れたところから宇宙飛行士に言葉で説明することで訓練をしたそうである。思ったよりは難しかったらしいが、不可能ではないとコメントされていた。また、訓練によっては、ビデオやネットワーク会議も取り入れ、宇宙飛行士たちはできる限り人との接触を少なくして訓練を続けたそうだ。

パンデミックがあろうがなかろうが、宇宙飛行士は通常、打ち上げの二週間前から隔離されるので、そこからは通常の流れだったようである。宇宙ステーションでは狭い空間に同じ空気が循環するので、どのようなウィルスも持ち込んではいけないからだ。

それでは、スタッフの方はどうだったのだろう。詳しい記事がないのだが、よくよく考えて見れば、今時はほとんどの確認はコンピュータが行うし、もともと超精密機械であることを考えれば、扱うときはマスクや手袋どころか、防護服を着るくらいなんじゃないか。それならば、スタッフ同士がマスクをしてお互い気をつけて距離を取っていれば、大きな障害はなかったことが予想できる。

そうか、パンデミックでも、ロックダウンでも、宇宙飛行はできるんだ。まさしく今日、死亡者が10万人を超えてしまい、感染拡大の第二波の心配もされていて、経済的にも非常に苦しんでいる今の米国であるが、このニュースは本来の米国らしい明るいビジョンを見せてくれている。民間企業が宇宙に有人宇宙船を飛ばすなんて、一昔前なら夢みたいなことが現実にできるところが、技術革新に貪欲で可能性を追い続けるこの国の性質なのだと思う。

土曜日の打ち上げは私もぜひライブで見よう。

この国には、とてつもない頭脳と行動力をもつ人々がたくさんいる。この国で生まれていなくても、この国に集まってくる。ちなみにイーロン・マスクも生まれは南アフリカ共和国である。人々は、この国に可能性を求めてやってくる。同時に、貧しい人々もより豊かな生活の可能性を求めてやってくる。彼らの大多数は、社会的弱者として米国に存在し、今回のパンデミックで大きな犠牲者のグループとなっている。

サンタクララ郡の保健局のサラ・コーディ博士は、全米で最も早くロックダウンを宣言したことで有名になった。サンタクララ郡で感染爆発が起こらなかったのも、死亡者が低く抑えられているのも、彼女の決断の速さが一因であるのではないかと言われている。その彼女が今日、カリフォルニア州の規制緩和のスピードは少し速すぎると思うと発言した。ちなみに、サンタクララ郡は彼女の指揮により規制緩和が進むので、カリフォルニア州の他の郡に比べて非常にペースが遅い。

彼女いわく、一つの規制を緩和したら、その影響がどの程度のものになるのかを待って、見極めなくては次の緩和に進めない。結果を見ずにどんどん緩和していくのは、一度に緩和するのと同じだというような発言をした。確かにその通りだ。彼女の発言はいつもとてもわかりやすい。彼女はまた、結果を確認せずに、規制をどんどん緩和していくことにより再び感染が増えた時に、主に犠牲になるのは社会的弱者のグループであるとも語った。本当にその通りである。

しかし、同時に、カリフォルニアの経済はフリーフォール状態で落ちていると言われている。特に小規模のビジネスはもうこれ以上持ちこたえれないとの声が上がっている。だから、危険なのはわかっているけど、それでも、どの郡も規制を次々と緩和していっているのだ。

サラ・コーディ博士はサンタクララ郡をどうやって緩和していくのだろう。彼女は、感染拡大のリスクをわかりすぎるほどわかっているために、苦渋の決断を常に迫られている。

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