シリコンバレーは一足先にロックダウン
昨日この日記で、カリフォルニアを5つの領域に分け、ICUの空きベッド数が全体の15％以下になった地域から最短でも3週間のロックダウン（Stay-at-Home 規制と呼ばれる）をするという新規制が、ニューサム州知事によって発表されたことについて書いた（「カリフォルニア、再ロックダウンへ 」を参照）。昨日の日記では、シリコンバレーが所属するベイエリア地域は、ほかの地域よりも若干状況がよいので、ほかの地域は２、３日中にロックダウンする可能性が高いが、シリコンバレーはまだ一週間ぐらいはロックダウンしないのではないかと書いた。が、今日は急展開。
本日、ベイエリア地域に所属する10郡のうち6郡が共同声明で、「ICUの空きベッド数が全体の15％以下」という州政府が提示したトリガーを待たずに自らロックダウンをすることを発表した。シリコンバレーはその大部分をサンタクララ郡に置くが、サンタクララ郡は今週の日曜日から4週間のロックダウンを開始する。
ベイエリア地域よりも深刻な地域が、15％ぎりぎりの線でロックダウンを躊躇している中、ベイエリア地域がカリフォルニア州の先頭を切ってロックダウンするのは、まさしく今回のパンデミックに対して一貫してベイエリアがとってきた行動の特徴がそのまま現れている。
なにしろサンタクララ郡は全米で最初にロックダウンを宣言した場所であり、そのときも初動はカリフォルニア州政府よりも早かった。サンタクララ郡は常に全米の中でも最も慎重な対応策を検討してきたし、規制緩和スピードも遅く、規制強化が必要と感じたらビシッと躊躇なく締める。この日記にも何度も出てきているサンタクララ郡の衛生局をひっぱるサラ・コーディ博士は、住民に常にセーフサイドに立つべきだと呼びかけ、冷静で穏やかな口調ではあるが、断固として厳しいリーダーシップをとってきた。彼女が州政府の規定よりも早くロックダウンを発表したことに驚く住民は、たぶんもういないだろう。この手の展開に、住民はだいぶ慣れてきている。
コーディ博士は次のように述べていた。ロックダウンの効果が現れるのは２、３週間先になることを考慮した場合、ロックダウン開始を15％以下になるまで待っていたら、その効果があわわれる前に医療施設が溢れてしまい、クリスマス後に医療設備が足りなくなることが予測できる。そんな事態を引き起こすわけにはいかない。今すぐにロックダウンすることで、医療設備不足を回避する。
同時に、彼女はこのロックダウンで影響を受けるビジネスに対しては、次のようにコメントしている。今、ロックダウンすることによってビジネスに辛い影響を与えることはわかっているけれど、早めにロックダウンをかけることは、深刻な感染を減らすだけではなく、ロックダウン期間を短くする効果も期待できる。期間が短ければ、より早くビジネスを再開できるのだ。
確かにそのとおりだけれど、これまでのコーディ博士の慎重さから言って、たぶんロックダウン期間は短くならない。シリコンバレーのロックダウンは、早く始まって遅く終わる。これまでずっとそうだった。しかし、シリコンバレーという世界的なビジネスエリアに集中する大量の人口を抱えているにも関わらず、相対的に死者数を低く抑えてきたのは、その慎重な対応のおかげだと思っている。
今回のロックダウンで議論になっているのは、なぜアウトドアの活動まで厳しく禁止しているのかというところだ。実際のところ、アウトドアでソーシャルディスタンスを守った状態の感染リスクはゼロではないが低いことはわかっている。ならば、アウトドアの公園やレストランを閉める必要があるのかという議論が上がってくるのは無理もない。幼い子供を持つ親や、アウトドアパテオに投資をしたレストラン経営者にとっては死活問題だ。
政府からはその点について説明がされていないが、私の個人的見解では、なんとなくわかるような気がする。今、感染拡大で問題になっているのはコミュニティ感染だからだ。
例えばアウトドアの公園に幼い子供が集まれば、ソーシャルディスタンスを守るのはほぼ不可能だ。それでも、感染者が少ないうちは問題にはならなかったかもしれないが、今は相当数の無症状無自覚の感染者がコミュニティにいると考えられているので、一緒に遊ぶ子どもたちの間から感染が広がる可能性は大いに有り得る。
アウトドアダイニングにしても、レストランが開いていれば必然的に人が集まりやすい。自分の家族以外の人と集まってしまう場所になりがちだ。ここでも、現在のコミュニティ感染の状況から言って、一緒に住んでいる家族以外の人間との接触を増やす可能性がある場所をなるべく取り除きたいということだと思う。
ちなみに、複数の家族が一緒に隔離行動をとることによって、その家族間ではマスクもソーシャルディスタンスもいらない「ソーシャルバブル」（「大丈夫なパーティなどはない」を参照）という考え方があったのだが、これも現在のコミュニティ感染の状況では中止するべきだと報道されている。
問題は、果たしてこれだけ厳しい規制をホリデーシーズンに住民は本当に守るのだろうかということだ。レストランダイニングが閉まり、バーが閉まり、ショッピングセンターにも制限がかかる。だかといって、人々が自分の家で家族とだけ過ごしてくれるという保障はない。ホームパーティなどのを規制は本当に難しい。規制を守っているかどうか確認する方法がないからだ。これは、人々の良心に頼るしかないが、この良心が８ヶ月以上におよぶ自粛の疲労感から、非常に曖昧になってきている。
ニュースのインタビューで、若い人がホリデーは２０人ぐらい集まってパーティをやる予定だと答えていた。ソーシャルディスタンスを保つ努力をすると言っていたが、２０人も集まってパーティをして飲んで騒いでソーシャルディスタンスを保てる人がいたらぜひお目にかかりたいもんだ、とテレビの前でつぶやいた。
今週の日曜日から４週間、年を越して１月４日までだ。クリスマスとニューイヤーというホリデーの楽しみが詰まった期間をじっと家に閉じこもって家族で過ごすことになる。私個人的には全く平気だし、こういうゆっくりするホリデーもいいよなあ、ぐらいに思っているが、コニュニティとしてはいったいどのような展開になるのかは、まったく予想ができない。
ただ何度も繰り返し言いたいのは、クリスマスもニューイヤーも関係なく必死に働き続ける最前線の医療関係者の人たちのことを考えて行動してほしいなということだ。
