シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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飛行機に乗る勇気があるか?(ロックダウン57日目・現時点の解除予定日まで残り19日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

今日は飛行機に関するニュースが多い日だったような気がする。航空会社の経営危機に始まり、今後数年に渡る飛行機を使った旅行がどうなるかの予測など、様々な視点のニュースがあったが、中でもショッキングだったのは実際搭乗した人のツイッターを基にしたニュースだった。

1つ目のツイートは、2日前の5月9日のユナイテッドエアラインのニューヨークからサンフランシスコまでのフライトであり、もう1つのツイートは、本日5月11日のアメリカンエアラインのニューヨークからワシントンまでのフライトだ。

どちらのツイートも目を引くのはほぼ満席のキャビンの写真である。エコノミークラスのシートがほぼ満席、つまり、キャビンはマスクをしている人々でパックされた状態なのである。飛行機のエコノミー席の狭さを想像すればわかるように、ソーシャルディスタンスを保つのは不可能な状態だ。

ユナイテッドの乗客のツイートによると、搭乗前にユナイテッドから、ソーシャルディスタンスを保つために並んだ席の真ん中には人を座らせないというお知らせがメールで届いていたらしい。にも関わらず、いざ飛行機に乗ってみると、3列シートの真ん中の席も含めて全ての席が満席だったというのだ。この乗客は「ユナイテッドはソーシャルディスタンスをやめたの?」というコメント付きでキャビン内の写真を投稿している。アメリカンの乗客も似たようなほぼ満席のキャビンの写真に「これって安全なの?」というコメントを付けて投稿している。

ユナイテッドはこのツイートについてコメントは発表していない。アメリカンは、このキャビンは満席ではなく25席は空席だったと発表している。飛行機のモデルから予想するに約70%ぐらいの搭乗率だろう。2列シートしかない小さい飛行機だったので、25席の空席があったとしても、半分以上の乗客は隣の席に誰かが座っていたことになる。

実はロックダウン前に日本訪問する予定があって、急遽キャンセルしたこともあり、早く飛行機に乗れるようになるといいなと漠然と考えていたのだが、これらのツイートを見て、飛行機に乗る勇気が一挙にしぼんだ。57日の間、ソーシャルディスタンスを保つために家族以外の人間と2メートル以上近づかないようにして暮らしているのである。それなのに、飛行機に乗るには、この写真が示すように、知り合いですらない人と超近距離で接し、空気が循環しない狭い空間で長い時間を過ごさなくてはいけないことになる。今までロックダウンでしてきた努力はなんだったのかと頭を抱えてしまいそうだ。実際にツイートしたユナイテッドの乗客は、このフライトを最後にしばらくは飛行機に乗るつもりはないとコメントしていた。

最近話題になっているBromage博士のブログによると、感染のリスクが高いのは、空気循環が悪いインドアで感染者と長い時間空間を共有した場合だと説明されている。ちなみにこのブログは実際に発生した具体例をあげながら、どのような場所でのどのような行動が感染リスクが高いのかを非常にわかりやすく説明しているので、機会があれば別の日記で取り上げたいと思う。

このブログの記事を読んでから、例のツイッターの写真をみるとゾッとする。空気循環が悪い密閉した狭い空間に人が集まった状態で長い時間を過ごさなくてはならない飛行機。ブログでリスクが高いと分析している空間は飛行機内の空間と完全一致する。

ユナイテッドの搭乗客は皆怖がっていたそうだが、それは正しい反応だったようだ。もしこの飛行機の乗客に症状のない感染者がいた場合、ニューヨークからサンフランシスコの約5時間のフライトの間に相当の数の乗客が感染しただろう。

ロックダウンが緩和されたとしても、ワクチンが使えるようになるまで以前と同じレベルの普通は帰ってこない。New Normalな世界では、飛行機に乗るのは相当な覚悟が必要になりそうだ。

3月にキャンセルした航空券は年末までに振替の航空券にしなくならないルールになっている。果たしてそれまでに、飛行機に乗る勇気が私にあるだろうか。飛行機に乗って自分が感染するだけならまだしも、自分が感染すれば、高い確率で家族を感染させてしまう。そして社会に感染を広めてしまう。

これは、私だけの判断で決められることですらない。再びツイッターのキャビンの写真を眺め、ため息をついて、このツイッターの投稿者のようにしばらくは飛行機に乗らないようにしようと苦渋の選択をしたところだ。

 

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