シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ホワイトカラーに忍び寄る現実の影(ロックダウン32日目・現時点の解除予定日まで残り17日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

以前書いたように、ロックダウンのシリコンバレーの街は、道ゆく車がなく、食料品店と薬局以外は閉店、食料品店の前には互いに大きく間隔を開けたマスク姿の人々が静かに並び、買い物客もお互いを避けながら静かにすれ違う、歩道には家族と言う名の小さな群が歩くことを目的としてトコトコと移動し、道端の空っぽの学校から子供達の歓声も聞こえない、そんなSFチックな街と化したわけだが、そんな呑気なことを言っているのは、実は失業を逃れたホワイトカラーだけだった。

ロックダウンと同時に、たくさんのバー、レストラン、ホテル関連の仕事が消えて無くなり、続いて、小売業、娯楽施設、ファッション美容産業、ジム、スポーツ教室、習い事関係の仕事が瞬時に蒸発した。数えきれない小規模なビジネスは一気に爆風を受け倒産を余儀なくされたか、もしくは、倒産寸前で連邦政府のローンが到着するのを待っている。

それに比べれば、在宅で働けるホワイトカラーは幸運だったと言っていたのは、ついこの間までの話だ。

本日4月16日の発表によると、米国で過去4週間で失業手当を申請した失業者の数はなんと2200万人にのぼる。今や米国労働者の7人に1人が失業していると言われる。これがどんなに悲惨なことなのかと言うと、2007年のリーマンショックを皮切りに米国を襲ったグレート・リセッションは2009年に終焉、米国は2009年から2020年までの11年間の間で、2240万件もの新しい雇用を生み出してきた。その11年間に生み出された雇用がたった4週間で吹っ飛んだ考えるとわかりやすい。ちなみに、グレート・リセッション時の失業者数は900万人に満たなかった。

そして、最近わかったことなのだが、この失業者の中には相当数のホワイトカラーが含まれているのだ。

弁護士、セールスパーソン、建築士、コンサルタント、宣伝業界など様々なプロフェッショナル業界に失業が確実に影を落としてきている。もちろん、ソフトウェア業界も例外ではない。小売業用のアプリケーションを開発管理しているソフトウェア企業、レストランやバーの広告費用で稼いでいるウェブ関連企業は、真っ先に影響を受けて従業員を減らしている。

最初にパンチを食らった各業界への影響は、白いテーブルクロスにこぼれたワインの染みのようにジワリジワリとその周辺に広がっている。

弁護士がなぜ職を失うのか。裁判所や公務を行う多くの施設がクローズしている今、弁護士は仕事を遂行する場所がないのだ。中途案件の示談をまとめようにも話し合いは一時休止、新しくまとまりそうだった契約も今は動きが取れない。弁護士を何百人も抱える事務所は、お金が回らなくなったこう着状態を持ちこたえるべく、やむを得なくスタッフを減らしたり、減給したりして、必死の攻防戦を戦っている。

また、新しい支店、支社、新オフィスの建築などが計画されていた企業は、建築作業そのものができなくなったため、全ての計画をロックダウンとともに一時停止するしかなくなった。これらはロックダウンが解除されるまで、いつ再開できるのかもわからない。そのような長期大規模プロジェクトに関わっっていた建築士、建築業界、コンサルタントなど、まさにすべての職業に影響の波紋が広がっていく。新しいビジネスのために新しいスタッフが必要だと雇用していた場合は、早速解雇しなくてはならないという異常事態が発生している。

ロックダウンにより時が止まってしまったため、ほとんどの計画という計画は、個人レベルから大企業レベルまで様々な形で影響を受けているのである。今後、どこをどう廻って自分のところまでやってくるのか、誰にもわからない。

在宅ワークができる仕事で幸運だったなあ、などと呑気なことを言っていられるのは、もしかしたら今だけで、来週や再来週には失業保険のウェブサイトのレスポンスの遅さに脱力しているかもしれない。

そして、ロックダウンが解除されるまでは、再就職のしようもないこの世界は、仕事がなく、ジョブハンティングもできなくて、持て余した時間に散歩する人々が彷徨い続けるという、不透明で先の見えない、もしかしたらこれまで見たどのSF映画よりも非現実的な、怖い現実になるかもしれない。

早く誰かに時計の針を動かして欲しいけれど、今はまだだめだ。まだ終わっていない感染の波が静まる前に、次の波を起こして、みんなで大波に溺れることはできない。だから、あまり先にことを考えすぎないようにして、曖昧に笑いながら家で過ごそう。 

 

 

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