シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ロックダウンによる意外な返金(ロックダウン31日目・現時点の解除予定日まで残り18日)

*この日記でロックダウンと呼んでいる規制は正確にはShelter-in-PlaceまたはStay-at-Home(自宅避難)規制と呼ばれています。ロックダウンには広範囲の意味があり、緩い規制から厳しい規制にまで幅広く使われいます。

カリフォルニアは広い。知らない人がいるかもしれないから書いておくと、実は面積だけを比べるならば、カリフォルニア州は日本の総面積よりも広い。

その広大な土地に住んでいる人口は4000 万人弱である。日本の人口の約三分の一だから、日本に比べるといかにカリフォルニアがただ広いのか想像できると思う。しかし、同時に、実はカリフォルニアは米国で一番人口の多い州なのだ。米国には50の州があるのだが、全人口の10%はカリフォルニア州に住んでいる。じゃあ、人口密度が高いだろうって思うかもしれないが、前述のように米国で3番目に大きい面積を誇るだけあって、人口密度の高さ全米で11番目の州にすぎない。

なんでこんなことを書き出したのかというと、そんなカリフォルニアでは車が必需品であることを書きたいからだ。このように広い土地にたくさんの人があっちこっちに広がって暮らしている場所では、車なしでの生活は考えられない。人々はあっちにもダウンタウン、こっちにもダウンタウンを構成していているので、日本のように公共交通機関で網羅できる範囲に人口が集中して暮らしているということもない。公共交通機関がある程度発達しているロサンゼルスやサンフランシスコのような都会でも、週日はともかく週末の買い出しやレジャーを車なしで過ごせる人は、まずいないんじゃないかと思う。特に郊外では車は一家に一台ではなくて、一人一台必要だ。

これが、今回のロックダウンで思いもかけない方向から返ってくるお金の正体である。カリフォルニア州には保険を統括している省があって、その総監が2日前に、カリフォルニアの保険会社は3月と4月分の車関連の保険料を被保険者に返すようにという命令を出したのだ。理由は、ロックダウンにより、個人も企業もドライブをする機会が劇的に減っていることを考えると、この期間の保険料は払われる必要がなく、経済の停滞によりお金を必要としている個人やビジネスに返還すべきであるというものだ。

さすが車社会。車の保険料の変換まで州政府が保険会社に命令することにびっくりした。確かに車を何台も所有している家族や、車を使ったビジネスの経営者には、相当な還元になるのではないかと思う。このような処置も、小規模な州政府ゆえのきめ細かさやリーダーシップの強さを物語っている。

実は今日、我が家の保険会社からもメールが届いていて、内容は該当月の保険料の20%を5月に払い戻すというものだった。おや?全額じゃないのかっとも思ったが、この大手保険会社は命令が出される前に一部還元することを決定していたので、もしかしたら命令の内容を踏まえて、今後再計算がされるのかもしれない。

いずれにせよ、意外なところから返ってくるお金があるもんだと、嬉しいというよりは感心した。カリフォルニアらしい話である。

カリフォルニアらしいといえば、今日もニューサム州知事は元気いっぱい新しい発表をした。これが、またすごくカリフォルニアらしいものなので書いておこう。

カリフォルニアには約200万人の不法滞在の労働者が暮らしている。彼らは不法滞在にも関わらず所得税を納めている場合が多く、昨年だけでも不法滞在の労働者たちがカリフォルニア州内に払った税金は25億ドルにのぼる。にも関わらず、この緊急事態時に、彼らは連邦政府が発表した一人1200ドルの特別給付金も、週600ドル上乗せされることが決定した失業保険も手にすることはできない。

この状況を憂慮して、ニューサム知事はカリフォルニアの必須産業を今も支えている彼らに感謝の意を表したいと、州から15万人を対象に一人500ドルの給付金を配給すると発表した。その財源は7500万ドルは州税から、5000万ドルは寄付からであるとし、すでにいくつかの財団から寄付が集まっていることも公表した。その中には、フェイスブックの創始者の財団であるザッカーバーグ財団も含まれている。

不法労働者を国外退去にしようと躍起になっているトランプ政権に真っ向から反対する、なかなかアグレシブな政策で、これまた、州知事vs大統領のバチバチの火花が感じられる

トランプ大統領は、カリフォルニアのこの決定に対して何かツイートするだろうか。今は、彼はそれどころではないのかもしれない。とにか連邦政府は連日大混乱だ。ただでさえ課題が山積みなのに、昨日、トランプ大統領はWHOへの拠出金を停止すると発表したのだ。たくさんの人が思ったのは「なんで今?」である。世界中の批判を浴び、民主党は違憲だと主張、WHOは反論を掲げ、国内のマスコミも「なんで今?」調の記事で溢れている。WHOの対応には不手際があったかもしれないが、今はそれを追求している場合じゃない、協力してワクチンなり治療薬なりを開発しなくてはいけない時だろう、というのが大方の流れだろう。

しかし、米国にはトランプ大統領のこの発表を歓迎する人たちもいる(私はまだそういう記事を見つけてないけれど、いることは想像できる)。この国は、同じ国民でも意見が大きく割れるし、真っ向から反対するし、どちらの意見も同じくらいの力を持っていることが多いのだ。だからこそ、トランプ政権は誕生したのだし、その時に、カリフォルニア州には、もうカリフォルニアは米国から独立した方がいいんじゃないの、とか言い出した人がいたくらいなのである。

それにしてもニューサム知事は切れ者だ。昨日は、ロックダウン解除に向けて厳しい発言をしてカリフォルニア州民を気落ちさせたわけだが、今日は、満面の笑顔で不法労働者に感謝の意を表したいとカリフォルニア人が大好きなヒューマニティを前面に出してきた。緩急、寒暖を実にうまく切り替えている。毎日目が離せない時の人である。

 

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