シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

姉妹サイト「シリコンバレーをよむ」もぜひご訪問ください

変わる労働の概念

先週 Apple のティム・クックが発表した Apple の新しいハイブリッドワークポリシーにより、シリコンバレーのテックジャイアントが揺れている。Apple が発表したハイブリッドワークポリシーは、Google や Facebook のようなシリコンバレーの他の顔に比べて随分保守的な内容だったからだ。

そのポリシーについて簡単に解説すると、従業員は9月初旬から一週間のうち月曜日、火曜日、木曜日は全員出社し、水曜日と金曜日はリモートで在宅勤務をしてもよいというものだった。同時に一年のうち二週間の連続リモート勤務も提供されていて、従業員は家族と時間を過ごしつつ2週間、旅先であっても仕事をすることが可能となっている。

実はこのポリシーは Apple 側にとっては大きな譲歩である。Apple はもともとパンデミック前もリモートワークを推奨しないことで有名であった。その Apple が週2日のリモートワークを認めたることになったのは、パンデミックによって変化した世界が実にいろんなものを巻き込んでいることを表している。

しかし、この新しいポリシーに対し一部の従業員は大いに不満らしい。このハイブリッドポリシー、全社員に100%リモートワークを許可した Facebook と比べても、会社全体の20%に完全リモートワークを認め、それ以外の従業員は週3日の出社を目指している Google と比べても、まだまだ強制的な出社要素が強い。そもそも出社する曜日がきまっているというところが、いったいなぜ?と思わるものがある。

週3日の出社は決して悪いポリシーではない、実際にシリコンバレーでは、週3日出社ぐらいの方針でオフィスを再開する企業が多いと言われている。が、通常は一週間のどの日に出社するかは、各チームの裁量であることが多く、Apple のように全社同じ日に出社するという試みを発表したのは、たぶん初めてではないかと思う。

確かに人間同士が顔を合わせて刺激しあい協力するチームワークはよりよい製品作りや効率に影響があるかもしれない。しかし、それはチームごとに出社日を決めれば、広い範囲で通用する解決策であっただろう。しかし、Apple はそうではなくて、全社員が月火木に集合するという、だいぶ保守的なポリシーを選択をしたのだ。

実はこのニュースを聞いた時に、Apple とは全然関係ない在宅仕事をしている私も、Apple の保守性に驚いたと同時に、ちょっとがっかりした。というのも、ここシリコンバレーではテックジャイアント、特に Goole と Apple の従業員が出社することが原因になる朝夕の大渋滞がこの一年間なく実に快適なドライブが可能になっていたのだ。パンデミック後に彼らが再出社するようになったとしても、一週間の何日かは出社しない可能性があるので、交通量は一週間にならされ、あの憂鬱な渋滞はシリコンバレーには帰ってこないのではないかとひそかに願っていたのだ。

もし、Apple の社員が全員同じに出社するとなると、結局、月火木曜日は再びあの憂鬱な大渋滞が帰ってくる可能性は高い。もうこれは月火木の朝夕は出かけないことにするしかないなと思ったりする。Apple と関係のない私でさえも、がっかりしていることを考えれば、実際にその渋滞を回避するという選択肢をもたずに出社する従業員たちはがっかりしただろうなと思う。

この Apple のポリシー発表に伴い、一部の社員は連盟で手紙を会社側に提出し、出社日の決定は各チームの裁量にしてほしいと嘆願しているそうだ。同時に、Apple が引き続きリモートワークに保守的な態度を続ける場合、従業員たちは会社と柔軟な勤務体制のどちらかを選択せざるえなくなることを示唆していた。

パンデミックは、その猛威をふるい続けた15ヶ月の間に、米国のホワイトカラーにとっての「労働」という概念を根本から変えてしまった。「労働」の概念が変わるに伴い、多くの人々は「生き方」も変えてしまった。Apple はこの深く大きな地殻変動を見逃すと、その唯一無二の会社文化を守るどころか、失う可能性があることに、気付かされたところなのかもしれない。

にほんブログ村 海外生活ブログ サンフランシスコ・ベイエリア情報へ    

もっと読みたい!SF・ベイエリア人気ブログはこちらから!

もっと読みたい!カリフォルニア州人気ブログはこちらから! 

PVアクセスランキング にほんブログ村