シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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ワクチンパスポートは「自由への抑圧」か?

ワクチンパスポートに関する興味深い考察を読んだので、今日はそこから考えたことを覚え書き。

すでに何度か触れているけれど、米国ではワクチン接種が拡大されるに従いワクチンパスポートの是非があちらこちらで話題になっている。最初こそ、ごく普通の考察であったのだけれど、最近になってマスクの着用と同じように、ワクチンパスポートの是非が政治的に使われる可能性が高まってきたような気がすると、ニュースを読む米国人なら警笛を感じているかもしれない。

そもそも、ワクチンパスポートがどう使われるのだろうと考え始め、特に旅行業界やイベント業界からはビジネスの通常再開のために非常に有効なツールになるだろうと考えだした矢先、フロリダの州知事がワクチンパスポートの使用を禁止したのが始まりだ。未だ標準的なワクチンパスポートのルールも形式も定まっていず実用化も始まっていない(プライベートに開発された電子パスポートサービスは始まっているが標準化されていないので実質ほぼ使えない状態)今の時点で、州知事がワクチンパスポートを禁止すること自体おかしな話なのだが、彼の発表には「自由への抑圧」という、この一年間で聞き飽きたマジックワードが入っていたので、「ああ、またかい...」と暗い気分になった。去年一年間、マスク着用を拒絶する人々の合言葉が「自由への抑圧」だったからだ。

そもそも、ワクチンパスポートの使用が「自由への抑圧」となるかどうかは非常に微妙だ。なぜなら、サービス業界やイベント業界や旅行業界には、それぞれサービスを提供する客を選ぶ権利がある。よく米国のレストランに「靴を履いていない人にはサービスしません」という張り紙がしてあるように、「ワクチンを接種していない人にはサービスしません」と、某ビジネスが表記したとしても、それによって顧客が減るか増えるかはそのビジネスの所有者の選択であって、それに政治家がどうこういう首を突っ込む話ではないような気がする。そのほうがむしろ米国らしくない。だいたい、そんなことをいったら、ちょっと良さげなレストランで「ビーチサンダルに短パンの人は遠慮します」と言うのだってだって、「自由への抑圧」になってしまう。

ただ、この前提は誰もがワクチンを接種できるようになってからでなくてはなりたたない。ワクチンの量が足りなくて、またはワクチンを接種できる場所にたどり着けなくて、ワクチンを接種したくても接種できない立場にいる人にとっては、ワクチンパスポートによる制限は不平等このうえないし、彼らには十分に抗議をする権利があると思う。また、ワクチンを接種したいのにもかかわらず、健康上の制約で接種できない人もいるかもしれない。そういう人たちはにとっては、ワクチンパスポートの導入は、社会に参加する権利の一部をワクチンを打てないがゆえに奪われるので、十分に考慮される必要がある。

しかし、ワクチンを接種できるのにもかかわらず、接種を拒否した人はどうだろう。ワクチンを接種しないことが彼らの選択であるのであれば、ワクチンを接種していなくても入れるレストランやイベントを選べばよいのであって、それを「自由への抑圧」と呼ぶのはちょっと違うような気がする。たとえば、飛行機に乗るのにワクチンパスポートが必要ですと言われれば、たしかに飛行機に乗れなくなってしまって旅行ができなくなってしまうので、これは「自由への抑圧」かもしれないし、食料品店などの生活必需品を扱う店にワクチンパスポートが導入されたら、毎日の生活に関わるので大問題だ。

という風に、ワクチンパスポートを適用できるところと、適用できないところがあるのは当然で、一概に使用を強制するものでも、禁止するものでもないというのが、現実的なところだと思う。そのようなものに対して、州知事が一律使用禁止を命ずるということがおかしいのであって、そのほうが「自由の抑圧」なんじゃないかなと思わぬでもない。

ビジネスの所有者には、従業員を守る義務も、客を守る義務もある。誰もがいつでも気軽にワクチンを接種できる世の中になり、それでもまだ、この感染力の高いウィルスの集団免疫が確立されていない状態のときに、顧客対象が減るのを承知で、ワクチンの接種をサービスを提供する条件に提示するのははたして人権の侵害なのだろうか?

これは非常に難しい問題なので、十分な考察なしに気軽に必須だとか禁止だとかいいきれない、そんな議論の中心になっていくような気がする。議論は必要だけれど、マスクと同じくらいドロドロに政治化されていくかもしれないと思うと、とりあえず政治抜きの議論してくれないかなあと、今からため息がでる。

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