シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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バーチャルスクールで羽ばたく子どもたち

カリフォルニアでもとうとう教師のワクチンの接種が開始され、学校の再開計画が刻一刻と進んでいる。カリフォルニアで学校が閉鎖されてから後2週間で一年のアニバーサリーを迎えるが、いまだに多くの公立校は再開されていない。シリコンバレーがあるベイエリア周辺でも、小学校は一部再開されている地域もあるが、中学校、高校と学年が上がるにつれて、再開の目処がたっていないか、もしくは、教師全員がワクチンが接種できるようになった後ということで3月末から4月上旬あたりを再開計画にあげている学校がでてきた。

ちなみに、このあたりの学校は6月の初めには夏休みにはいってしまうので、4月に初めたとしても残りは2ヶ月しかなく、そのうえ、生徒間のソーシャルディスタンスを取る必要から全員を同じ日に登校させられないことを考慮すると、生徒が学校に戻れるのは実質数週間にすぎない。

それなら、もうこのままバーチャルスクールで今学期は終わらせてしまってもいいと考える人もいると思うのだが、学校の再開は現在の米国の国をあげての最重要課題の一つであり、毎日のように学校再開の必要性を論じるニュースにことかかない。その多くは、生徒、教師、親がいかにバーチャルスクールに苦戦しているかという事例をあげて、再開の必要性を論じている。特に生徒の精神的な悪影響とそれにともなう学業の不振が唱えられていて、特に2月あたりからの生徒のやる気の減退、出席率の低下、課題の提出率の低下など、ニュースだけ読んでいると、バーチャルスクールで1年間学び続けた子どもたちへの懸念と同情、加えて将来の心配など、悲観的なものばかりだ。

ところが、実際私の周りの人々の話を聞いてみると、ニュースが語るほど苦しんでいる子供の話はあまりきかない。地域的なものかもしれないし、経済的なものなのかもしれない。バーチャルスクールでは、通常よりも授業内容も成績も期待値が低めに設定されているせいか、むしろ楽にクラスを受けているという子供も少なくない。それどころか、バーチャルスクールになって突然のように急激に伸びた子供がいると、多くの教師たちが報告している。

もちろん、過半数の子どもたちは苦戦していると考えたほうがいいのかもしれないが、同時に希少というほどでもなく、それなりの数の子どもたちがバーチャルスクールのほうを好んでいるというアンケート結果がでているというのだ。特にバーチャルスクールによって、驚くほど羽ばたいた子どもたちを目にした教師たちにとっては、ここで体験したきづきは、パンデミック後の授業のやり方に影響するのではないかともいわれている。

なぜ、バーチャルスクールによって突然急速に伸びる子どもたちがいるのだろう。理由はいろいろとあげられている。

第一に、子どもたちの中には、自分の環境で自分のペースで学んだほうが伸びる生徒がいるということだ。学校によって細かく管理されたクラススケジュールが、必ずしもすべての生徒に有効ではないことが示された形になった。自主的に学習時間を組み立てて課題をこなして提出するスタイルの授業のほうが、より意欲的に楽しく学ぶことができる生徒が相当数いるということだ。

第二に、子どもたちの時間がより増えたということだ。パンデミック前は、学校の時間に加え、スポーツ、クラブ活動、ボランティア活動、塾や習い事などの様々な課外活動をこなしつつ宿題や課題を夜に片付けなくてはならない生徒が実に多かった。これは、米国の大学に入学するには、成績だけではなく、課外活動の実績なども多いにアピールすることが根底にある。とくかく子どもたちは忙しかった。パンデミックにより、ほとんどの課外活動は休止となり、塾や習い事の機会もぐっと減ったことにより、子どもたちにはたくさんの余暇ができ、それが子どもたちがより学校の授業や課題に集中できる環境を作っているともいわれている。

第三に、実はこれは大きいと言われているのだが、学校というのは学ぶ場であると同時に社交の場であり、社交のために学校に帰りたいという生徒が多いのと対象的に、学校にいると周りの目を気にしてストレスになってしまうという子供も多い。あるアンケート結果によると、高校生の三分の一が、学校では常に自分が周りにどう見られているか考えて行動しなくてはならないストレスがあると答えている。となると、バーチャルスクールにより、これらの子供たちは周りの目を気にしなくてよくなり、より授業に集中できたり、より自由にチャットで意見を表明できるようになり、以前よりも積極的にクラスに参加するようになった生徒もいる。いわゆる、引っ込み思案だったり、コミュ障の傾向がある生徒は、バーチャルスクールで多いに羽ばたく可能性がある。

まだまだ、さまざまな理由が挙げられているのだが、この辺りがわかりやすく、共感しやすいものだと思う。

思いもかけないバーチャルスクールによって、悪戦苦闘している子どもたちがたくさんいる一方で、これまで日の当たらない場所にいた子どもたちが、突然覚醒して羽ばたいていくこともあるのだと考えるのは、世の中どんなことにも、視点を変えれば違う世界が見えてくるという事例の手本になっている。

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