Zoom Bombing （Zoom爆弾）
遅ばせながら Zoom Bombing という言葉を今日はじめて知った。
先週の金曜日は旧正月、米国ではチャイニーズニューイヤーまたはルナニューイヤーと呼ばれる。中華系移民の多いカリフォルニアでは、例年であれば街をあげてお祝いが行われ、たくさんの家々でパーティが開かれるのだが、今年はパンデミックのため、各家庭でのお祝いや Zoomでのミーティングがトレンドだ。
さて、ある中華系の保育園は子供たちのために歌や遊びを用意した Zoom イベントを企画したのだが、これに Zoom Bombing が落とされた。先生が歌ったり踊ったりしているライブを、子どもたちとその家族が楽しんでいたときに、突然、画面が中華系移民を差別する内容のものに切り替わり、罵詈雑言が流れたという。ひどい話だ。視聴していた家々は子供に見せないように慌ててコンピュータを閉じたらしい。
というニュースを読んで、Zoom Bombing という言葉を学んだのだが、調べてみるとロックダウンが始まった相当初期から話題になっていた犯罪で、今まで知らなかったのが恥ずかしい。
Zoom Bombing は基本的に様々な Zoom ミーティングに対して悪意のある攻撃をする犯罪だ。無差別攻撃のこともあれば、攻撃先を絞って行われることもある。無差別のときは、犯人はミーティングのURLを適当に予測して入り込み、画面共有機能をのっとって悪意のある映像を流したり、悪意のあるコメントをチャットに流したりする。これに対して、攻撃先を絞っている場合は、ミーティングのURLを何らかの方法で入手して、攻撃対象のミーティングに侵入して、画面を乗っ取るのがやり口だ。
前者のような無差別攻撃は、ロックダウン初期の被害が話題になったときに、ミーティングにパスワードを掛けることにより、高い確率で回避できるようになった。コミュニティに公開しているミーティンなどは、画面を共有者を制限することによって、少なくとも画面の乗っ取りは回避できる。
問題は、攻撃先を絞っているものだ。犯人はどうにかして攻撃先のミーティングのURLをパスワードごと手に入れて侵入する。最悪のパターンは、正式なミーティング参加者の中に、手引をする者がいる場合だ。たとえば、長引くインターネット授業に辟易した生徒が、Zoom Bomber と呼ばれるネット犯罪者に、授業荒らしのために URL を渡すというケースがあるらしい。生徒が自分で授業を荒れせば直ぐにバレてしまうので、パスワード付きの授業のURLをこっそりネットに流し、不特定多数のネット犯罪者に授業時間とともに伝えればよいのだから難しくない。加害者の生徒にとってはちょっとしたおふざけだが、攻撃的で悪意のある画像が授業中に有無を言わさず突然流れるという状況に立たされる被害者の教師と生徒は、防御のしようもなく、気分が悪く、腹立たしく、授業時間が無駄になる。
先の中華系の学校も、たぶんパスワード付きのURLを用意していたことだろから、それがどこかから漏れてアジア人差別者に渡ったのだろう。先日も書いたように、パンデミックを言い訳にして、米国ではアジア系移民に対する差別が広がりをみせている。中華系移民が最もにぎやかに祝う日を狙って、明らかに攻撃先を絞った差別行動による Zoom Bombing だったのだ。学校側はすぐに不審参加者をキックアウトして、イベントを続けたということだが、被害者たちの怒りは当然ながら収まらず、警察への被害届が出された。犯人を見つけて厳罰にしてほしいとインタビューを受けたアジア系米国人がコメントをしていた。
パンデミックにより、人々の生活がこれまでよりも更にネットワークに依存するようになっている今日、ネットワークセキュリティは本格的に必要不可欠になってきている。私のビジネスの知り合いの中にも、ネット犯罪に巻き込まれている個人やビジネスが後をたたない。ネット犯罪者は、小者から大者マフィアまでとてつもない規模で存在するし、その種類も様々だ。愉快犯もいれば、大金をせしめる国際犯罪者もいる。
今やネットなしでは生きられない世界なので、ネット犯罪に十分に対応できる国際ネットポリスの充実もお願いしたいし、私達個人も犯罪者の思惑にはまらないように、注意をはらってバーチャルワールドを生きていく必要がある。
