シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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スポーツ奨学金が必要なのに!

米国の高校は2学期制が多いと思う。前半の秋学期は8月からクリスマスまで、後半春学期は1月から5月末までというパターンが多いんじゃないかと思う。

さて、カリフォルニア州の公立高校では、2020年3月に始まり、夏休みを挟んで、秋学期はすべてオンライン授業だ。一部、特別な必要性がある生徒が学校に登校できる制度もあるが、ほとんどの生徒は家からオンラインで出席している。このような状態なので、高校の部活動もオンラインであり、スポーツ部はコンタクトスポーツといわれる体が触れ合うものは、試合禁止だ。屋外で基礎練習をするのは禁止ではないはずだが、体が触れ合うような練習は基本的に許可されていない。

これによって、アスリート学生の身体的精神的な健康が損なわれると考えられているのはもちろんだが、大学進学を目前に控えた4年生たちにはもっと切実な問題なのだ。日本の高校と同じように、米国の高校も一部のアスリート系学生には、スポーツ奨学金で進学を狙っている者や、大学のチームに所属することを目指して進学する者は多い。彼らにとって、3年生の春から4年生の今までまったく試合をしていないというのは、トレーニング不足というような単純な問題ではなくて、大学に受け入れてもらうために提出するべき実績資料の不足につながるのだ。

スポーツ実績による進学には、シーズンの成績やプレイ中の映像などを提出するのだが、すでに1年近く正式にプレイをしていない選手たちは、去年の成績と映像しか提出するものがない。その時点で、大学チームに入れてもらえるだけの才能や技術を映像に残していたかどうかは非常に微妙だ。

むしろ、ハイスクール最後のシーズンに、大学提出を前提に映像を記録し、選りすぐったものを提出したいのが心情だろう。しかし、今、彼らにはそのチャンスがない。そして、そのチャンスが今後あるかどうかもわからない。これが、カリフォルニアのアチラコチラで学生たちが、高校スポーツに特例を与えて、試合をさせてほしいと州政府に嘆願したりデモをしたりしている深刻な理由だ。

州によっては、カリフォルニアほど感染状況がひどくなかったり、たとえひどくても学生たちのスポーツを許可している州もあることを考えると、他州の学生たちと競争しなくてはいけないカリフォルニアの学生たちは、どうかんがえても不利になってしまう。アスリートの学生というのは、小さい頃からその道に進もうと長い努力をしてきた者が多いし、その家族も彼らの夢を支えるために多大な支援、ときには犠牲を払ってきている。それなのに、今になって突然に、パンデミックのために夢を叶えるチャンスを不公平に奪われていると感じている学生はどれくらいいるだろうか。

もちろん誰もがスポーツ選手を夢見ているわけではない。しかし、米国では、スポーツに打ち込んできた、チームワークに貢献してきた、キャプテンを務めてきたなどという、課外活動の実績は大学入試で大きく評価される。その実績が、合否を決める 1 つのポイントになったり、奨学金の額に影響を与えたりもする。となると、スポーツが好きで、かつ、それが進学時に有利になると考えて頑張ってきた学生には、この状況は大きな痛手だ。

そもそもチームスポーツが好きな学生は、パンデミックによってチームとの社交から切り離されただけでも鬱屈しているはずのに、将来の進路まで不透明で不安な状態になってしまった。これは、確かに気の毒だ。

かといって、今の感染拡大状態で、息を上げてぶつかり合うようなコンタクトスポーツ、フットボールやバスケットボールを学生たちに許可することは、コミュニティに与えるリスクが高すぎる。州政府にとっても苦渋の選択だろう。

パンデミックが、米国社会のあらゆるところに影響と不安と失望とストレスを降り積もらせながら、すでに10ヶ月だ。もし仮に今から感染状況が回復し、2月末ぐらいから彼らがスポーツができるようになったとしても、すでに大学の願書には間に合わないかもしれない。いったい彼らはどうすればいいのだろう。2020年に学校に通っていた世代はロストジェネレーションと呼ばれるようだ。人によって失っているものは様々だが、ここにも深刻なロストジェネレーションがいる。若者たちがどのように折り合い、状況をうけ止められるのか、どのように彼らを励ますことができるのか、私には思いもつかないなとため息をついた。

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