シリコンバレーロックダウン後日記

起点はシリコンバレーがロックダウンされた2020年3月。2021年6月、シリコンバレーのロックダウンが解除されてから、シリコンバレーと世界がどのように回復に向かっていくのかを日記に記録してみようと思う。

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大学の学費闘争(オレンジティア)

なんとも割り切れない記事を読んだ。パンデミックが原因で発生した大学と学生の訴訟問題に関する記事だ。

米国の大学の学費は高い。公立でも私立でもびっくりするほど高い。カリフォルニアの州立大学の場合、一年間の授業費と教科書代だけでも1万5千ドルぐらいかかる。これに学生寮に入る場合はさらに1万7千ドルぐらいかかる。学生寮に入らない場合でも、学生街での生活費には1万3千ドルかかる。もし、両親の健康保険が使えない場合は保険料にさらに3千ドルぐらいかかる。それ以外の雑費などもかかる。なるべくお金のかからない方法をとったとしても、1年につき3万数千ドルはかかる計算だ。

もちろん、全員がその全額を払えるわけではない。そのため、各家庭の経済状況や学生の優秀度に応じて奨学金や財政援助が払われるのだが、補助をもらってもまだ高いために、裕福ではない家庭の若者は学生ローンを組んで大学にいく者も多いが、これがまた利率が高く大学を卒業した時点で相当額の借金を抱えることになる。そして大学を卒業したからといってすぐにお金が稼げる保障もない。

そんな高額な学費をなんとか捻出して、大学に通っている学生たちにとって、今回のパンデミックによる大学の閉鎖は衝撃だった。春のロックダウンに伴い、多くの大学は構内を閉鎖しオンラインクラスに切り替えた。もちろん学生寮からも退出になった。そして、寮費については滞在できなくなった期間分の払い戻しが行われたが、授業料に関しては一部払い戻しが行われなかった。また、現在、秋の新学期がはじまったわけだが、オンラインクラスだからといって学費の割引行われている大学は少ない。

この事態に対して、払った学費の対価として約束されていたサービスが提供されていないという理由で、学生たちが大学を起訴するケースが米国のあちこちで発生しているのだ。

オンラインクラスで授業を受けられるのだからよいではないかと思う人もいるかも知れないので、もう少し事情を説明する。

多くの大学には通常からオンラインクラスも存在する。たとえば、ある私立大学の話だが、単位を修得するのに$1580払う必要のあるクラスがあった。同じ単位をオンラインクラスで修得した場合コストは$925だというのだ。これは、確かに$1580払って大学で授業を受けるはずだった学生が、パンデミックのためとはいえ途中からオンライン授業になったのにもかかわらず、まったく払い戻しがないのは納得がいかないだろう。せめて10%でも20%でも払い戻されるべきだと考えるのは納得できる。

別の例をあげるとすれば、ある大学のパラリーガルの修士の学生は、春からのオンラインクラスにより、最初に約束されていたよりも授業時間は短くなり、授業日数も減ってしまった。その上、約束されていたパラリーガルの現場によるインターンシップも受けることができなかった。かわりにシュミレーションを受けたのだが、これが就職活動時に不利になるのではないかと懸念している。当然だろう。

さらに例を上げるとすれば、大学で音楽を学んでいた学生はアンサンブルなどの演奏クラスを諦めざるをえなかったとか、別の学生は卒業プロジェクトであった飛行機を作成するプロジェクトを完成させることができなくなったとか、オンラインクラスに切り替わったことにより発生した様々な不利益に対して学生たちは起訴を起こしている。高額な学生ローンを組んで授業料を払っているかもしれないことを考えれば、無理なく理解できる言い分だ。

このような学生を弁護している弁護士たちは、オンラインスクールに切り替わったことにより彼らが被った様々な不利益は、今年とか来年だけはなく、今後の彼らのキャリアに生涯影響を与えるかもしれないことを考えれば、彼らの言い分は受け入れられるべきだと主張している。

確かにそのとおりだ。その上、大学はパンデミックの影響による様々な事態に対応するために、連邦政府から補助金を受け取っていることは誰もが知っているので、学生たちは、その一部は高額な学費を払ったにもかかわらず正当な対価を与えられなかった自分たちに還元されるべきだと主張しているのだ。論理的だ。

しかし、残念なことに、大学側にはその余裕はない。学生寮費や保険料の返金、オンラインクラスのためのインフラの強化、本来なら構内で講義や実験を行うはずの教授陣たちが質の高いオンラインクラスを提供できるようにするための教材やワークショップの提供など、計算外の経費はかさむばかりだ。大学側はどうやって教師やスタッフの首を切らずに、大学を運営し続けるかでギリギリの状態なのだ。

学生の言い分は100%理解できる。しかし、その事象が発生したのはパンデミックのためで、大学の責任を問うことはできない。大学がオンラインクラスで授業を続けるためにできる限り努力をしている場合、いったいこの不利益の責任は誰が取るべきなのだろうか。訴訟でどちらが負けても割り切れなさが残りそうだ。

学生たちに対するアンケート結果によると、未だ多くの若者が大学で取得する学位の価値は信じているし、現在の教育軌道を変えるつもりはないと考えている。しかし、同時に半分ぐらいの学生は、高等教育はもうその高額なコストに値しないとも考えているそうだ。

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